「エクスポージャー」の効果と「安全確保」の効果とのジレンマ

はじめに

エクスポージャー療法(曝露療法)は不安症などの治療において重要な役割を果たしますが、クライエントのリソースや安全性を確保することもまた重要な要素です。

この記事では、エクスポージャーの効果と、相反する安全確保とのバランスを、どのように図っていくかについて考察していきます。

 

 

エクスポージャーの利点とリスク

エクスポージャー療法は、不安を引き起こす状況に積極的に接近していくことで、不安の感情や考え方を変容することを助ける治療法です。

この方法は、クライエントが自分の恐れに立ち向かうことで、ある種の慣れを通して苦手意識を克服するのに役立ちます。

しかしながら適切なサポートや準備がなければ、ただ再トラウマを引き起こすだけというリスクもはらんでいます。

 

 

エクスポージャーの疑似体験

想像してみてください。

ダイバーが深い海に潜るとき、彼らは慎重に準備し、安全な潜水計画を立てます。

海の美しさを探求するために海底まで深く潜る必要があります。

一方で、同時に安全とのつながりを常に意識しておく必要もあります。

この安全基地は、ダイバーが休息を取り、水圧の影響を調整し、必要ならば海面に戻ることができる潜水計画です。

 

 

トラウマケアの視点

私たちはクライエントが過去のトラウマや不安を再体験しすぎることなく治療を受けられるようにすることが重要です。

自律神経系に適度な(ちょうどよい程度の)活性化をもたらすようなイメージです。

つまり、安易に「不安症だからエクスポーズさせる」という選択をとることは避けるべきです。

 

とくにトラウマがある場合、危険センサーがとても敏感すぎるため、簡単に耐性の窓から飛び出してしまいます。

いわば凍りついた状態のまま、危険の渦へ放り込むようなものです。

必然的にフラッシュバックが誘発され、失敗の経験から無力感と絶望感だけを人生に上塗りしていくことになります。

ですからエクスポージャーをおこなう際は、クライエントの心理的な安全を確保しながら、トラウマの再体験を防ぐためのサポート体制を整えていく必要もあるわけです。

 

 

安全な環境の確保

安全を担保に、いつでも戻れる感覚をもとにチャレンジしていく流れは、エクスポージャー療法の成功のために有用です。

これには、自分の不安やストレスを適切に処理できるようにするための技術を教えることが含まれます。

また、選択肢を持ちながら自分のペースで治療を進められるように配慮することも重要です。

 

先ほどのダイバーの例から分かるように、クライエントは不安を引き起こす状況に「潜る」ことになります。

このプロセスで重要なのは、クライエントが安心感を持てる「安全基地」を持つことです。

子どもがお母さんの見守りを担保に、友達の輪に入っていくように。

この安全基地には、信頼できる支援者、リラクセーション技法、あるいは回復を得るためのリソースなど、クライエントが不安を感じたときに頼りにできる様々なアイデアです。

 

 

折衷案の提案

クライエントが不安の海に潜るとき、彼らは安全基地から始め、徐々により挑戦的な状況に曝露していきます。

このプロセスでは、クライエントはいつでも安全基地に戻ることができ、そこで神経系を落ち着かせ、不安を管理する技術を使うことができます。

このように、安全基地を確保しながらのエクスポージャーは、クライエントが自信を持って不安と向き合い、それを克服する手助けとなります。

 

エクスポージャーと安全確保の折衷案として、段階的なアプローチはおススメです。

ツールとしては、不安階層表を用いて段階的な曝露計画をクライエントと双方向的に話し合うこと。

そして、段階ごとにいつでも戻れる安全基地は何にするかも話し合うことです。

 

 

結論

エクスポージャー療法は効果的な治療法ですが、クライエントの安全基地と回復を担保することが同様に重要です。

支援計画には、クライエントのニーズと限界を考慮し、段階的かつ安全なアプローチを取り入れることが必要です。

このバランスを取ることで、クライエントは人生の課題を克服し、より健康で充実した生活を送ることができると考えます。