【SHIP職員インタビュー】
「楽しくて楽な支援、してます」 笑(えみ) 伊能殿記さん

 

生活介護事業所「笑(えみ)」で生活支援員をされている伊能殿記(いのう・とのき)さん、

複数の福祉の職場で研鑽を積んだのち、SHIPへ入社。

「笑」で働きはじめて1年ちょっとになります。

その過程と、これからについてお話いただきました。

 

 

「現場での支援がしたい!」

――伊能さんは、SHIPに入るまで複数の福祉の職場を経験されています。最初から福祉の世界に興味があったのでしょうか?

 

伊能

最初から福祉職に興味があったのではありませんでした。年の離れた兄弟がいたこともあり、小さなお子様の保育に興味があったので、大学で保育士と幼稚園教諭一種を取りました。

大学卒業後は幼稚園で働きました。その後、父親の経営するデイサービスの会社へ転職し、高齢者の生活の介護の仕事をするようになりました。

 

その後、介護系の別の会社へ移り、生活相談員の仕事をしたところで「福祉の仕事をこれからも続けていきたい」と思い、専門学校に入りなおして社会福祉士の資格を取得しました。

 

資格を取ってからは、障害を持つお子様の支援を行なう児童発達支援センターに勤めました。その後、高齢者の方々の支援を行なう地域包括支援センターで相談員をしました。

 

 

――色々な所で、色々な福祉関係の仕事をされたんですね。そんな中、どうして障害分野の生活介護事業所に?

 

伊能

現場での支援が自分には合っているように感じたからです。もちろん、現場での支援ならではの大変さはあります。

ちょっとしたミスが利用者様に大きな影響を与えてしまうピリピリした感じもありますし、そもそも健康な方相手の仕事ではなく、疾患を抱えたお客様も多いです。

極端な話、生きているのが奇跡という利用者様もいらっしゃいました。でも、そんな緊張感ある現場の仕事に充実感を覚えるんです。

 

 

 

「守り」から「攻め」の支援

――「笑」以前と以後とでは、何か違いがありますか?

 

伊能

「笑」で働き始める前は、「こうしたい、ああしたい」よりも、「これをやったら怒られる」「怒られないように仕事をしよう」という環境であることが多かったですね。

それでもちょっとしたミスはするわけで、萎縮してしまう。萎縮すると、できることもできなくなってしまう。よりミスしやすい状況に陥ってしまい……という悪循環になりがちでした。

 

「笑」で働き始めてからは、自分の考えを言うことや意見交換をすることが推奨されている感じがしています。何を言っても、必ず受け止めてくれるんです。「違う」とは言われません。自己肯定感が上がるんです。

それと、ズバッと言葉を濁さずに言えるので、コミュニケーションコストが低く、風通しの良い職場だと感じています。

 

 

例えば、支援中に机を強くバンバン叩いている利用者様がいらっしゃったんです。私は、その利用者様の行為を制止しました。

この制止するという行為をしないと、ともすれば他利用者様や職員に危害が加わる危険性もあり、エスカレートする可能性もある行動だと考えたからです。ただ一方で、行動を制限することが権利擁護に反するという見方もあります。

でも、「そんなことしてはダメだ!」と一方的に注意をされるのではなく、「その考え方もあるよね」と肯定的な言葉をかけてくれました。

 

また、請求書のチェックでミスがあったときのこと。ミスが分かったときは「しまった!怒られる!」と思いましたが、上司からは「次、気をつけていこう。慣れない中、大変だったね」とあたたかい声かけをしてもらいました。これも「笑」の文化なのかもしれないなと考えています。

 

そういった土壌がある職場なので、どんどん「こうしたい」と思うことを進めることができ、以前の「守り」の姿勢から一転して「攻め」の姿勢で利用者様の支援を積極的に行なうことができています。

 

 

 

「難しい」けど「楽しい」

――「笑」は重度の(知的・精神)障害をもつ方にご利用いただいています。「笑」ならではの支援の難しさといったことはありますか。

 

伊能

何もかもが難しいです(笑) 「この利用者様は、今、何を感じているんだろう、今、何を考えているんだろう、何を手がかりにこの行動をしているんだろう」と考えこむ毎日です。

 

例えば、話はできるのに「座ってください」と言っても座ろうとしない利用者様がいらっしゃいました。そこで、椅子に座っている絵を見せたところ、すんなりと座っていただけました。喋ることはできるので、「座ってください」という言葉が伝わるものだと思っていましたがそれでは足りず、イラストが必要だったことが分かりました。

そういったことは、実際に色々と試してみないと分からないですよね。「我々支援者の感覚からしたら、当然こうなるだろう」というのが通じないところに難しさを感じます。

 

 

でもその難しさは、やりがい・楽しさとセットなんです。「この利用者様のことが少し分かったかもしれない」となったら、急に楽しくなります。また、そうした支援をして変わっていく利用者様の様子を見るのもまた良いですね。

3か月前まではまったく落ち着きがなかった利用者様が、今ではかなり落ち着いて行動できるようになっているのを見ると、私は気持ちがほっこりします。

 

他にも、「イラスト」ではダメで「写真」じゃないとこちらから伝えたい内容が分からない利用者様もいらっしゃいます。本当に利用者様ごとに違う支援が必要で、それを探るのが楽しいんです。

 

 

 

SHIPの「笑」を選んだ決め手は「楽だから」

――なぜ職場として「笑」を選んだんでしょうか?

 

伊能

見学させてもらったときに、アットホームな雰囲気を感じたのがまずは一番ですね。職員がみな和気あいあいとしていて。

でもそれだけではありません。とてもびっくりしたのは、利用者様の後ろでアセスメントシート(サービス利用の背景や、必要な支援の内容などをまとめたシート)を職員が書いていたのを見たときです。

 

「そんなことをしていて、いきなり利用者様が走り回ってしまったらどうやって止めるのか」と思いました。

以前の職場では、走り回る自閉症の利用者様に対して、走り回ることのないよう言い聞かせて教えるような支援が行なわれており、走らせると私自身注意を受けていました。

 

「笑」では、もちろん周囲に危害が加わるような行為は止めますが、まずは「なぜその利用者様は走るのか」と見ていくんですね。そして、その理由から「それなら、どういう支援をしたら走らないように促せるか」を考えていく。

利用者様の行動を無理やり押さえる体力労働ではないんです。それって、利用者様にとっても、我々支援者にとっても双方に楽な支援であり、次々とステップを踏んでいける質の高い支援だと思います。

 

 

 

――楽で質の高い支援、と。

 

伊能

「楽」と言っても、手抜きができるとか何もしないでお給料がもらえるという意味ではありませんよ(笑)

無駄な労力を割いてしまうのではなく、本来注力すべき活動に全力をかけられるといった意味合いです。

 

また、「質の高い支援」というと、ちょっと高尚な気がしますが、例えばこんな考え方なんです。

「トマトが嫌いだけどケチャップは大丈夫」という人がいたとします。試しに焼き鳥屋さんでトマトのベーコン巻きを頼んでみたら食べられた。「焼いたら食べられるのか?」「トマトを半分に切ったら大丈夫なのか?」などと色々と仮説が思い浮かびます。

 

そういった試行を繰り返して、「トマトの皮を噛んでプチッとなるあの感触が嫌」という結論にたどりつく。無理やり「トマトを食べろ!」あるいは「トマトはもう食べないようにしよう!」というのではなく、本当の原因や理由を調べて、その上で苦手に対してアプローチしていくという考え方です。

 

苦手なことやできないことは真正面から体当たりして解決しようとするととてもしんどいですが、ものの見方や考え方を変えると、意外と解決策が見つかるものです。「笑」にきて、そんな風に柔軟に動くことができるようになったのもまた、自分が「笑」に来て良かったなと思うところです。

 

 

 

伊能さんの「これから」

――そんな伊能さん、これからはどうしていきたいですか。

 

伊能

とにかく今は、もっと知識を広げたいです。そのために週末にスクーリングを受けています。

また、現場での経験ももっともっと積んでいき、支援者としてのスキルを上げて指導できる立場になっていきたいと考えています。

また、もっと長い将来的なこととしては、自分で事業所を立てたいです。

 

 

 


 

伊能さん、ありがとうございます。

様々な福祉職を経験されながらも、

常に前向きに仕事に取り組まれている様子が分かりました。

これからも頑張ってください!