【職員インタビュー】初日に受けた「他害」の驚きから、あきらめない積み重ね「友セカンド」小島さん
グループホーム「友セカンド」の世話人の小島さんにお話を伺いました。
前職までは老人ホームや訪問介護などで働き、高齢福祉から障害福祉の分野へ転職し、2022年4月に入社されました。
介護福祉士の資格をお持ちで、社会福祉士も今年合格されたそうです。初めて重度知的障害者の方々への支援の仕事に就いて感じたこと、前職との違いや、働きながらの資格取得についても伺いました。
社会福祉士取得のため、高齢者支援から障害者支援の場へ
――簡単な経歴を教えてもらえますか?
小島
大学4年生のときに、卒論ゼミ以外で単位を取る機会があり、その際にいくつか受けた社会福祉の授業が面白く、福祉系の仕事に就いてみたいと思いました。
当時は就職氷河期で内定がなかなかもらえない中、友だちが内定をもらったという話を聞き、同じ老人ホームに自分も応募して、就職が決まりました。
介護福祉士の受験資格が取れる3年間勤めた後、大勢の方が入居する老人ホームより、一人ひとりともっと長く接する時間が取れる場で働きたいと思い、訪問介護に転職しました。
その後も、訪問介護、訪問入浴、デイサービス、相談員など、2~3年勤務したら別の事業も経験したいと転職活動をして、高齢者支援の仕事をひと通り経験しました。
介護福祉士の次に社会福祉士の資格の取得も目指しましたがなかなか難しく、より深く理解するために、実際に障害者支援の現場でも働いてみようと考えはじめました。
――SHIPに転職したキッカケを教えてください。
小島
転職先を探す中で、地元にボンシュシュやエスプリなどSHIPの就労継続支援B型の事業所があることを知り、就労支援の仕事をやってみたいと思い、応募しました。
すぐ返事が来たのですが、採用担当の高橋さんに「友セカンドはどうでしょう?」と勧められました。希望とは違いましたが、グループホームの経験もなかったので、チャレンジ精神で「やってみよう!」と承諾しました。
――現在の仕事内容を教えてください。
小島
着替えや入浴など身の回りの支援、生活介護「笑プラス」への通所の送り出しとお迎え、日用品の補充や通院同行などを行っています。
事務的な仕事は、毎月の振り返り表の作成などがあります。
職員は、一人あたり大体2名の利用者様を担当しています。
――どのような利用者様がいらっしゃいますか?
小島
重度の知的障害のため、言葉での会話が苦手な方がほとんどです。少し喋れる方もいますが、2~3語程度の最低限の言葉でやり取りしています。
言葉でのコミュニケーションだと情報量が多過ぎてパニックになってしまう方が多いので、絵や写真のカードなど、視覚提示ツールでのコミュニケーションが主です。
身の回りのことは、自分で多少できる方もいれば、見守りが必要な方、全部お手伝いが必要な方などさまざまです。
サポートの内容は、できない部分を手伝うのが主で、できる部分は最初は少しでもご自身でやってもらい、必要に応じて職員が補助しています。
私が勤務している女性棟の利用者様は現在10名で、20代から30代の利用者様が多く、50代の方も1名いらっしゃいます。
平日は生活介護に通所し、土日のどちらかは行動援護や移動支援のサービスを利用して外出する方もいらっしゃいます。
初日からビックリ!利用者様からの「他害」に学んだこと
――転職してみて、今までとどんな違いがありましたか?
小島
前職までは高齢者の方が対象だったので、こちらが率先してできない部分を介護することが多かったです。
友セカンドの利用者様は年齢的にも若く、これから伸ばしていけるところ、理解して学習していけるところがたくさんあるので、少しのサポートで自立支援を目指していることに、前職との違いを感じています。
入社初日はちょうど利用者様の多い休日で、廊下を走っている方がいらっしゃいました。私はまだコミュニケーション方法がまったく分からず、普通に話しかけたら、初日から他害を受けてしまいました。
急に頭を叩かれてビックリしましたが、目の前にいることが刺激になる場合もあり、状況によっては隠れるといった対応も必要だと学びました。
支援の内容がそれまでの高齢者施設とまったく違うことも、初めて障害者支援の現場に入ってみて驚いたことです。
――初日から大変でしたね。その後どうでしたか?
小島
たまたまその他害を受けた方の担当になり、2年近く接してきました。その中で、絵カードによる支援が上手くいったことが印象に残っています。
お出かけのない日でも落ち着いて過ごせるようになったので、やはりあきらめないで支援を続けていくことが大事なんだなと実感しました。
他にも、危ないなと感じたら早めに距離を取るなどの回避のスキルも身についてきましたので、直接的な他害を受けることはなくなっています。
また、何かあったときは、無理せずにすぐに近くに勤務している男性棟の職員と連携して対応することで、落ち着いて支援することができるようになっています。
――他に、障害者の皆さんと接して感じたことはありますか?
小島
実際に重度の障害者の方と接して、それまで持っていたイメージが変わりました。
入社する前は駅やバスなどで見かけると、あまり近寄らない方が良いのかなとか、何を考えているか分からないなとか、偏見というか、ちょっと怖いようなイメージがありました。
実際に接してみると、こちらの言っていることは思った以上に通じていて、コミュニケーションをしていて楽しいなと感じることも多く、イメージが本当に変わりました。
落ち着いて過ごせるような「絵カード支援」と「余暇支援」
――仕事のやりがいや大変なことを教えてください。
小島
工夫して作成した視覚提示ツールの絵カードなどが、相手の利用者様に伝わると、作って良かったと、やりがいを感じます。
大変なことは、利用者様の予定が急に変わったときの対応です。
基本的には予定は事前に決まっているのですが、ご家族との外出がキャンセルになったり、雨で出かけられなくなったりすると、変更をスムーズに受け入れられないこともあります。
そういった急な変更が生じるケースでは、いつも使っている絵カードでは理解できずにパニックになってしまいます。そして、落ち着いていただくまでに時間がかかってしまうこともあります。
また、新型コロナウイルスが流行ったときは大変でした。
利用者様もそうですが、職員もたくさん感染してしまいました。
でも、SHIPの別事業所から応援に来てくれて、何とか利用者様の生活を維持することができました。
とはいえ、コロナ禍の状況下で利用者様に自室で待機してもらうことは非常にむずかしく、いつものように歩き回ってしまうことが多かったです。
そのため、パーテーションを廊下に設置して視覚的な刺激を減らすなど、なんとかお部屋で過ごしてもらおうと奮闘していました・・・
――「友セカンド」で特に力を入れているサービスを教えてください。
小島
一つは今までも話したように「視覚提示」です。
スケジュールの理解を促すために、土曜なら「青」、日曜なら「赤」と、色によって予定のイメージを補助しています。
もう一つは「余暇支援」に力を入れています。
活動先への通所のない休日は、知的障害や自閉症をもつ方々の苦手とする空き時間がたくさん発生します。
そのため、おもちゃやDVD、音楽などを用意して、アイドルタイムも安心して過ごせる環境づくりをしています。
さらに、行動援護や移動支援のサービスを利用することで、退屈することなく生活することができていると思います。
友セカンドの利用者様は障害の特性から、やることが決まっていないと、ソワソワして落ち着かず、お部屋から出たらなかなか戻れないといったことがあります。
そのようなときは「お手伝い支援」をおこなっていただきます。
例えば、洗濯物をたたんでもらったり、お掃除をしてもらうなど、集中して作業してもらう時間を作ることで、ソワソワせず、落ち着いて過ごしてもらっています。
服をたたむことが好きな利用者様は、クリーニング屋さんのように本当に丁寧にたたまれるので、「几帳面な方がいるのだなぁ」とビックリしてしまいまう!
このようにご自身の得意なことも活かせる場をつくれるように試行錯誤しています。
主任世話人として、まず課題は「コミュニケーション」
――職場の雰囲気、魅力を、前職との違いも含めて教えてください。
小島
職員は正社員よりも非常勤の人数が多く、40~50代の方が多いです。
みんな楽しく話せる職場なので、支援で行き詰ったこともすぐに話し合い、上司であるサービス管理責任者(以下、サビ管)の妹尾さんにも気軽に相談できるので、あまり悩むことはありません。
お休みもみんなで相談して、被らないように取り合っているのでありがたいです。
資格取得のために学校に通う必要があるのですが、通学に合わせて休みを固定していただきました。
前職と比べると、定時でしっかり帰れるところは大きな魅力です。
また、利用者様が生活介護に通所している空いた時間を使って、書類作成など自分の作業を進められます。
仕事は勤務時間の内で終わらせられますので、残業はほとんどありません。
――今後の目標、課題を教えてください。
小島
今年の4月から主任世話人に就任したので、生活支援員・世話人の皆さんの相談に乗るなどしていきたいです。
また、友セカンドの支援でもっとよくできると感じる部分は、急な変更ごとを減らし、利用者様が混乱せずに落ち着いて過ごせる時間を増やしていくことです。
仮に変更ごとがあっても少しずつ変えていくことで、もっともっと安心して暮らしていただきたいと考えています。
そして今、課題に感じていることは、利用者様とのコミュニケーションです。
これまでは、知的障害のある方々に対して言語で話しかけてしまいがちでした。
今度は主任として見本となるように、必要以上に言葉を使わず、ちょうどいい距離を取りながら、刺激を減らして、落ち着いて過ごしてもらえるような支援方法をもっと取りたいと考えています。
また、研修でもさらに専門的スキルを身に着けていきたいです。
SHIPでは内部研修が毎月実施されており、氷山モデルやABC分析を個別のケースに当てはめて考えることができ、事例検討のグループワークなども行っています。
このような取り組みは、今までの職場に比べて内容も濃く、非常に有益だと思います。
他にも入社後、強度行動障害の基礎と実践の外部研修を受けてためになったので、今後は他の外部研修も受けてみたいと思っています。
国家資格取得までの道のり
――働きながらの社会福祉士の資格取得で大変だったことなどはありますか?
小島
去年は、先ほどお話ししたように、資格取得に向けて、休日は予備校に通っていました。社会福祉士の試験は思ったより難しく、6回目の今年、ようやく合格することができました。次は精神保健福祉士も取得したいと思っています。
仕事をしながら予備校に通うのはそれほど大変ではありませんでしたが、休んだ日に起きた問題の対応が大変でした。
担当の利用者様が、私が不在の日にパニックになったという申し送りを受けたことがありました。
実際にその様子を自分の目では見ていないので、改善策を考えるのが大変でした。その日は休日で、かつ外出の予定が急にキャンセルになってしまったそうです。
――具体的にはどうのような対応をしたのでしょうか?
小島
新たな視覚提示のカードを作って、理解を促進できたらと考えました。
「何曜日にお出かけをする」の予定に合わせたカードを作成してお伝えするようにしました。
また、その利用者様はイラストよりも実写の方が理解しやすいので、写真カードを採用しました。
まずは「日曜日は出かけないので、友セカンドで過ごしましょう」と伝えるため、「部屋着を着て部屋で過ごす」ことが分かるように、『部屋着の写真カード』を作りました。
でも、それだけだと理解がむずかしそうだったので、出かける日の土曜日のカードも作れば、「出かける日」と「出かけない日」の両方が分かるのではないかと考えました。
外出する日は部屋着ではなく、お出かけ用の「洋服」を着ること、そしてお母様も一緒に出かけられるので「洋服」と「お母様」が一緒に写った写真を提示しました。
すると、パニックがなくなり、予定を理解して落ち着いて過ごしてもらえるようになりました。
まわりへの意識と、気分転換が大切
――どんな人と働きたい、どんな人がSHIPに向いていると思いますか?
小島
明るく元気な人がいると職場もコミュニケーションが取りやすくなると思います。
また、創意工夫のできる、アイディアをたくさん出せる人だと、支援で行き詰らないので良いと思います。
――最後に、福祉で長く働くために必要なことは何だと思いますか?
小島
個人的な経験から言うと、自分がされてイヤなことは相手にしないよう気をつけることです。
まだ20代の頃は介護の仕事に慣れていなかったので、注意されて凹むことも多かったです。ただ「注意されたときの自分の対応はどうだったか・・・」と、反省することもありました。
同僚や利用者様を含む関わる人たち全てに対して、この点を忘れずに接していけば、お互い嫌なムードになりませんし、長く仕事を続けていけると思います。
また、他の人の対応を見ていて、無意識に忘れていると気づくことも多いので、まわりを観察することも大事だなぁ、とも感じています。
そして長く働くためには、休日を使っての気分転換なども大事かと思います。
私は休みの日は温泉に行くなどしてリフレッシュして、新たな気持ちで仕事に挑むことができています!
小島さん、ありがとうございました。
社会福祉士の合格と、主任世話人への就任、おめでとうございます!!
支援も、資格取得も、あきらめないで続けていくことを実践されている姿勢に感心しました。
今後のご活躍も期待しています!
障害福祉マンガ劇場「人生のてんかん記」作者・パープルカフェ主催・難治性てんかん当事者
元グループホーム(ラファミド八王子)職員・現在は自宅で仕事
国家資格:精神保健福祉士・社会福祉士