【職員インタビュー】「誰もが主役になれる場所」をつくる/ボンシュシュ・横澤さん
障害のある方が働くパン工房「ボンシュシュ」、月700~800万円の売上を記録している八王子の繁盛店です。
それを支えるのは、丁寧な観察と、小さな「できた!」の積み重ねをサポートする支援スタッフの存在です。
障害のある方の就労支援を通じて、誰もが「主役」になれる場所をつくる
そんな想いをもった横澤さんへのインタビューを通して、社会福祉法人SHIPが目指していく地域福祉のリアルをご覧いただけたらと思います。
教育から福祉へ。一人ひとりに向き合うための選択
――今日はよろしくお願いします。さっそくですが、これまでのご経歴を教えてください。
横澤)
学生時代、不登校の子どもたちへの教育ボランティアに参加していたのが、福祉に興味をもった最初のきっかけです。
もともと教員を目指していたのですが、教育実習を通じて、今の学校現場で自分が理想とする教師になるには、まだ時間が必要だと感じました。
そこでまずは、一人ひとりとじっくり関われる福祉の道に進もうと決意しました。
最初は介護のデイサービスに就職しました。
その職場で、障害のある方と一緒に働く機会があり、さらに深く障害福祉を学びたいと思うようになりました。
いろいろな法人を見た中で、研修制度や支援の質にこだわっている社会福祉法人SHIPに惹かれ、「ここなら自分も成長できる」と感じて入社を決めました。
――横澤さんの「強み」や「仕事で大切にしていること」は何ですか?
横澤)
一番の強みは「観察力」だと思います。
利用者さまの表情やちょっとした行動から、「今日は不安そうだな」「少し様子が違うな」と気づけるところは長所だと思います。
そういった小さな変化を見逃さないようにして、安心して過ごせるようサポートしています。
あと、コツコツ努力することは得意で、支援の質を高めるために研修や資格の勉強も続けています。
ただ、慎重すぎるところがあって、新しい環境には少し時間がかかるタイプでもあります。
でも、一度慣れれば安定して力を発揮できるのが自分らしさかな、とも思っています。
「得意」を見つけて「できた!」に変える関わり方
――ボンシュシュでは、どのような役割を担っているのでしょうか?
横澤)
一人ひとりの得意なことを見つけ、その人が主役になれるようにサポートするのが私の役割です。
たとえばパン生地の分割の工程でも、「分割する人」「並べる人」「ラップをかける人」など、一人ひとりの興味やスキルに応じて細かく役割を分担して、それぞれ作業に取り組んでいただきます。
スピード感のある人、単純作業が好きな人など、それぞれが輝けるところで作業をお願いすると、作業効率も上がり、利用者さまの自己肯定感も上がって、一石二鳥になると思います。
苦手なことに挑戦するのも大事ですが、まずは「できる経験」を積んでもらうことが、就労継続の鍵だと思っています。
このように、一人ひとりの得意なことを伸ばすために、どう伝えたらわかりやすいか、どう工夫したらより作業しやすい環境になるのかを常に考え、利用者さまの「できた!」という達成感につなげていくことを大切にしています。
だから私は、小さなことでも「できている部分をしっかり褒める」ことを意識して、スモールステップの支援を心がけています。
――利用者さまへのサポート体制についても教えてください。
横澤)
ボンシュシュでは、体調面の配慮を大切にしています。
厨房は暑くなりやすいので、夏場は30分に1回水分補給を促し、1時間に1回は10分の小休憩を取るようにしています。
また、集中してしまって休憩を忘れる方も多いので、こちらから積極的に声をかけています。
さらに、隔月でおこなう個別面談でお悩みを聴いて、一緒にその解決方法を考えたりと、メンタル面のサポートやモチベーションの支援も大切にしています。
職員さんによるパン教室も週2回あり、「ちょっと苦手、でも挑戦したい!」という方に、ボンシュシュはピッタリの活動の場になるはずです。
伝わらないこともある。でも、伝わった瞬間があるから続けられる
――支援をしていて「大変なこと」や「やりがい」だと感じる場面はありますか?
横澤)
福祉の仕事に正解はなく、同じ支援でも人によって反応が違うんですよね。
良かれと思った関わりが誤解されてしまうこともあって、悩むことも多いです。
でも、そんなときは職員同士で相談し合い、チームで支援の方法を考えます。
視覚支援ツールを導入した時には、利用者さまから「わかりやすい!」と言ってもらえたんです。
その結果、その利用者さまの作業できる日数も増えてきて、「支援の工夫って、ちゃんと届くんだな」と実感しました。
ほかの職員さんからも「いい案だね!」と声をかけてもらえて、すごく嬉しかったです。
一番心に残っているのは、「明日いますか?」「横澤さんがいてくれてよかった」と言ってもらえたこと。
あの一言で、全部が報われた気持ちになりました。
――ボンシュシュの「良い部分」と「これからの課題」をどう見ていますか?
横澤)
良いところは、職員みんなが優しくて、真面目で、ちゃんと話し合えるチームであること。
困ったことがあっても、一人で抱え込む必要がなく、支援の質も自然と高くなっていきます。
利用者さまにとっても、自分のペースで働ける環境があり、短時間からスタートできるのは魅力だと思います。
一方で、課題は “福祉らしさ” が外に伝わりにくいこと。
八王子の地域では「おいしいパン屋さん」として知られているけれど、福祉施設で障害者の皆さんが活躍していることまでは届いていない気がします。
今後は、個人的にも得意なSNSによる広報を進めて、もっとボンシュシュでの福祉の魅力を発信していけたらと思っています。
あなたのペースで、あなたらしく。ボンシュシュで待っています
――最後に、これから利用を検討している方にメッセージをお願いします。
横澤)
ボンシュシュには、いろんな背景を持った利用者さまがいます。
一人ひとり違うからこそ、私たち職員はその人に合ったサポートを大切にしています。
「働くのが不安…」という方、大丈夫です!
最初は誰でもそうですし、職員がしっかり丁寧にサポートします。
「パンを作ったことない…」という方も、大丈夫!
私も料理なんてしたことなかったけど、今ではちゃんとできています。
「ボンシュシュに来てよかった」と思ってもらえるように、一緒に楽しい時間をつくっていけたら嬉しいです。
安心して来てくださいね。
お会いできるのを楽しみにしています!

国家資格:公認心理師・精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士
その他:TSM(トラウマセンシティブマインドフルネス)修了・SE™プラクティショナー上級受講中・TFTパートナー・ChatGPTエジソン塾1期生・整理収納アドバイザー2級 など
『努力すること』と『執着を手放すこと』のバランスを研究し、自分自身の最適化を目指して精進中