【職員インタビュー】徹底した個別支援の現場でスキルアップをめざして「子笑」川畑さん

放課後等デイサービス子笑(以下、子笑(こえみ))の支援スタッフ、川畑さんにお話を伺いました。

臨床心理士公認心理師の資格をお持ちです。

病院と放課後等デイサービスで働いた後、2022年の10月に入社されました。

入社の理由や、前の職場との違いについても伺っています。

 

 

お子さまの「日常に近い場で学びたい」、病院から放課後デイへ

――川畑さんの経歴を簡単に教えてもらえますか?

 

川畑

大学と大学院は臨床心理学の専攻で、大学院修了時に資格を取り、病院で勤めました。地元の石川県の金沢で2つの病院を経験した後、放課後等デイサービスで約一年ほど働きました。そして昨年、SHIPに入社して子笑に配属されました。

 

心理学の学校に行ったのは、母親が障害者のジョブコーチをしていた影響が大きいです。

小、中学生のころに、母の職場に連れて行ってもらえる機会があり、掃除をすごく丁寧におこなっている様子などを見て「すごいなあ」と感じ、漠然とした興味が湧いたのを覚えています。

 

最初に病院で就職した理由は、石川県は都会と比べて臨床心理士の求人が多くなかったことです。たまたま大学院が紹介してくれた病院とのご縁があり、勤めることになりました。

しかし、病院で心理士として働く中で、「自分はまだ病院で働くレベルではない」と力不足を感じました。

業務の中でお子さまの心理検査や知能検査をおこない、検査結果を保護者に説明したり、医師に報告書を提出したりします。

本来は検査結果から分かることはたくさんあるはずなのに、お子さま一人ひとりに合った説明ができず、教科書的な文章をそのまま書いてしまうような状態でした。

また病院でのお子さまとの関わりは、一・二ヶ月に一回で、長くても50分程度の時間です。

病院という限定された場面でのお子さまの様子や検査結果から、そのお子さまの困りごとや得意なことを想像できるようになるには、もっとお子さまの日常を密に見られる職場で経験を積まないといけないと思いました。

そのころ、ちょうど障害福祉の業界では報酬改定があり、公認心理師・臨床心理士の配置が評価されるようになってきていたので、このタイミングと考え、放課後等デイサービスへの転職を決めました。

 

 

――次に、SHIPに入社したキッカケは何だったのでしょうか?

 

川畑

地元の金沢の放課後等デイサービスに一年間勤めたのですが、そこは支援としてのカタチや理論があるわけではなく、お子さまを遊ばせる場という感じでした。

いけないことをしたときは上司が叱るなど、支援というより指導に近く、特性への理解や対応があまり進んでいませんでした。

お子さまがたくさんいる中で、部屋を分けての支援には限界があったので、せめて「イヤーマフを聴覚過敏の子のために準備してはどうか」と提案したりもしたのですが、「いや、そんなものを大人になってもしているのはおかしいじゃないか!」と上司に言われ、結局は特性への配慮ができず悔しい思いをしました。

言葉は悪いのですが、「ああ、もうダメだな」と思いました。

もっと大きな組織であれば他の支援者にも相談できたのでしょうが、家族経営のような事業所だったので、責任者の言うことが絶対で、改善を働きかける余地もありませんでした・・・

 

「もう限界だ・・・」と思って転職した、というのが正直な気持ちです。

 

転職先にSHIPを選んだキッカケは、地元だと求人が少なかったことと、子笑のホームページを見て期待を持てたことです。

求人サイトなどで放課後等デイサービスの転職先を探したところ、石川県だと児童指導員としての求人はかなり出ていたのですが、臨床心理士や公認心理師としての求人がまだほとんどありませんでした。

東京、名古屋、大阪など、都市部の方が臨床心理士や公認心理師としての求人が多く、「もう地元を出よう!」と決心しました。

いろいろ探した中、子笑のホームページに載っているケースの具体的な事例を見て、すごく理論に基づいた支援をしていることが分かり、ここなら今までと違う支援ができるのではないかと考えました。

 

 

個別支援の実現に向けて、事前準備は抜かりなく

――現在、子笑でのお仕事内容について教えてください。

 

川畑

障害を持っているお子さまの支援を、主に放課後、学校がお休みでない平日におこなっています。

ですから、実際にお子さまと関わるのは学校が終わった後の1~2時間くらいの短い時間です。

 

とはいえ業務はそれだけではなくて、午前中には一人ひとりのお子さまに合った自立課題の支援の準備などをおこないます。最近ですと、クリスマスの飾りつけの創作やイベントの準備に追われていました。

あと、お子さまのいない時間を活用して、個々のケース会議や支援記録などの事務作業を進めています。

 

午後からはお子さまの通所に向けての送迎をしたり、事業所のお部屋で実際に支援を提供します。

そして終了後はお子さまをご自宅に送ったあと、お部屋の掃除をして、終礼をして、その日あったことを職員間で共有します。

もし時間があれば翌日の準備を少ししてから終業、というのが一日の流れです。

 

ココロひとつに❤子笑のクリスマス

 

 

――どんな児童(利用者様)が利用されていますか?

 

川畑

年齢は小学校1年生から高校3年生まで、障害の種類も多種多様なお子さまが利用されています。

現在、登録は22名となっていて、1日に利用される人数は10名くらいです。

 

お子さまの障害種別をみると、SHIPでも支援に力を入れているASD(自閉症スペクトラム障害)の方もいらっしゃいますし、ダウン症や、ASDを伴わない知的な発達遅滞難治性てんかんの方など、本当に多様なお子さまがいらっしゃいます。

 

また、信頼関係が築きやすいお子さまもいれば、過去の経験からすぐには打ち解けられないお子さまもいらっしゃいますので、本当にそれぞれです。

すぐにワッと寄ってきてくれるお子さまとは一ヶ月も経たずに打ち解けられますが、関わりの難しいお子さまとは時間をかけて安全・安心を感じてもらうことに努めます。

入社から1年以上経って、そういったお子さまとも、ようやく信頼関係を築けてきたかなぁと感じています。

 

 

 

相手が子どもだからこそ、大人の都合で言い訳はできない

――子笑での仕事のやりがい、また仕事の大変なところを教えてください。

 

川畑

人と人として対等な関係でやり取りができることです。

放課後等デイサービスのお子さまたちは、まだ世の中の価値観や、善悪の判断ということがまっさらの状態です。

いびつな上下関係の固定観念が生まれないように、わたし自身も「大人の言うことだから聞きなさい」といった言い訳をしないように気をつけています。

「僕もそこは譲歩するから、その代わりやってくれないかな」といったように、年齢は違えど対等なやり取りを通じて、逆にわたしが人間として鍛えられていると感じています。

それがやりがいでもあり、同時に大変でもあるかなぁと思います。

 

 

 

「徹底的な個別支援」と「第三者の視点」が職場の魅力

――子笑でとくに力を入れているサービスはどのようなことですか?

 

川畑

わたしが一番の魅力を感じているのは「徹底的な個別支援の提供」です。

とくにASD(自閉症スペクトラム障害)の支援に力を入れていますが、お子さまが抱える障害の種類は本当に多種多様です。

ASDのお子さまに対しては、パーティションでまわりの刺激を極力少なくする、何をすればいいか分かるように明確に流れを示すなど、分かりやすく過ごしやすい構造化支援を行っています。

個別のスペースを作る必要がないお子さまの場合は、リビングテーブルのブースに何人かで集まって、他のお友達ともコミュニケーションを取りながら創作活動をしたり、ゲームで交流を図ったりといった支援もしています。

 

前の職場は、聴覚過敏の子どもや人付き合いが苦手な子どもでも、一緒の部屋に入れて仲良く遊びましょう、という方針でした。

子笑では、友だちと遊びたい子には遊ぶ場を提供するし、職員とお話ししたい子はお話しできる場を提供する、一人で黙々とやる方がいいというお子さんには一人で集中できる別のスペースを提供するといった、個別のニーズに合わせた支援が行き届いています。

障害の種類だけでなく、お子さまそれぞれの特性や性格など、一人ひとりに合わせて支援を変えているところが、とても力を入れている部分です。

 

 

 

――子笑の職場としての雰囲気を教えてもらえますか?

 

川畑

支援者同士で話しがしやすく、本当にいい雰囲気です。

ベテラン組では、児童発達支援管理責任者の出浦さん、精神保健福祉士の徳永さん、私よりも後から入社した沖吉さん、石川さんも、みなさん本当にいい人で、面白くて、明るい性格の人ばかりです。

困ったときや支援でつまずいたときでも、相談しやすくとても助かります。

 

事業所としての魅力は先ほど話したように、個別支援に尽きるかなと思います。

ここまでTEACCHプログラムなどの専門的な理論を学び、支援に実際に落とし込んでいる事業所はなかなかないな、という実感があります。

 

 

 

それと、すごく良いなと思うのは、第三者の視点が定期的に入ることです。

育成担当スタッフの原田さん中村さんのお二人が、毎月の内部研修のために子笑に来られるのですが、その場で支援で困っていることなどについて、別の視点からアドバイスをもらえることは役立っており、SHIPの組織としての大きさや強みを感じます。

支援は、考える人の数が多ければ多いほど豊かになっていくものだと思うので、いろいろな人の意見が取り入れられるのは良いなと思います。

もし自分一人だけで支援をしていたら、すごく不安で、本当にこの支援は合っているのだろうか?と、葛藤しながらになると思います。

そのような重責に潰されることなくチームでより良い支援を目指して取り組んでいけることは、SHIPという組織の魅力だと思います。

 

【育成担当インタビュー】キャラの立った支援者を育成したい!原田貢さん

 

 

――その他、働きやすさなどは転職前と比べてどうでしょうか?

 

川畑

お休みは取りやすいです。

病院勤務のころもお休みは取りやすかったのですが、前職の放課後等デイサービスでは人員配置が最小限だったこともあり、お休みがなかなか取りづらい環境でした。

子笑だと必要な配置基準以上に支援スタッフを置いて、より質の高いサービスを提供する方針をとっています。ですから、急な所用で休みを取らせてもらうこともできました。

 

また、イベントの準備などがあるとき以外は、ほとんど残業せずに定時で退勤できています。

急なお休みが出ても、残業をしなくても、仕事はしっかりと回せています。

 

お給料もいいですね。

地域差もあるとは思いますが、地方の金沢のころは実家住まいで家賃がかからなかったことを差し引いても、今の方が生活に余裕がありますね。

 

 

 

まずは心理士として、より「スキルアップ」したい

――川畑さんの今後の目標や課題についても教えてください。

 

川畑

児童指導員としては、やっとここからという気持ちです。

入社から一年以上経ってようやく一連の業務にも慣れてきましたし、支援を具体的に進めるために必要な信頼関係も築けてきたと思うので、ここからいよいよスタートだな、という気がしています。

 

私たちは家族ではなく、あくまで支援者なので、24時間何かをしてあげるということはできません。けれど、施設のスタッフとして頼りにしてもらえる存在になっていきたいと考えています。

 

また、キャリアアップの面では、まずは心理士としてより深く研鑽を積み重ねていきたいです。

(SHIPのサポート制度を利用して)別の資格を取るよりも、今は心理士としての研修を受けて知識を積み重ねることに関心があります。心理士というフィールドだけでも一人で全部は担えないほど広いので、まだまだ学ぶことは多いと感じます。

臨床心理士は五年に一回の更新制で、そのためには所定の研修を受けてポイントを貯めていく必要があります。ということで開催されている研修内容は充実しているので、仕事に関連したことや興味のある分野を積極的に受講していくつもりです。

 

将来的には管理責任者になることを考えるかもしれませんが、児童福祉で働いている理由が「お子さんの様子を常に密にみていきたい」「自分の心理士としてのスキルを高めたい」ということだったので、今はまだ児童指導員として、現場での経験を積み重ねたい思いが強いです。

とはいえ心理士の仕事は、成年や高齢者、多種多様な年齢の方々と関わる職種なので、SHIPの他事業所で児童福祉以外の分野に携わることもスキルアップにつながるとも思います。

 

 

 

気持ちが伝え合える関係性を大切に

――川畑さんはどんな人と働きたいですか? また、SHIPに向いている人はどんな人だと思いますか?

 

川畑

価値観に縛られない人、簡単には「良い」と「悪い」という言葉を言わない人と一緒に働きたいです。

良い・悪いを決めることも、ときには必要なことではありますが、白黒つける前に「それ好きだな」とか、「それちょっと苦手だな」とか、自分の気持ちを話してもらいたいと思います。

利用者の皆さんとの関係も同じです。

こちらから「それはイヤだなぁ」と伝えたときに、「川畑さんがイヤだと思っているならやめようかな」と思ってもらえるような、そんな関係になれたら嬉しいです。そして、同僚ともそうありたいと思います。

支援に正解はないので、価値観に縛られず考え続け、いいと思ったことをやってみて、やっぱり違うなと思ったらまた別のよい方向へと考え続けて、最後になって「あぁ、良い支援ができたな」と思える仲間と一緒に働きたいです。

 

向いている人は、対人援助の仕事全般でそうだと思うのですが、オン・オフが付けられる人だと思います。

支援の中での心配事や失敗などをプライベートまで持ち込んでしまうと、どんどん滅入ってメンタルがやられてしまいます。

「これはお仕事、時間になったらおしまい。美味しいものでも食べて帰ろう!」といった具合に、オン・オフをしっかり切り替えられる人は向いていると思います。

 

 

 

――最後に、福祉で長く働くために必要なことは何だと思いますか。

 

川畑

福祉の職場を見ていて本当に思うことは、職場の質、組織の質は本当にバラバラだなぁということです。

ですから私は、福祉で長く働くために必要なことは「良い職場と出会うこと」だと思っています。

わたしの場合、前職が残念ながらそういった職場でなく、結局一年で辞めてしまいましたので・・・

今の職場(子笑)では、まだまだ働きたいなと思っています!

 

 


 

川畑さん、ありがとうございました。

お子さまが相手だからこそ対等なやり取りができるという話は、決めつけているのは大人の方か、なるほどなと思わされました。

ここからがスタートということなので、目標に向かって邁進すると同時に、現場を盛り上げていってほしいです!