生きづらさは、自分のせいじゃない。
「IJSセンター」を始めた理由

2026年1月、IJSセンター(「生きづらさは自分のせいと思い込んでいる人のためのカウンセリング&心理検査センター」の略称)がオープンしました。

今回のブログでは、B’zの歌のタイトルのような名称をもつ、このセンターの機能をご紹介したいと思います。

 

「なぜこんなに生きづらいのだろう」と思う人へ

私はこれまで福祉の仕事に携わる中で、ずっと感じてきたことがあります。

それは、自分の中にある「生きづらさ」の正体を、ちゃんと分からないまま苦しんでいる人が、世の中にとても多いということです。

そして、それは誰か特別な人の話ではありません。

私自身も、そうでした。

精神疾患や発達障害(神経発達症)について学び、自分にもそうした傾向があることに気づき、自分と向き合うことで少しずつ生きやすくなってきました。

 

けれど、それだけでは説明しきれない違和感が、ずっと残っていました。

なぜ、ちょっとした物音に強く反応してしまうのか。

なぜ、人の倍以上頑張らないと認められないような感覚があるのか。

なぜ、いつもどこか緊張していて、安心しきれないのか。

そうしたことを見つめていく中で、私がたどり着いたのが、トラウマや世代間伝播という視点でした。

 

動物研究では、親世代や祖先世代の強いストレス体験が、次世代以降のストレス反応や行動、遺伝子発現に影響を及ぼす可能性が示されています。

ラットでも、受胎前の父親ストレスや妊娠期ストレスの影響が子や孫世代、さらにF4世代まで及ぶことを示した研究があります。

 

「発達障害」だけでは説明しきれない苦しさ

私のブログではよく紹介しているエピソードですが、家族の歴史を振り返る中で、自分の生きづらさが、自分の人生だけでできているわけではないと感じるようになりました。

戦後の貧困からアルコールに溺れた祖父、それを必死に隠しながら生きた祖母。そして、その影響を受けた父。

戦争から帰還してPTSDによる感情調整の難しさに苦しんだ祖父。そして、その影響を受けた母。

母には俗に言うACE(逆境的小児期体験)があることが分かり、のちに自己免疫疾患(原発性胆汁性肝硬変)を発症し、私は母の肝臓移植のドナーになりました。

こうした家族の歴史の中にある世代間伝播、言葉にならない緊張や無理、痛みの積み重ねが、自分の身体や心にまとわりつく「生きづらさ」と関係しているのではないか。そう思うようになったのです。

 

今は「発達障害(神経発達症)」という言葉が広く知られるようになり、自分の特性に気づく人も増えました。それ自体は、とても大切なことだと思います。

ただ、その一方で、発達障害だけでは説明しきれない苦しさを抱えている人も少なくありません。

そこには、トラウマの影響があるかもしれない。

その影響によって、発達障害に似た症状が現れているという可能性を考慮する視点。

育った環境や人間関係の中で身についた反応があるかもしれない。

神経系の敏感さが関わっているかもしれない。

だから私は、今の支援や医療で説明しきれない違和感を、大事にしていきたいと思っています。

 

今の福祉や医療では、こぼれ落ちてしまう人がいる

日本の社会には、弱さや困りごとを表に出しにくい空気があります。

「これくらい我慢しなければ」

「人に迷惑をかけてはいけない」

「こんなことで相談してはいけない」

そんな思いの中で、多くの人が苦しさを一人で抱え込んでいます。

 

そして、いざ相談しようとしても、それぞれの機関には役割の違いがあります。

精神医療は、基本的に薬による治療が中心になりやすい。

障害福祉は、目の前の生活を支えることがメインで、根本の原因を丁寧に見立てる時間をもちにくい。

心理カウンセリングは、費用や敷居の高さから利用しづらいと感じる人が多い。

 

その結果、発達障害とも、うつ病とも、性格の問題とも言い切れない人たちが、行き場をなくしてしまうことがあります。

また、本当はとても困っているのに、表面上はなんとかやれてしまうために、見落とされてしまう人もいます。

私は福祉現場の中で、支援につながっているのに、何年も同じ苦しさを抱え続けている人をたくさん見てきました。

そのたびに、「今の支援や医療だけでは拾いきれないものがある」と感じてきました。

 

IJSセンターは、違和感を切り捨てないための場所

くり返しになりますが、IJSセンターとは、「きづらさは分のいと思い込んでいる人のためのカウンセリング&心理検査センター」の略称です。

このセンターを始める理由は、そこにあります。

その人の中にある「説明しきれない生きづらさ」を、心理検査とカウンセリングの両方を通して丁寧に整理していく場所を目指しています。

 

つまり、

・身体や脳、神経系の特徴

・心理的な傷つきと反応のパターン

・家族、職場、学校、地域などの環境

・そして、ご自身の持つ本来の強み

こうしたものの相互作用を切り離さずに見ていく、ということです。

 

そのうえで、

「自分はなぜこんなに生きづらかったのか」

「何が起きていたのか」

「これからどう生きていけばいいのか」

を、一緒に整理していく場所でありたいと思います。

 

IJSセンターを利用される方に、最終的に得てほしいものは、

自分の生きづらさを説明できる言葉と、

これからどう生きればいいかの見通しです。

 

福祉の現場にも返していける場所にしたい

IJSセンターは、本人のためだけの場所ではなく、
福祉機関や支援者にとっても、支援の方向性を考えるための根拠を補える場所でありたいと考えています。

たとえば心理検査によって、能力の特徴や症状の程度を客観的に整理できれば、支援の方向性に根拠を持たせやすくなります。

また、これまで「困った行動」と見えていたものの背景に、別のプロセスがあるのかもしれないと、より深く理解できることもあるはずです。

私はこれまで、Somatic Experiencing®ポリヴェーガル理論などを学んできました。

そうした神経系に関する学びも含めて、福祉の現場に返していきたいと思っています。

 

私自身の経験から、福祉の現場では、どうしても生活支援や環境調整が中心となり、生物学的な視点や心理的な視点にまで十分に手が届きにくいことがあると感じています。

そうした視点を現場に広げ、支援の質を底上げしていくことも、IJSセンターの大切な役割だと考えています。

まずは、社会福祉法人SHIPの施設をご利用中の利用者様には心理検査やカウンセリングを、そして、SHIPで働く支援スタッフの皆さんにはコンサルテーションを通じて、それぞれに貢献していきたいと考えています。

 

気軽に話せること、囲い込まないことも大事にしたい

IJSセンターのサービスは、福祉業界だけでなく、病気や障害の診断を受けていない人たちや、漠然と生きづらさを感じている人たちにもお届けしたいと考えています。

ですから、高額で一部の人しか利用できない場所にはしたくありません。

ということで、思い切って、料金形態は「相場の半額」にしてしまいました・・・

(実は、占いの料金を参考に、気軽に利用できる価格としています)

「こころの違和感」を、もっと気軽に話せる場所にしたいからです。

 

また、支援を長く続けること自体を目的にするのでもなく、ずっと囲い込むような形にもしたくありません。

3か月に1回は、効果や満足度、継続の必要性を一緒に振り返り、本当にその人に合った形を考えていきたいと思っています。

これは、社会福祉法人としての社会貢献性にも関わる、大切な姿勢です。

※社会福祉法人SHIPの施設の利用者様に対しては、本サービスを無料(障害福祉サービスの付加サービスとして)で提供いたします。

 

IJSセンターは、これからの地域づくりのスタート地点

IJSセンターは、それだけで完結する事業ではありません。

私たちは将来的に、クリニック事業へとつなげていきたいと考えています。

そこは薬をたくさん出すような場所にはしたくはありません。

薬物療法の必要性を大事にしながらも、心理療法も大切にできる場所。

つまり、必要に応じて信頼できるカウンセラーや福祉支援者へリファーできる体制をつくり、協働していきたいと考えています。

 

医療、福祉、心理。

この三つが本当の意味でつながって、はじめてクライエントの生活の質は上がっていくのだと思います。

まずはこのIJSセンターから、心理と福祉の連携モデルをつくっていくことを目指します。

 

SHIPのチャレンジとして

社会福祉法人SHIPは、「みんなで力を出し合い、みんなが幸せになる社会創り」を使命として、挑戦を続けている法人です。

IJSセンターは、そのチャレンジの一つです。

そして同時に、これからもっと大きな地域の支援モデルをつくっていくための、出発点でもあります。

生きづらさを抱えた人が、遠回りせずに適切な支援へたどり着ける社会を創っていきたいです。

 

最後に

もし今、

「自分が弱いだけ、自分がおかしいだけ。」

そう思い込んでいる人がいたら、その結論を急がないでもらいたいです。

今の支援や医療で説明しきれない違和感には、意味があるかもしれません。

そして、その違和感を一緒に整理していくための選択肢として、IJSセンターがあることを知ってもらえたらと思っています。

生きづらさは、自分のせいじゃない。

そのことを、必要な人に届けていきたいと思っています。