『好きな感覚』を見つけるための支援とは?

--まずは、簡単な自己紹介をお願いします。

 

福本: 生活介護笑(以下、笑)で生活支援員をしている福本あすみと申します。

笑がオープンする直前の2014年8月に入社し、それから6年ほど勤務しています。

 

 

--続いて、笑での役割や仕事の内容を教えてください。

 

福本: 重度の知的障害のある利用者さんへの日中の活動を支援をしています。

具体的には、活動の見守り・フォロー、記録の作成、アセスメントのほか、サービス管理責任者のつくる個別支援計画をもとに活動を考え提供しています。

 

 

--重度障害(知的・精神)をもつ利用者さんを対象とした『自立支援課題』が50課題ほどあると聞いていますが、例えばどのようなものがあるのでしょうか?

 

福本: ビーズ通しやボルト締め、バラバラになった部品を組み立てるボールペン組み立てなどの課題があります。

それから、紙すきの材料になる牛乳パックの紙はがしの作業や、ビー玉を箱に入れていくというシンプルな課題もありますね。

スタッフのみんなで考えたものを提供して、利用者さんからそれぞれ反応をもらえるのが楽しいです。

 

 

--笑の提供する『自立支援課題』の意味は?
――たとえば『ビー玉を箱に入れる』という作業には、どのような意味があるのでしょう?

 

福本: 簡単に言うと利用者さんが「好きなことをして落ちつける」ということですね。

例えば、Aさんは、ビー玉を箱に入れる感触が好きなんですね。

第三者から見るとあまり意味のある行為にみえないかもしれませんが、ご本人にとっては心地よい手触りであったり、音であったりと好みがあります。

実際、以前は掲示物を破ってしまう行為がすごく目立っていた方がいました。だから『注意』することや『抑制』することが多かったんです。

でも、自立支援課題の『ビー玉入れ』が定着して、落ちついて取り組めるようになってからは、問題行動はほとんどなくなりました。

重度の知的障害のある人たちは「好き・嫌い」の言語表現の難しいので、私たちが自立支援課題を通して『本人の好きな感覚』を見つけていけたらと思っています。

 

 

--利用者さんが主体的に課題を選択しているか。この部分はどのように判断していますか?

 

福本: Aさんにとってのビー玉入れのように、好きな自立支援課題には長い時間でも没頭することができます。

そして、ビー玉入れのトレイは自分から取りに来てくれますし、反対に嫌い・やりたくない課題は見向きもしなかったり、ゴミ箱に捨てられてしまったこともあります(笑)

これからは、ビー玉以外にも、割りばし入れだったりとか、形状を変えることで作業の幅を広げることができたらと思っています。

そして、作業が定着してきたらお住まいであるグループホームにも紹介したいです。

自閉症の人たちが苦手なアイドルタイムの過ごし方として、『本人の好きな感覚』を活用してもらってリラックスしてもらいたいなぁと考えています。

 

 

--ところで、福本さんは笑の中堅スタッフという立場になると思うのですが、前職の入所施設の経験も生きているのでしょうか?

 

福本: 前職では、経験を積むというよりは毎日をこなすのに精一杯でした。だんだんと笑って仕事ができなくなってきたので、結局1年半くらいで退職してしまったんです。

前職とは、利用者さんの障害の重さや支援内容がぜんぜん違います。

でも、「あえて反応しない支援」や「要求のすべてに応えていると誤学習につながること」などは、前職での経験をふまえつつ、SHIPの研修など専門的に学んでいくなかで、明確につながってきた部分です。

 

 

 

--すると、本格的に経験を積んだのは笑に入ってからということですか?

 

福本: はい、そうなります。

また前職では、主に重度の障害をもつ人としかかかわりがありませんでした。

精神障害や軽度の知的障害のある人への支援は初めてだったこともあり、入社当初を振り返ると、利用者さんに「申し訳なかったなぁ…」とスキル不足を反省しています。

話し言葉をつかった面談技術はまったくありませんでした。利用者さんへの受容が全然できていなかったですし、話の聞き方は相手が話してくることを遮ってしまったり、聞きたいことがあったらその場でパッと聞いちゃうとか…

 

 

--いわゆる傾聴や受容といったことだと思いますが、今はどのように変わったのでしょう?

福本: 上司から「動機づけ面接法」という援助技術のレクチャーを受けてから、「そうですね」「そうなんだね」っていうような、あなたの言ってることを「私はわかりましたよ」っていうような受け止め方ができるようになりました。

なので、活動内容の提案の仕方もかなり変わりました。やっぱり利用者さんが求めてないのに、スタッフ側が勝手に「こういうのやったらいいじゃないですか」って、良かれと思ってですが一方的に決めてしまうこともあって、あれは完全にやめました(笑)

「相手が受け容れる体勢になってから、はじめてこちらが提案する」っていう支援の流れが知識と経験でつながりました。

自分の支援スタイルが変わることで、相手の反応もかなり変わってくるんだなぁって実感できたんです。

 

 

--最後に笑で大切にしていることを教えてください。

 

福本:  いかに利用者さんの特性を理解して笑顔を増やすかということに尽きます。

以前までは、ASD(自閉症スペクトラム障害)をもつ人への支援は、できない部分に注目しがちでした。

でも、ASDの特性について学ぶようになってからは、できる部分に注目するようになったんです。

そこをもっと伸ばせるような課題を提供することで、少しずつ利用者さんたちの生活の幅が広がっていく実感をもてています。

だから、もっともっとアセスメントをしていきたいと思うようになりました。

これからもスタッフと利用者さん、みんなで考えた自立支援課題を提供して、そこから返ってくる反応を楽しみに支援をしてきたいと思います。