外相整えば 内相自ずから熟す

タイトルは、私の大好きな森田正馬(森田療法の創始者)の名言です。本当は禅の教えなのかな…?

『内相』つまり、こころの部分を整えようとしても『見えない』ので整えようがありません。

ここに『完璧主義』が加わると悲惨です。

 

完璧な姿をイメージできていないくせに、完全体を目指し続けるという世にも恐ろしい不思議現象が発生します。

果たして、どんな自分になれば満足なのか…?

満足しないくせに、際限なく内面を磨き続けるとどうなってしまうのか…?

 

そうです… そうなんです…

いくら努力しても自分自身に納得いかないもんだから、いつも自己否定的で、いつも自信がなく、いつも不安で、病んでいくのが必然です。

 

森田療法では『内相(こころの状態)』はともかく、まずは『外相(見た目の状態)』から整えていくことを重視します。
お坊さんの生活(修行)や禅の教えをヒントにしています。では、お坊さんの生活(修行)の様子を少し紹介しますね。

ちょっと長いです。

 

 

朝四時に起き、布団を片づけ、歯を磨き、洗顔をして、用を済ませて、衣を着て、袈裟をつけて、本堂に向かいます。

本堂では朝の日課である読経を始めます。お経の中味の理解はさて置き、大きな声を腹から出すことを意識して一時間 読経します。

五時頃に質素な朝食をとり、六時から老大使との禅問答を三十分おこないます。老大使から公案を何度も何度も問われますが、心理状態を問われることはありません。

その後、二時間におよぶ朝掃除に入ります。竹箒で境内を掃き清め、禅堂などを雑巾がけなどして掃除します。ここまで九時前ですが、ここから作務出頭という午前の労働が始まります。石を運び、雑木を伐り、障子を張り替え、窓ガラスを拭きます。

十時頃、ようやく昼食になりますが、ここでも朝食同様に質素な食事をとります。腹は六分目~七分目の状態が常です。

十一時頃、作務作業の続きの力仕事が始まります。何百本とある庭木の剪定、竹林の伐採と地面の清掃が二・三時間続き、心身ともに疲労困憊となります。

午後二時頃、茶礼(おやつ)となり、お茶と供物のお裾分けがあり、ようやく一息ついて身体を休めます。

午後四時頃、夕食になりますが、ここでも朝食・昼食同様に質素な食事をとります。

外が暗くなる午後六時半ごろ、木板が打ち鳴らされると夜の座禅が始まります。疲れた身体と満腹には程遠い状態で、座禅を二時間近く続け、夜の九時に就寝となります。

 

 

このような生活(修行)を1年365日 休みなく続けると、つらい感情や苦しさなどが生じてきますが、そういった悩みなどの心理状態(内相)は一切問われず、朝から晩まで勤勉かつ質素な生活を続けていると、こころが邪悪になることはありません。

悩んでいた心、人を妬んだり・憎んだりする心、このような邪推はいつしか整い、静かで透明な心になっていきます。

引用:生きる力 森田正馬の15の提言 帚木蓬生

 

 

なるほど。

日々の日課を『一心不乱』にこなすことで、確かに、他人からの評価だったり、よからぬ邪推だったりが消え失せ、本当に整えるべき『こころの状態』も連動して整っていくのが分かる気がします。

ある意味修行ですよね。

 

簡単に言うと『とりあえず、やることやってから考えろ!』ってことですよね。

簡単に言うと『やってもないのに考えるな!』ってことですよね。

うつや不安は、現代社会特有の症状です。ネガティブな情報は調べなくてもいくらでも入ってくるので、考えすぎてしまう時代ですよね…

そんな時代だからこそ『とりあえずやることはやる!』の修行の姿勢が改めて大事なんだと思います。

 


 

実は、本当に紹介したいのは、そんな生活をリアルに実践している人がいるってことです。

その人は、会社は『タスク管理をしにいく場所』と言い放っていました。

リアルに『外相整えば 自ずから内相熟す』の生活をしている人です。

その人は、小鳥遊さんといいます。(Twitterは @nasiken さんです)

 

実は、ADHDの特性が原因で失敗を繰り返し、内相(こころを整えよう)と悶絶した結果、抑うつ状態に陥り、休職・離職を2回も経験してしまった人です。

今では『タスク管理』の手法によって外相(やるべきことをひたすらやる)が整い、連動して内相(こころ)も整い、サラリーマンとしての仕事を全うされています。

さらに他にも、ご自身の『失敗&成功の経験談』を語り伝えることも『副業』としており、いわゆるパラレルワークをも実現している人です。

では、そんな小鳥遊さんの生活(外相の整え方)の様子を少し紹介しますね。少し長くなります。

 

朝は五時に起きる。シャワーを浴びて、斜め腕立てを二十回すると五時半。いつもの箱には『鍵・定期券・ハンカチ・眼鏡・眼鏡拭き・財布』が入っており、それらを取り出し支度します。いつもの冷蔵庫から弁当を取り出し、五時四十五分に家を出ます。

六時八分 いつもの電車に乗り、七時二分 会社最寄りの駅に到着。ベローチェでいつもの朝活が始まります。①ブログを書き、②Twitterを見て、③本を読み、七時四十八分に会社に向かい、七時五十分に到着。

デスクに着くと、メールをチェックして新たな発生タスクの確認。始業の八時丁度から、自身のタスク管理ツールに新たな発生タスクを入力します。

そこからは、タスク管理ツールから『今すべきタスク』を選択し実行するを繰り返します。タスクがひとつ完了するたびにメールチェックし、またタスク管理ツールに新たな発生タスクを入力します。

このように、常にタスク管理ツールが更新され、常にタスク管理ツールを手がかりにしながら、着々と黙々と粛々とタスクをこなすと昼休みになります。

十二時 昼食の弁当を十五分で摂り、そこからTwitterを確認。十二時半になると、必ず目をつむり、眠たければ寝て、考え事があれば、その考えに想いを馳せます。主に、ブログに書くことの内容をシミュレーションします。

十二時五十六分 またメールチェックして新たな発生タスクを確認し、タスク管理ツールに入力します。この更新作業は、都度都度していきます。

午前中と同様に、目の前のタスクを着々と黙々と粛々とこなしていくと、十六時五十分 終礼の時間になります。

着々と黙々と粛々とタスクをこなしていると仕事がはかどるわけで、連動してこころにも余裕が生まれてきます。上司や同僚からの割り込タスクにも難なく対応することで『オレってイケてる』と自信が深まります。また、まわりの状況を観察する余裕が生まれ、面白いネタを収集したりもします。

余裕があるから、出来事の一つひとつへの意味づけが『面白い解釈』へと変わり、ブログのネタや家族への報告ネタが蓄積されます。

十六時五十九分四十秒 パソコンの電源を落とし、十七時丁度に退社して、十七時五分発の電車に乗車して帰路につきます。

十八時過ぎに自宅に到着。十八時半に夕食を食べながら『本日のオレのイケてた話し』と『本日の面白ネタ話し』を妻に報告。夕食がすむと翌日の弁当を詰めて冷蔵庫へ。二十時頃より、子どもの遊び相手・入浴・ミルク・妻との交流をした後、二十二時に床に就きます。

寝るとみせかけてスマホをいじり、Twitterを確認し、LINEグループの会話を楽しみ、ブログネタに想いを馳せ、三十分後に就寝します。

 

このように着々と黙々と粛々と『外相』を整えられている理由を知りたくなりました。

「会社には『タスク管理をしに行っている』ことに加えて、『妻に報告するネタを探しに行っている』って感じですね~(笑)」とのことでした。

さらに、「タスク管理で着実にタスクを消化すれば『不安』はどんどん消えるので、ゆとりができるんですね。

不安のない状態だから、いろんな出来事への意味づけを自然とプラスにするようになってましたね。」とのことです。

つまり、タスク管理を回すことで『内相』は後から整ってしまったという話です!

 


 

さて、最後にまとめですが、

森田正馬は『考える自分が出現したら、さっさと離れるのが一番』と言っています。

考える暇があったら、目の前にある様々な仕事に手を出す。

黙々と手を出すうちに、産物としての考えが生まれて、そのうちに内相が整うと言っています。

まさに、小鳥遊さんの生活やタスク管理術と同じ話だなぁ…と感じるわけです!

じゃぁ、自分はどうすればいいのか…?

森田正馬は、以下のようにアドバイスしています。

困った人を助ける。人に親切にする。親孝行をする。日々の家事をする。

日々の仕事をする。すべて黙々とこなしていく外相のほうが、内相よりも整えやすいのです。

そして、整えているうちに『生きる意味』も明確になってくるのです!

引用:生きる力 森田正馬の15の提言 帚木蓬生

 

本当に最後です。

ずばり、悩みや不安や心配は、五分以上考えていても無駄です。脳みそを傷めますから。

五分たったら、粛々と、着々と、黙々と、目の前のタスクをこなして外相を整えましょう。

 

以上、アディオス・アミーゴ