【職員インタビュー】未経験から十年、「支援の根拠」を求めて。精神保健福祉士に合格するまで『ラファミド八王子』アキさん

「自分の核となる根拠がほしかったんです」

そう話す声は、静かで、でも確かなものでした。

今回は、2014年からグループホーム「ラファミド八王子」で世話人として働くアキさんに、
福祉の仕事に就くまでの歩み、日々の支援で大切にしていること、
そして二度目の挑戦で精神保健福祉士に合格するまでの道のりについて、
じっくりお話を聞きました。

未知の方を選んできた

――福祉の仕事に就く前は、どのような仕事をされていたのですか?

アキさん

最初は遺跡の発掘調査をしていました。もともと歴史が好きで、図書館で作業員の募集を見つけて、面白そうだと思って申し込んだのがきっかけです。毎日何が発掘されるかわからないワクワク感がありましたし、室内整理作業もパズルのようで楽しかったです。6年ほど続けて、調査員補助も経験しました。そこで、仕事でお金をいただくことの大事さや、任される責任感を学びました。

その後、3Dやデザインに興味を持ってスクールに通い、不動産広告の制作に携わりました。色彩検定や3D、DTPエキスパートなどの資格も取りました。仕事としてはやりがいがありましたが、納期に追われる毎日で、家に帰ってからもレイアウトや写真の配置を考えてしまうようになりました。だんだん公私の境目が曖昧になり、眠れなくなっていったんです。

――そこから整体師になったのは、どういう流れだったのでしょうか?

アキさん

体が疲れていた時期に、整体やマッサージに行く時間が本当に癒しになっていました。もともと対人関係は得意ではなく、一人で黙々と作業する方が自分には合っていると思っていました。でも、直接人と関わり、自分の力で感謝してもらえる仕事に興味が湧いたんです。

整体師として働く中で、患者さんの前回の話や主訴をノートにメモして、少しずつ情報を集めるようにしていました。最初は接客にも緊張しましたが、患者さんから気さくに話しかけていただくうちに、人に対する苦手意識も少しずつ減っていきました

未経験から、障害福祉の現場へ

――ラファミド八王子を選んだきっかけは何だったのですか?

アキさん

実は、整骨院に受かっていて、そちらで働くことにほぼ決めていました。その時に、たまたま求人雑誌でSHIPの募集を見つけたんです。未経験でしたし、受からないだろうと思っていました。ただ、前職を通して人への興味が出てきていたこともあり、障害を持たれている方が普段どのように生活されているのか、知りたい気持ちがありました。

普通ならお断りする場面だったと思います。でも、自分はこれまでも新しい経験を選ぶ人生を歩んできました。40代前半だったこともあり、かなり迷いましたが、今回も、初めてやる仕事を選ぶことにしました。

――働き始めて、最初はどんなことを感じましたか?

アキさん

最初は重度のグループホームからのスタートだったので、本当に何もわかりませんでした。意思の疎通ができないことが、こんなに大変なことなのかと思いました。最初の頃は、自分の経験則や物差しで対応していたので、相手の気持ちを尊重する余裕がなかったと思います。

今は、自分の「こうなってほしい」という思いを押し付けないように気をつけています。利用者様の「こうなりたい」という気持ちを尊重しながら、そのために今必要なことを一緒に考える。サポートや情報提供はしますが、最後はご本人に考えていただくことを大切にしています。

十年以上続けた仕事に、根拠がほしくなった

――精神保健福祉士を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

アキさん

何か大きな出来事があって「資格を取ろう」と思ったわけではありません。日々、精神的な障害を抱えたり、メンタルヘルスの課題に直面している利用者様の相談を聞いたりしているうちに、徐々に専門的な知識や考え方を学んだ方がいいのではないかと思うようになりました。

それと、この仕事を十年以上続けてきて、自分の核となる根拠がほしいと思うようになったのが大きいです。自分は、十年以上同じ仕事を続けることが珍しいタイプでした。もしこの仕事を離れた時に、「十年以上やってきたけれど、何も残らない」となるのは寂しいなと思ったんです。

50代半ばになり、仕事との両立や記憶力の面など、このチャレンジには不安な面が多かったのですが、思い切ってチャレンジしてみました

――数ある資格の中で、精神保健福祉士だったのですね。

アキさん

はい。社会福祉士もあると思いますが、普段接している利用者様のことを考えると、精神保健福祉士の方が自分には身近に感じられました。周りにも精神保健福祉士の資格を持っている方が多かったので、よりイメージしやすかったというのもあります。

支援の現場で、利用者様の相談を聞くことがあります。その時に、自分の経験だけではなく、専門的な知識や考え方に基づいて支援できるようになりたい。そういう思いが少しずつ強くなっていきました。

資格サポートと、周囲の情報が背中を押した

――資格取得に向けて、最初はどのように動き始めたのですか?

アキさん

SHIPの資格取得サポート制度を利用して、なるべく負担が少なく済む学校を探しました。周りに資格を持っている方が多かったので、「ここは安かったよ」といった情報をいただけたのはありがたかったです。そうした情報をもとにインターネットでも調べて、資料を取り寄せました。

思っていたよりも、最初の一歩はスムーズでした。周りに経験者がいたことで、何から始めればいいのかが見えやすかったんだと思います。資格取得を応援してもらえる制度があったことも、大きかったです。

※SHIPの資格取得サポート制度とは、国家資格の受験資格を得るために必要な養成講座の受講費用等を補助するほか、スクーリングや現地実習、受験勉強のための有給休暇の取得に配慮するなど、職員の資格取得を支援する制度です。

――学校に入ってからは、どんな日々でしたか?

アキさん

2023年4月に学校に入学しました。月ごとに課されるレポートに取り組み、月1回程度のスクーリングにも通いました。レポートはいつも期限ギリギリでしたが、何とか提出していました。2024年8月に最終レポートも合格し、精神保健福祉士の受験資格を得ることができました

ただ、そこから試験勉強を進めるのは簡単ではありませんでした。仕事をしながらなので、疲れている日もありますし、家に帰るとどうしても休んでしまいます。自分は家では勉強できないとわかっていたので、勉強する場所を変えることにしました。

図書館が、勉強のスイッチになった

――働きながら、どうやって勉強時間を確保していたのですか?

アキさん

休みの日は昼ごろから、仕事の日は仕事が終わってから、図書館の学習室に行くようにしていました。なるべく図書館が終わる時間まで勉強するようにして、図書館が休みの日はネットカフェに行くことも多かったです。

勉強は、過去問を解きながらテキストを見て、マーカーで線を引くやり方をしていました。集中力が長く続かないので、25分勉強して5分休憩する動画をイヤホンで聞きながら進めました。25分経つと合図があって、5分の休憩があり、また次の25分に入る。休憩中も、図書館なので何か別のことをするというより、テキストをパラパラ見ていました。

――周りにはあまり言わずに勉強されていたそうですね。

アキさん

そうですね。大っぴらにするのが嫌だったのと、周りにあまり迷惑をかけたくない気持ちがありました。「今度受けるんです」と言うと、「どうでした?」と聞かれるかもしれないですし、落ちた時に報告するのも嫌だなと思っていました。受かってからでいいかな、という感じでした。

久々の資格の勉強だったので、記憶力がかなり落ちていたのは改めてショックでした。だから、自分の意志や記憶力だけに頼るのではなく、環境を変えるしかないと思いました。図書館の学習室に行くと、周りは勉強している人ばかりです。そこに引きずられるように、自分も学習室が終わる時間までやっていました。

あと1点が、もう一度の力になった

――1回目の試験は、不合格だったのですよね。

アキさん

はい。2025年2月に1回目の試験を受けました。その年はカリキュラムの変更があり、試験内容がどのように変わるかわからない中での挑戦でした。実際に受けてみると非常に難しく、手応えはありませんでした。ほとんど歯が立たなかった感覚でした。

ところが、通知が来た時に見てみると、合格点まであと1点だったんです。落ち込むというより、「あと1点だったんだ」と意外な気持ちになりました。あと1点なら、もう少し何とかなるかもしれない。ここまでかけてきた時間を無駄にしたくないという気持ちもあり、再挑戦しようと思いました

――2回目に向けて、大きく変えたことはありましたか?

アキさん

勉強方法を大きく変えたわけではありません。家は休む場所、寝る場所、好きなことをする場所にして、勉強は図書館やネットカフェで行う。そこは変えませんでした。毎日どこかでできればと思って、勉強道具はだいたい常に持ち歩いていました。

直前には、養成学校の各科目の動画を購入して、弱点部分の4科目分を勉強しました。ただ、1回目を受けたことで試験の雰囲気を知れたのは大きかったです。勉強以外の部分、特に寒さ対策なども考えられるようになりました。

自分の油断との戦いだった

――資格取得までの過程で、一番苦しかったのはどんなことでしたか?

アキさん

一番苦しかったのは、「まだ時間はある」という自分の油断との戦いでした。仕事で疲れていると、「今日はいいや」と思う日もあります。最初の頃は、そういう日も結構ありました。

でも、試験が近づくにつれて、思っていたように勉強が進んでいないことに焦りが出てきました。このままだとまた落ちるよ、と自分に言い聞かせながら、家に帰らず、図書館やネットカフェに行くようにしました。環境を変えることで、スイッチを無理やり入れる感じです。自分の中の油断に勝つというより、油断しにくい場所に自分を連れていくようにしていました。

――2回目の試験当日にも、大変なことがあったそうですね。

アキさん

試験当日の朝に、大量の鼻血が出たんです。本当に止まらなくて、試験をやめようか、救急車を呼ぼうかと本気で迷いました。横になって何とか止まったので会場に行くことはできましたが、試験中にまた出たらどうしようという不安がありました。

試験自体も、昨年より難しく感じました。終了時に2問ほど解答できていないところも見つかり、今年もダメだと思っていました。また来年受けようと思っていたくらいです。なので、合格していると知った時は、嬉しいというより、狐につままれたような不思議な気持ちになりました。

資格は、支援の幅を広げるもの

――資格取得を通じて、資格そのもの以外に得られたものはありますか?

アキさん

一つは、自信です。年齢を重ねてから勉強するのは簡単ではありませんでしたが、それでもやり方を工夫すれば合格までたどり着けるとわかりました。自分は家では勉強できない、集中力も長く続かない。そういう自分の特徴を踏まえて、図書館に行く、25分ごとに区切る、弱点部分の動画を見るなど、自分なりのやり方を作れたことは大きかったです。

もう一つは、支援に対する考え方の引き出しが増えたことです。資格を取ったから、すぐに何でもできるわけではありません。でも、これまでの経験値に加えて、専門的な知識という土台ができました。自分の中に根拠ができたことで、日々の関わり方にも少しずつ活かしていけるのではないかと思っています。

――今後、資格をどのように支援に活かしていきたいですか?

アキさん

利用者様の意思決定に沿った支援を、より専門的に、具体的に行っていきたいです。それが、利用者様の人生においての利益につながると思っています。

支援をしていると、自分の経験や感覚だけで考えてしまいそうになることがあります。でも、資格取得のために学んだことで、別の視点から考えられる部分も増えました。利用者様の「こうなりたい」という気持ちを尊重しながら、その方にとって必要な情報や選択肢を一緒に考えていきたいです。

未経験でも、学びながら進める職場

――最後に、SHIPへの転職を検討している方へメッセージをお願いします。

アキさん

未経験の方だと、さまざまな面で面食らう出来事がたくさんあると思います。自分もそうでした。ただ、SHIPは比較的自由度が高く、上から下への風通しも良いと思います。

わからないことは職員に聞いてください。親切に教えてくださる方が多いと思いますし、会議などでも思ったことを発言しやすい雰囲気があります。資格サポートがあり、関係資格には手当が出て、給料にも反映されるところも大きいです。

自分のように未経験から入って、現場で悩みながら学び、資格取得まで進むこともできます。最初から資格や経験がなくても、学び続けたい気持ちがある方なら、少しずつ進んでいける職場だと思います。新しい経験を選んでみたい方には、ぜひ一度、話を聞いてみてほしいです。

 


アキさん、ありがとうございました!

未経験から障害福祉の現場に入り、十年以上の経験の中で「支援の根拠」を求め、精神保健福祉士に挑戦したアキさん。

その歩みは、働きながら学ぶことの大変さと、それでも一歩ずつ積み重ねることの力を教えてくれました。

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