TEACCHの理念

こんにちは、ヒューマンリソース推進室の若林です。
 
前回お伝えしたとおり、今回はTEACCHの基本理念ついてお話ししたいと思います。
 
構造化は特殊な環境を設定し、その中でしか生活できない人をつくってしまうと誤解している人もいますが、それはTEACCHの理念からは大幅にかけ離れたものです。
日本では手法だけが広まり、理念はそれほど広まっていないように感じます。
浅い理解でその場だけ手法を取り入れても、目指す方向を間違ってしまいますよね。
そもそもTEACCH プログラムは障害者が地域で暮らすために考えられたプログラムです。
健常者を基準とした適応行動に当てはめるのではなく生きていくために必要なことをストレングスの視点で支援していきます。

 
基本理念
【自閉症の特性を理論より実際の行動観察から理解していく。】
TEACCHは理論や知識だけでなく現場でこそ力を発揮するものなのですよ。
 
【親と専門家が一緒に支援にあたる。】
親に対して自閉症の理解を深めるプログラムもあります。TEACCHでは親を一番身近な支援者としてとらえています。
 
【苦手を補う環境を整えることと、新しいスキルを教えることで適応能力を向上させる。】
TEACCHは新しいことをおぼえるよりも、まずは苦手を補える子供にあった環境調整を重視しています。
 
【個別のプログラムを作成するために正確に評価する。】
TEACCHでは自閉症でもそれぞれ多様なの症状と人格があり、個別のプログラムが必要と考えています。個人を的確に把握するために様々なアセスメントツールが用意されています。
 
【構造化された教育をおこなう。】
構造化は自閉症に共通して必要なものです。ただし、個別に障害の程度は違いますので、具体的な構造化は個別に考えていく必要があります。
 
【認知理論と行動理論を重視する。】
TEACCHは自閉症を認知障害として捉えています。また、行動理論については表出される行動だけでなく、見えない脳の中でどういうことが起きてるかを考えます。
 
【現在のスキルを強調するとともに弱点を認める。】
TEACCHは将来できるかもしれないことではなく、現在できることを大事に考えます。
 
【生涯にわたるコミニティーに基盤をおいた援助。】
TEACCHは自閉症を治癒することのない、生涯にわたる障害と捉えているので、幼少期に集中的にケアするのではなく、障害にわたる地域でのケアが必要と考えています。

 
TEACCHは決して閉ざされた環境での安定を目指すものではありません。自閉症者自身の適応力を高めることも理念の中にあります。
構造化は閉ざされた環境での安定を目指すものと誤解しておこなっている人もいますが、構造化の目的は自閉症者の理解しやすい環境をつくることです。
 
『健常者であれ、障害者であれ、意味も解らないことに一方的に従えって傲慢じゃないですか?』
 
社会生活をおくるうえで社会性を身に付けることは確かに必要です。
ただし、自閉症の人は健常者とは異なった脳機能の働きを持っています。それにより得意な学び方に違いがあります。
自閉症の人に合わせた理解しやすい環境に整え、学びやすい支援を提供する必要があります。
理解することで自発的な行動を促します。そして般化を支援することで社会生活の適応力の向上にもつながります。

 
我々支援者は自閉症の方々を健常者のやり方を押し付けるではなく、違った学習スタイルを持っていることを理解し、異なる文化の通訳者となり、理解しやすい環境を整えていく必要があります。