【職員インタビュー】「笑い合えるパン作りのお店を目指して」就労継続支援B型「ボンシュシュ」 鈴木さん

就労継続支援B型作業所「ボンシュシュ」 の鈴木(すずき)さん

自動車の販売店から整形外科でのリハビリの仕事を経て、SHIPへ入社されました。

その過程と、これからについてお話いただきました。

 

自動車関連のお店からリハビリ、生活相談員まで

――鈴木さんは、どのような経緯で「ボンシュシュ」に入られたのでしょうか?

 

鈴木

最初の仕事は、中古車の販売やガソリンの販売を行なうフランチャイズ店舗で働き始めました。

もともとはアルバイトで入ったのですが、セールスの成績が良く、一緒に働かないかと誘われて入社しました。しかし、そのときに起こったサブプライムローン問題による不況の影響で、車がなかなか売れない事態に陥ってしまいました。

 

そんなとき、たまたまお客様から「これからは高齢者が増えるから、高齢者対象の医療分野がいい」と教えてもらいました。

そこで、柔道整復師の資格をとるための専門学校に通いながら、整形外科でリハビリのマッサージをしたり、運動療法をする仕事をし始めました。

 

 

 

柔道整復師の資格は専門学校卒業後、最初の試験では取ることができませんでした。でも、そのときにアルバイトとして働いていた医療法人では「そのうちすぐ取れるだろう」と言われ、社員へ登用されました。

実際には、私が(前述の)専門学校を卒業するタイミングで、その医療法人は事業を拡張しデイサービスと高齢者介護施設の経営を始めて、その施設で「社会福祉主事」の有資格を配置しなければならず、ちょうど私が持っていたことで社員へ登用されたという裏事情があります。

その医療法人では生活相談員としてデイサービスに関わりながらも、高齢者介護施設の泊まりの仕事などもやっていました。

 

その間も柔道整復師の資格をとるための勉強は続けていました。翌年の試験には満を持して臨みましたが、遅刻をした上に受験票を家に忘れてしまって受験ができませんでした (^_^;)。そのまた翌年の試験にも落ちてしまいました (-_-;)。そして、実は今もまだ柔道整復師の資格は持っていません (~_~;)。

今は、社会福祉士と精神保健福祉士の取得を目指していますが、余裕ができればまた柔道整復師の資格取得にチャレンジしたいと思っています。

 

 

その後、私の父が理事をしているNPO法人が経営するグループホームで職員として働き始めました。

最初の2年ほどは一般職員として、その後1年間は管理者をしていました。とても良い経験になりましたが、そこでは朝から晩まで仕事漬け家庭との両立が難しいと考え退職しました。

 

グループホーム退職後、転職活動をする中で転職エージェントから「新規事業を始める法人がある」と紹介を受けたのが社会福祉法人SHIPです。

SHIPのグループホーム「友セカンド」を紹介されて、家が近いこともあり応募しようと考えました。ところが、応募をする直前に募集が終わってしまいました。

 

 

 

これで「ご縁がなかった」と考えるのはもったいないので、よりSHIPについて調べてみると、SHIPは他にも福祉関係の事業を多角的に展開していることを知りました。

新規事業の立ち上げに興味があった私は、職場を転々とせずに様々な事業を体験できそうな組織に魅力を感じました。

グループホーム以外の経験は無かったのですが「他のどこでもいいから働きたい!」とお伝えして、2021年9月からSHIPの運営する就労継続支援B型作業所「エスプリ」で働き始め、利用者様と一緒にパン作りを通じた就労支援をしていました。

 

その「エスプリ」で働いてすぐに『新規事業として新たにパン屋の就労継続支援B型を開設する』という話が出ていました。願望が叶ってその新規メンバーとなり、ボンシュシュ」の立ち上げに関わることになりました。

 

 

 

ボンシュシュ」での役割

――SHIPの運営する「ボンシュシュ」では、どんな仕事をされているのですか?

 

鈴木

「ボンシュシュ」は、パン屋さんとして地元の八王子で愛されています。そこでの私の仕事は、パンを作るというよりは、パンを作る利用者様の就労環境を整える、より仕事をしやすくし、できることを増やしていくというのが仕事としては多いです。

 

例えば、朝店舗で販売するために十分な量と種類のパンがなければいけないですし、近くの2つの高校の学食に「ボンシュシュ」のパンを提供しているので、その分も時間までに作っておかなければいけないのです。

そのために、まずは前日に準備された材料などをもとに、当日通所される利用者様にどのように動いていただいたら時間内に必要な分のパンが作れるかということを考えます。

 

 

もし、利用者様だけでは十分な量のパンを時間通りに作れないのであれば、私もスタッフとしてパン作りを手伝います。そうすることで、段取りをしっかりして利用者様に不安を感じさせないようにするのもまた仕事の1つだと考えています。

さらに、その他の業務、例えば在庫管理食材の発注売上の管理もやっています。

 

「ボンシュシュ」の営業は大体16時か16時半くらいに終わるのですが、その後、店頭で袋詰めのパンの販売もやります。売り切れ次第、その日の業務は終了となります。大体毎日19時くらいにはすべてのパンが完売します。

 

 

 

――毎日売り切れるのがすごいですね!

 

鈴木

はい。とてもすごい勢いで売れます

正直なところ、「パンなんて誰が買うんだろう」「パン屋なんて儲かるのか?」と思っていました。

実際に売ってみると、買ってくれるのは8割ぐらいが女性なんですね。私たち男性がラーメン屋や定食屋に行くのと同じような感覚でパンを買ってくれているようです。

コンビニなどでのパンと比べると、柔らかさや美味しさが違います。だから、「パン屋のパン」はとても需要があるんだな、と分かりました。

 

 

 

大変だったこと、やりがいを感じること

――「ボンシュシュ」での仕事で、大変なことは何ですか?

 

鈴木

とにかく立ちっぱなしの姿勢でずっと仕事をするのが大変ですね。

また、パンは生地を発酵させ過ぎてしまうと味に影響してしまいますので、仕事の進み具合を管理するのも大変ですね。例えば、工程を間違えてしまったり、作業スペースがなくて作業ができなかったりしてパン作りの手が止まってしまうことがあります。

そんなときは、いったん「この分は無しでいきましょう」と損切りする必要が出てきます。せっかくそこまで作業してくださった利用者様に同意いただけるよう、丁寧に説明をしなければいけません。

 

 

また、利用者様のマネジメントも大変というか大事だと考えています。

ただ、ここは「ボンシュシュ」独自の「パンチャレ制度(「パンづくりチャレンジ制度」の略)」というのがあり、とても助かっています。

どの作業の工程が できているか/できていないか 見える化されることによって、利用者様の苦手なことや得意なことが分かります。期待されるスキルの表を利用者様とも共有しますので、ご本人自身もそれを理解していただけています。

 

また、「ボンシュシュ」では、毎週金曜日にパン教室というものをやっていて、そこで利用者様にはパン作りのスキルをアップしてもらっています。

そうすることで、それ以外の日では手取り足取り指導する必要がなくなり、パン作りのスキルアップは金曜日に集約することができ、あれもこれも指導しなければいけないという状態を回避できています。

 

 

 

――逆に、やりがいを感じることは何ですか?

 

鈴木

利用者様ができなかったことができるようになったのを見るとやりがいを感じます。

あれだけこだわりがあったのに気にせずできるようになった、周囲のことが見えていなかったのに気が利くようになった、といったポジティブな変化があると、とても嬉しく感じます。

 

パンチャレ制度のスキルチェックで利用者様個々の習熟度の評価をつけるとき、「これもできるようになっている」とチェックを入れることができて、それが本当に嬉しいです。

成長のプロセスをすぐ傍で見ることができる、その努力と成長の過程に携われて本当に良かったと思っています。利用者様が頑張って生きていく術を身に付けるきっかけを微力ながらつくることができて、学校の先生のような気持ちになって、それが励みになって、私ももっと頑張ろうと思います。

 

 

 

「行きたい」と思ってもらえるような職場に

――ところで、「ボンシュシュ」はどのような利用者様が多いのですか?

 

鈴木

約7割が精神障害をお持ちの方で、2割が知的障害をお持ちの方、残り1割というかお一人が身体障害をお持ちの方です。

寒暖差が激しくなる季節の変わり目になると体調を崩しがちになる方が多い印象ですね。しかし、仕事内容に関してはレベルが高い方が多いです。また、学習能力や就労意欲の高い方が多いという印象です。

例えば、一般の企業の社員でも仕事を覚えるときにメモ帳を持参しない人がいますが、「ボンシュシュ」の利用者様はメモ帳を持参しないことはまずありません

 

 

また、「ボンシュシュ」のような就労継続支援B型では、利用者様が口頭での指示をなかなか理解できないというケースが多いと思います。しかし「ボンシュシュ」では、口頭のみの指示でも機能的に作業されている場合が多いです。

それというのも、「パンチャレ制度」によって「今、何をやるべきか」が分かりやすく提示されているからだと思います。

 

 

一般的に、就労継続支援B型のような事業所では、仕事を楽しいと思えない人が多いという印象があります。それをどうにかしたいと私は強く思っています。ですから、笑いながら仕事に取り組める雰囲気づくりをいつも心がけています。

そのために、まずは自分が仕事を楽しんでいこうと考えています。実際に、私は毎日の仕事が楽しくてしょうがないのです。

そんな私から「楽しい」の輪が広がっていくといいなと思っています。体調があまり良くなくても、逆に体調を良くするために「ボンシュシュ」へ行きたいと思っていただきたいですし、「あの人がいるから、行きたい」と思っていただきたい。そう考えています。

 

 

 

一緒に働きたいひと、自分のこれから

――SHIPでは、どんな人と一緒に働きたいですか?

 

鈴木

自分自身で物事を主体的にリサーチできる人ですね。先手を打って「調べておきました」といったことができる人は向いていると思います。

ただ、向いている・向いていないに関わらず、私が一緒に働きたいのは「面白い人」です。仕事ができようができまいが関係ありません。面白い人は、自ら楽しんで仕事をしている気がします。

そういう人は、一生懸命働きますし、楽しんでいるオーラが出ています。そんなオーラのある人と一緒なら、私も一緒に楽しく仕事ができるんじゃないかと思っています。

 

 

 

 

――最後に、鈴木さんは、将来的にはどうなっていきたいですか?

 

鈴木

ゆくゆくは、事業所の責任者であるサービス管理責任者という役割を担っていければと思っています。

また、過去に医療法人で生活相談員を3年半程度していた経験もあり、グループホームでも1年程度 管理者を経験しました。ケアマネージャー(介護支援専門員)の受験資格ももう少しで得られる状態です。

 

今、障害を持った高齢者の方をよく見ます。将来的には、自分の経験やスキルを生かして、介護に関する部署がSHIPでできたときに名前が上がるような人材になっていければと考えています。

ただ、現在は自分が今できることを一つ一つやっていくことを主眼に頑張っています!

 

 

 


 

ありがとうございました!

「ボンシュシュ」の仕事が楽しくてたまらないという鈴木さん、

これからも頑張ってください!