動機づけ面接法 研修インタビュー『ケース①:同じ福祉職からの転職組 前川さん』

他のグループホームからの転職を考え、SHIPに入社してくれたスタッフの前川さんに『動機づけ面接法』の研修をさせてもらいました。

インタビューを通して、受講後の『気づき』を振り返ります。

 

 

Q

今の職種を教えてください。

A

グループホーム・ラファミド八王子の世話人として勤務しています。

 

 

Q

前職はどのようなお仕事でしたか?

A

同じくグループホームで10年ほど勤務していました。

主たる対象者が、知的障害の人たちでした。

 

 

Q

動機づけ面接法の研修を受けようと思ったキッカケを教えてください。

A

前職での支援は「こうしたほうがいい」などと、良かれと思ってたくさんアドバイスをする相談対応がメインでした。

利用者の方の役に立つこともあれば、あまり聞いてもらえないことも多かったです。

ラファミド八王子に転職を決めてから「精神障害者が対象のグループホームでは『相談援助』のスキルが必要になる」という課題感を持っていました。

入社後、サービス管理責任者の矢部さんの面談に同席させてもらったのですが、情報提供をあまりしていないことに違和感を感じました…

理由を聞いてみると、「情報提供は相手が求めたときにするもの」という返答でした。

「相手が必要だと感じたタイミングで伝えるから役に立つのです」と、言われてみれば当たり前の答えですが、なぜか衝撃的でした。

そして、その援助方法は『動機づけ面接法』を基にしているということを知り、私も学んでみたいと思いました。

 

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ラファミド八王子 Ⅳ棟外観(グループホーム)

 

Q

この研修の効能をひと言でいうと、どんなことでしょうか?

A

自分の人生を 自分自身で考え 自分で決めてもらう。

当たり前の支援を実現できる ということですかね。

 

 

Q

具体的には、どのような場面で役に立ちましたか?

A

具体的には、担当ケースの『睡眠』についてなのですが…

その方は睡眠がとても不規則な人です。

深夜に起きては騒音を出し、周りからクレームが出ていました。

 

今までの支援では「深夜は静かにするべき」と、注意するところです。

ただ、ちょうど動機づけ面接法の研修を受けていた最中だったので、思い切って『睡眠』についての価値観を聴いてみました。

「〇〇さんは、深夜に起きて動き回っていることについて、どのように考えていますか?」

すると、「実はもっとしっかり寝たいんだ」という返答が来ました。

私は『眠ることにこだわりのない人』と思い込んでいたので、想定外の返答でした。

 

さらに、「眠れないことの原因について、〇〇さんは、どのようにお考えですか?」

その人なりに感じている原因についても質問してみました。

すると、「タバコを吸っているからかも…」とのこと。

続けて、「どうして吸ってしまうのでしょうか…?」と質問してみます。

すると、「手持無沙汰だから…」とのことでした。

このときはじめて、『手持無沙汰』→『タバコ』→『覚醒』→『不眠』の悪循環があることに気づいたのです。

 

「タバコやめましょうよ!」

今までだったら良かれと思ってアドバイスをするところです。

でも、研修を受けており、情報提供は『相手が求めるまではしない』と決めていたので我慢しました。

 

情報提供の代わりに「タバコ以外の方法が、なにか考えられますか?」と質問してみました。

すると、「水を飲むといい。水でも手持無沙汰感がなくなる」とのことです。

そして、「それは実際に、できそうですか?」と質問すると、「やってみる!」とのことでした。

 

たった数分のやり取りでしたが、結果、4~5時間だった睡眠が、7~8時間に改善されました。

普段の日常会話レベルでも、自分の人生を 自分で考え 自分で決めてもらう。

この重要性を感じることができた瞬間でした。

 

動機づけ面接法では、『人は、自分の言った言葉を信じる傾向がある』ということを学びます。

まさにその通りでした。

そして、他の利用者の方からのクレームも減り、今では人間関係も円滑になっています。

 

 

Q

今は、動機づけ面接法をどのように支援に活用していますか?

A

基本はやっぱり『Resist(レジスト)』を意識しています。

こうすべき・ああすべき の 気持ちをグッと抑えています。

ついつい「こうした方がいい!」と伝えたくなりますが、『ん~… でも… 』と抵抗されるだけですので…

そのうえで、『主役はあなた』の原点に返ります。

 

自分で言ったことは、自分しか成し遂げられないんだ! という原点に立ち返っています。

そして、「あなたが一番したいことはなんですか?」と質問することで相手に主役になってもらいます。

すると、戸惑いながらも「コレがしたいんだ!」と表明してくださいます。

相手が主役になれば、私の役割は、その方の想いを深く深く聴いていくだけになります。

さらに、その想いがありありと分かってくると、本当応援したくなります。

エンパワーのスタンスで支援できるようになります。

 

 

Q

これから『相談援助』を学ぶ人へひと言お願いします。

A

私は、動機づけ面接法を学んだことで支援の仕方がガラリと変わりました。

今までの支援を振り返ると、こちら側がしゃべり続け、伝え続けるという、押し付けの支援だったなぁ… と思います。

きっと、「うるせぇなぁ… 余計なお世話だよ… 」と思われていたことでしょう…

 

今では、ようやく心の底から『相手が主役』と思えるようになりました。

心の底からそう思えることで、詰まりが取れて、すべてがうまく流れるようになったと感じています。

動機づけ面接法を学ぶ人が増えて、一緒にチェンジトークが溢れる職場にしていきたいですね。

 

 

Q

最後に動機づけ面接法の総評をお願いします。

A

私には、福祉業界で10年のキャリアがありました。

今までは、相手に幸せになってもらおうと思うがあまり、支援者のこちら側ばかりが動いていました。

親の代わりとして、ある意味、保護的に接していました。

でも、「これって本当に幸せにつながるの…?」 と、いつも疑問がありました。

 

問題解決の主体もなぜか『私』、つまり支援者にあったので、負担感も強かったです。

動機づけ面接法を学んでからは、『その人の人生・その人が主役』を身をもって実感したので、楽に支援できるようになりました。

今は、利用者さんも、支援者側も、お互いに生きているなぁ…と感じながら、この仕事をしています。

 

 

前川さん

インタビューありがとうございました。

これからも一緒にチェインジトーク溢れる事業所づくりをしていきましょうね!

 

なお、SHIPの動機づけ面接法を学ぶ会の仲間は随時募集中です。

興味のある人は連絡くださいね。

 

それでは、アディオス・アミーゴ