【職員インタビュー】「非常勤スタッフの目から見た福祉の仕事の奥深さ」友セカンド・細谷さん

非常勤によるパートタイムの働き方について、「友セカンド」の細谷さんにインタビューさせていただきました。

福祉は未経験ながら、友セカンドでの仕事を通じて「介護福祉士」も取得されたスタッフさんです。

重度知的障害者向けグループホームでの「シフト・役割・やりがい」など、率直にお答えいただきました。

 

福祉で働く「デザイナー志望」の支援スタッフ

――ご自身のキャリアと福祉業界に興味を持ったきっかけを教えてください。

 

細谷

美術系の大学を卒業後、そのまま大学で勤めながら、プロダクトデザイナー(文具や家電等の生活用品のデザイナー)を目指して就職活動をおこなっています。現在は大学と友セカンドのダブルワークの生活を送っています。

福祉の仕事は友セカンドがはじめてでした。ただ、母や叔母が高齢福祉の介護の仕事をしていたので、小さい頃から福祉は身近な存在でした。家では普通に介護職の話しを聞いていましたし、施設に遊びに連れて行ってもらうこともありました。

 

 

――友セカンドの仕事を選んだ理由を教えてください。

 

細谷

ハローワークで福祉の仕事を探していると、高齢者の介護以外にもたくさんの仕事があることに気づきました。その中でも「障害福祉の分野」に興味を持ちました。人が選ばないことをやりたいと思い、重度知的障害者の生活をサポートする友セカンドでの仕事を選びました。

 

 

――どのようなシフトで働いていますか? シフトごとの仕事内容の違いも教えてください。

 

細谷

早番(7:00~10:00)、夕勤(16:00~20:00)、夜勤(20:00~7:00)、の3つのシフトで働いています。

早番は週2回、夕勤は週1回、夜勤は週2回、の頻度になります。

仕事内容について、早番の朝の仕事は、利用者様の起床誘導や朝食・服薬のサポート、そして日中の活動先に通うための身支度や見送りをします。

夕勤では、その活動先からお帰りになった利用者様の入浴や夕食・服薬のサポートなど、生活全般のお手伝いをしています。

そして夜勤は、寝る前の服薬のサポートと就寝の見守り、定時の巡回をしています。

 

 

福祉のリアル「シフト制の仕事とその影響」

――そのシフトで働くことのメリットとデメリットを教えてください。

 

細谷

メリットは、自分の生活スタイルと合っていることです。私は距離の長い移動が苦手なので、3ヶ所(自宅 ↔ 大学での勤務 ↔ 友セカンド)の移動によるストレスがないことが良かったです。

また、利用者様のご様子を朝から夜まですべての時間帯で把握できることはメリットです。

重度の知的障害をお持ちの利用者様は「話し言葉」を持たないので、いつもと違った行動をとって意思表示をされることがあります。その行動の理由を時間のつながりから理解できるシフトだと思います。

一方、デメリットは、色々な時間帯でシフトが入っているため、生活のリズムを整えることの難しさはありました。私の場合はダブルワークでもあるので体力的に厳しい面もありますが、次の仕事が決まるまでの時限付きでもありますし、若さもあったので問題ありませんでした。

とはいえ、一緒に働いている非常勤スタッフさんは年配の方もいらっしゃいます。お年を召すと朝が早くなるので早番に強かったり、夜勤時に仮眠をとってもすぐに起きられたりと、意外にも年齢は関係ないことに驚きました。

 

 

――夜勤帯は、どのような仕事をされているのでしょうか? 緊急事態が発生するようなこともありましたか?

 

細谷

21時頃には利用者の皆さまはお休みになりますので、夜の雰囲気は落ち着いていると思います。

不思議なもので職員が慌ただしくしていると、利用者様にも慌ただしさが移ってしまいます。ですから、ゆっくりと睡眠をとっていただけるよう最大限の配慮をしています。

たとえば、2.3時間に1回は安否確認を兼ねた巡回をおこないますが、とにかく余計な音を出さないよう静かにすることを意識しています。

一方、難しさを感じることは、不穏になられる利用者様がいらっしゃるときです。どうしても周りの利用者様に影響してしまうので、何とか落ち着いていただくしかありません。

とくに友セカンドの開設当初は大変でした。重度の知的障害やASD(自閉スペクトラム症)の方が、いきなり知らない環境で過ごすことになるわけですから、不穏になって当たり前です。

ですから、夜のその瞬間だけ落ち着いていただくことを考えても上手くいきません。朝から・夕方から、一日を通して心身の安定に努め、穏やかに過ごしてもらえるよう事前に対応していくことを皆で意識しています。

そんなこともあって、私が勤めてきた期間(約4年半)の中では、救急車を呼ぶような緊急を要する事態は発生しなかったです。

 

 

パート職の視点から見た「小さな気づき」と「報告の重要性」

――入社当初の頃と現在のご自身を比べてみると、働き方や支援に対する考え方などに違いはありますか? 

 

細谷

入社当初は、利用者様の生活の全てを介助するつもりで考えていましたが、今は、自分でできるところは自分でおこなってもらう自立支援の考え方が身につき、あえて対応しすぎず、できる部分を増やしていく必要性を感じながら日々支援をしています。

たとえば、ある利用者様の入浴介助をしているときのことでした。いつも洗身の全てを介助していたのですが、試しにご本人に任せてみたところ、実は洗えてしまうという事実に驚きました。

そのとき、私の関わりがご本人の可能性を狭めていることに気づくと同時に、この仕事の面白さを感じる気持ちが芽生えてきました。

そのような視点で関わっていくと、「脱いだ服をボックスに入れることができる」「おぼんにお皿を重ねることができる」と、職員同士でも「できること・できそうなこと」を共有する雰囲気になりました。

できることを報告・共有することは、嬉しさや喜びを共有しているような感覚にもなります。そして、報告して共有した内容が個別支援計画へと反映されて、全体の支援にも取り入れられていくことに、やりがいを感じています。

 

 

――非常勤でパートを担当する支援員として、具体的にはどのような役割を担っているのでしょうか?

 

細谷

メインで利用者様を担当している世話人のフォローが役割となります。

常勤の世話人の皆さんの仕事は、利用者様の通院や活動のスケジュール調整や請求関係の事務、視覚的コミュニケーションツールづくりや環境調整など、多岐に渡り、とても忙しそうです。そのため、私たちパート職員だけで利用者様の支援に携わる場面もあります。

ですから、責任のある世話人の皆さんへ情報共有を円滑にできるように、細かく利用者様の様子を観察しています。とくに、いつもと違う行動が起きたり、いつもと違う様子を感じたときは、必ず報告するようにしています。

私自身、元々、色々なことに気がつきやすいタイプなので、そういった強みがこの仕事に活かせていると思います。たとえば、「なんか太ったかもしれないな・・・」とか、「こんなアザはあったかな・・・」といったような気づきです。

このような小さな気づきの報告にも世話人の皆さんはちゃんと聞いて応えてくれるので、情報共有のしやすさも感じています。

 

 

――報告すべきこと、報告しなくていいこと、この判別はどのようにされているのでしょうか?

 

細谷

最初の頃は、全てが報告すべきことのように思えて、その判別が難しかったです。

ただ、利用者様との関りが増えてくると、「この行動は特性としてやっていることだな!」と分かってきたり、「あ、これは特性じゃなくて不穏の兆候かもな」と分かるようになってきました。

そういった見立ても報告しあうことで、個々の利用者様の理解が深まっていったと感じています。

 

また、日や週をまたぐような出来事で、何かつながりがありそうだと感じることは伝えるようにしていました。

重度知的障害のある皆さんは言葉を持たないので行動で何かを訴えます。その行動の意味の解釈は、支援者が目撃した場面や文脈によっても変わってきます。

先ほども言いましたが、事業所全体で、朝から・夕方から、一日を通して心身の安定に努め、穏やかに過ごしてもらえるよう事前に対応していくことを皆で意識しています。

 

 

福祉現場での「静かな対話」の心得

――日勤と夜勤の両方のシフトに対応する上で、どのような調整が必要だと考えますか?

 

細谷

私たち支援者の役割を考えると、日勤帯は、利用者様の起きている間の生活をたとえ不安定な状態であっても成り立たせることですし、夜勤帯は、ちゃんと睡眠をとっていただくことだと思いますので、その役割の違いを意識して勤務する必要はあると思います。

そして、自分の体調が優れないときは「無理をしないこと」だと思います。

無理をしないといっても仕事を放棄するわけにはいかないので、たとえば、受け持ちエリアを変わってもらうとか、相性の悪い利用者様の介助を変わってもらうといった感じです。

とにかく自分だけで全てをしようと思わないことを学びました。

歯みがきの介助で、どうしても抵抗されてしまう利用者様がいたのですが、違う支援者に変わってもらうと驚くほどスムーズにできてしまいます。

これは逆もしかりです。

支援者同士が無理をせず、余裕のあるときに少し難しい仕事にチャレンジしていくようにしていくのが調整のポイントだと思います。

 

 

――特別な支援を必要とする利用者様を相手にする仕事ですが、経験がなくても大丈夫なのでしょうか?

 

細谷

やはり、初めての人は対応の仕方が分からずに不穏にさせてしまうことが多いと思います。でも、慣れてくれば大丈夫です。

だいたい半年くらいで慣れてくると思います。

言葉を持たない方々なので、要求や拒否の訴えたい気持ちがエスカレートして他害行為のように見えてしまうことがあり、それが原因で辞めてしまう支援者もいらっしゃいました。

最初はビックリしてしまうかも知れませんが、そういった行動の理由が分かってきますので、慣れてくれば大丈夫です。

慣れるという感覚の表現は難しいのですが、やはり実際に関わってみる機会を増やすことです。

すると、これは特性なのか、不穏なのか、見極めができるようになってきます。

 

 

――利用者様との「コミュニケーション」について、意識していることを教えてください。

 

細谷

友達や家族の様な関係性にならないように、支援者として関わることを心がけています。

また、利用者様とのコミュニケーションで意識していることは、あえて過剰に反応しないこと、喋らないことを徹底しています。

たとえば、過剰に反応しすぎるとテンションが上がりすぎてしまう方もいらっしゃいます。その興奮した様子がまわりへと波及して、聴覚過敏の利用者様とぶつかってしまう。そして、他の利用者様にも波及して収拾のつかない事態に発展することが起こります。

関わりすぎず、かといって放置もしない。普段の私たちの生活とは違った対応が求められます。

行動観察をする時は、まず「耳で変化をキャッチ」しています。

慣れてくると、ドアが開く音や足音などを聞くだけで、「あ、〇〇さん、部屋を出てトイレに行ったな」といったことが分かるようになってきます。

そして実際に様子を観察しにいくような対応をとっています。

 

 

「新しい発見」が待つ、重度知的障害者支援の仕事

――ストレスを感じることも多いと思いますが、ストレス場面やストレスケアについても教えてください。

 

細谷

利用者様の奇声を聞き続けたり、無理な要求行動を受け続けたり、いわゆる不穏時の対応がストレスに感じてしまうことはあります。

基本的にはそういったストレスを家にまで持ち込むことはありませんが、リフレッシュも兼ねて、公園に散歩に行ったり、仕事仲間とご飯に行くこともあって、それが回復につながっていると思います。

仕事仲間とご飯に行ったときは、あえて仕事の話しはあまりせず、オン・オフの切り替えをするようにしています。

このように先輩方にも気をかけてもらえますので、職場の人間関係にも恵まれていると感じています。

 

 

――最後に、重度知的障害者への支援の仕事をしてみたいと考えている人へのメッセージをお願いします!

 

細谷

対、人の仕事をしているため、どうしてもストレスのかかる仕事ではあります。

ですから、それなりの覚悟は必要だと思います。

しかし、現場での仕事を通して利用者様の生活と向き合ってみると、私たちとそこまで変わらなかったり、むしろ新しい発見がたくさんあり、そういった楽しさが味わえる仕事です。

少しでも興味のある方には、ぜひ、この福祉の分野に挑戦してもらいたいです!

 


 

非常勤のパートによる複雑な役割とシフトをこなしている細谷さんに貴重なお話しを伺いました。

未経験からでも、パート職からでも、重度知的障害者の支援ができるようになること、そして、介護福祉士の取得も可能なことは、これから福祉で働く人の参考になると思います。

ご自身の目標であるプロダクトデザイナーの就職に向けても頑張っていただきたいと思います!

この度はありがとうございました。