認知機能リハビリテーションの導入に向けて…
今年の夏、統合失調症の認知機能改善に向けた支援方法として『Jcores(認知機能リハビリテーション)』を取り入れていくぞ~!的なブログを書きました。
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その後、この新サービスの導入に向けた評価ツールも準備しており、現在、みんなで勉強中です。
なぜ、評価ツールの準備が必要なのか? という話も一応させてください。
結論から言うと、認知機能リハビリテーションをおこなう前と後で、認知機能そのものに どのような変化が見られるのか、データから効果測定し、対象者へフィードバックしないと意味がないからです。
繰り返しになりますが、私たちはJcoresという認知機能リハビリテーションソフトを使う予定です。
Jcoresの特徴をひと言でいうとパソコンでおこなう『ゲームソフト』です。
ゲームなので、クライエントも 支援者も お互いに楽しくできそうな気分になります。早くやっちゃおうぜ~ となりがちです。
でも、ゲームで遊んだり、ゲームが上手くなることが目的ではありません。
認知機能を高め、その機能を使いながら、仕事や生活を改善していくことが目的です。
だからこそ、評価ツールを揃えて効果測定しなければなりません。
また、Jcoresの対象者としてふさわしいかどうか?
スクリーニングのツールも準備しなければですね。
話を戻して、どのような評価ツールを使って認知機能・精神症状・その他諸々の評価をすすめる予定なのか?
少しだけ紹介したいと思います。
<BACS-J:Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia Japanese version>
統合失調症患者の認知機能を簡易的に評価する心理テストです。検査者より課題を提供し、30分程度の実施時間でおこないます。
BACSでは、認知機能の6領域『言語性記憶、ワーキングメモリ、運動機能、言語流暢性、注意・情報処理速度、遂行機能』を評価します。
テストの方法は『言語性記憶課題、数字順列課題、トークン運動課題、意味・文字流暢性課題、符号課題、ロンドン塔検査』を用います。
『Jcores(認知機能リハビリテーション)』のサービス導入に際して、介入前後の認知機能を把握することは大切です。
繰り返しになりますが、Jcoresはパソコンのゲームソフトを使っておこなうため、認知機能の変化を把握していないと『ただのゲーム遊び』になってしまいます…
だからこそ、BACS-J を取り入れて、認知機能のどの領域が障害されているのかを見立て、Jcoresを提供することで障害された認知機能そのものを改善させ、改善した認知機能を仕事や生活に活かせるよう次の支援サービス提供へとつなげていきたいと考えています。
<JART50:Japanese Adult Reading Test>
病気になる前のIQ(知能指数)を 簡易的(10分程度)に評価する心理テストです。
なぜ病気になる前のIQが、病気になった後からでも分かるのでしょうか?これは本当に なぞ ですよね?
実は、数唱課題などの復唱能力や、慣れている動作・技能といった『手続き記憶』は比較的保持されやすいというところがポイントのようです。
そのポイントを踏まえ、この心理テストでは『難読単語』つまり『漢字の音読』が課題として提示されます。
漢字の音読は、その字形から推察するというよりも、その漢字を知っていることに加えて『読むための文脈』を要することが病前IQを把握する肝になるようです。
50問の漢字課題が出題され、それを音読してもらうだけなので、比較的スムーズに導入できるところが利点です。
仮に、仕事上のミスが目立っている統合失調症のクライエントがいたとします。
仮に、その人の病前IQは高かったとします。
もし、Jcoresのサービス提供によって、病前IQまで高められるとしたらどうでしょう。
認知機能が高まって、仕事上のミスなど減ると見立てられたらどうでしょう。やはりJART50 による検査は必要です。
でも、もともと病前IQが低い人の場合は、改善を見込むことが難しいので、Jcoresのサービス導入自体を見送った方が賢明です…
そのような見立てができそうな心理テストですね。
<PANSS:Positive And Negative Syndrome Scale)
統合失調症の陽性症状と陰性症状を評価する心理テストです。
陽性尺度・陰性尺度の評価に加えて、総合精神病理尺度も評価することができます。
こちらの心理テストは、患者による主観的評価ではなく、検査者による『面接』および 看護師等による『観察』によって評価していきます。
なお、信頼性を得るために、二人以上の熟練した検査者が、同じ面接に基づいて評価をおこない、それぞれの評点について討議のうえ一致させることが求められる、かなり難易度の高い心理テストとなります。
正直なところ、当法人で導入することはためらっています(スキルが追いつかない…)
でも、陽性症状と陰性症状がどのくらい生活の支障になっているかを理解するためには必要なテストになります。
とにかく勉強は進めます!
個人的には、陽性症状・陰性症状の強く出ている人には、まずはその症状の改善を優先した方が賢明かと考えます。
そのため、今回のJcoresのサービス導入自体を見送ることも検討しなければなりません…
<WHO QOL:WHO Quality Of Life >
WHO(世界保健機構)が開発した 現在のQOL(生活の質) の状態を評価する心理テストです。
4つの領域(身体的領域・心理的領域・社会的関係・環境領域)から26項目の設問により、クライエントの主観的回答からQOLを評価します。
15~20分程度と比較的短時間でQOLの評価ができる心理テストです。
ちなみに、WHOはQOLを「個人が生活する文化や価値観の中で、目標や期待、基準および関心に関わる自分自身の人生の状況についての認識」と定義しています。
そもそも精神疾患のある人の主観的な評価に対する妥当性には疑念が示されていましたが、QOL研究の結果、相応に評価できるとの結論に至っているようです。
そして、この心理テストの結果は、たとえば、精神疾患の重症度との関連、各種治療法(治療薬の効用と副作用や満足度)などの主観的評価として活用されています。
国内では、統合失調症・うつ病・パニック障害・心療内科受診群、認知症高齢者の介護者などに使用されており、海外では、強迫性障害・摂食障害・薬物依存などにも使用されているようです。
私たちの場合、Jcoresによって認知機能が高まった後、例えば、就職できたり、仕事のミスが減って自信がついたり、給料が上がったり、コミュニケーションが円滑になったり、異性と付き合えたり、結婚したり、といったところも併せて高まっていくのが理想だと考えています。
<まとめ>
私たち社会福祉法人SHIPには、複数グループホームがあります。
入居されている利用者さまの障害特性は様々です。
そして、提供できるサービスは、残念ながら職員のスキルによってマチマチという状態です。
これは本当に課題です。
実は、今回のような新サービスの取り組みに力を入れているのは、提供できるサービスを平準化していこうというのが狙いなんです。
スタッフ同士が共に学び合いながら、成長することを止めない組織になって、本当に質の高いサービスを提供していきたいです。
道半ばではありますが、ともに成長し続けていきましょう!
アディオス・アミーゴ。
理事・障害者事業部長
国家資格:公認心理師・精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士
その他:TSM(トラウマセンシティブマインドフルネス)修了・SE™プラクティショナー初級修了・TFTパートナー・ChatGPTエジソン塾1期生・整理収納アドバイザー2級 など
『努力すること』と『環境に助けてもらうこと』のバランスを研究し、自分自身の最適化を目指して精進中