【SHIP職員インタビュー】「やり方しだいで活躍できる、そんな支援を」エスプリドゥ 長門良明さん

 

就労継続支援B型事業所「エスプリドゥ」で職員をされている長門良明(ながと・よしあき)さん、

土木系の会社勤務を複数経験したのち、SHIPへ入社。エスプリドゥで働きはじめて2年半になります。

その過程と、これからについてお話いただきました。

 

きっかけは「障害者の働くカフェ」

――就労継続支援B型事業所「エスプリドゥ」で職員として働いている長門さんですが、それまでどんな仕事をされていたんですか?

 

長門

1社目は、一般に「とび・土工(どこう)」と言われる建設業の分野で、主に道路などの区画線を引いたり、交通標識を立てるといったことをする土木関係の会社にいました。そこでは、現場監督積算の仕事をしていました。

積算とは、入札のために工事費を算出し見積もる仕事です。2社目も同じく土木関係の会社で、主に道路の舗装に関する技術開発を行なう企業で総務経理を行なっていました。

 

 

 

――現場監督などから総務・経理へ。ずいぶん畑が違う職種へ転職されたんですね。

 

長門

1社目は、建設業の実務の現場に関わる仕事のためか、上司と部下の縦の関係をとても重視する、常に緊張感のある中で勤務する状態でした。

そういった雰囲気が合わず、転職するために独学で簿記2級を取りました。ただ、そうして入った2社目も同じような雰囲気の会社で、ほどなくして転職を考えるようになりました。

 

転職活動を続ける中で、ハローワークの転職相談をすることができるフリースペースがあり、そこでよく転職についての悩みを聴いてもらっていました。

また、NPO法人が運営するカフェにもよく行っていました。そのカフェ、実は従業員の方々が全員障害者であることが分かり、障害を持つ方の就労支援に興味を持つキッカケになりました。

 

 

調べてみると、例えば最近注目されている「発達障害」の特性を持っている方は、見た目は普通なのに、満足に仕事を続けられる人が少ないという事実を知りました。

カフェで接している障害者の方々は活躍されている。伝え方・働き方しだいでは生き生きと働くことができる。でも、一般的には、職場の理解や配慮が得られず、デメリットを一方的に受け離職してしまうケースが多いという現状を不条理だと感じました。そこで、福祉の業界に興味を持ち、障害者支援の仕事を探すようになりました。

 

 

「エスプリドゥ」で働き始める

――障害者の就労支援に興味を持った長門さん、それからどのようにして「エスプリドゥ」で働くようになったのでしょうか。

 

長門

最初は、就労移行支援事業所で仕事をしたいと考えていました。前述のとおり、障害者といえども、伝え方や働き方しだいで活躍できるのに、日の目を見ない方がたくさんいらっしゃるという状況をどうにかしたいと考えていたからです。

就労移行支援は、そのような考えを実現するのに適した業態だと思いました。そこで、就労移行支援の求人に複数応募したところ、地元長野の事業所から内定をいただくことができました。

 

 

 

――では、その就労移行支援事業所で働き始めたのでしょうか?

 

長門

いえ、結局そこでは働くことはありませんでした。その事業所に問題があったわけではありません。

同時期に、たまたまエスプリドゥの求人を見て、就労継続支援B型事業というものを知りました。障害を持つ方と一緒に働き、その就労をサポートするという事業内容に興味を持ち応募してみました。

すると、エスプリドゥから「福祉の仕事は初めてだと思うので、実際に見学や体験をしてみませんか?」との提案をいただき、就労体験の機会を持つことができたのです。

 

 

実際、エスプリドゥでの仕事を体験してみて、今までの「仕事」への考えが変わりました。

今までの会社勤めの経験から、仕事場は戦場で殺伐としたものだという考えが私にはありました。しかし、エスプリドゥでは、まず利用者様が楽しそうに働いているのです。これにはびっくりしました。

「給料は我慢料」と考えていました。でも、パン作りを通して仕事をすること自体に充実感・喜びを覚えている様子を目の当たりにして、自分の考え方が大きく変わっていきました。同時に、「ここで働きたい」という気持ちが強くなり、内定をいただいていた地元の就労移行支援事業所はお断りして、エスプリドゥで働き始めるようになりました。

 

 

 

――エスプリドゥではどんな仕事をしているのですか?

 

長門

大きく分けて2つあります。1つ目は「支援」、もう一つは「店舗運営」です。どちらもエスプリドゥにとって大事な両輪です。

 

支援」は、利用者様のできることを増やす目的で行ないます。

例えば、利用者様にとっては障害の特性から、パンという生産物を「量産」することに難しさを抱えることもしばしばです。その難しさを解決するために「治具(ジグ)」という道具を使います。

利用者様本人が、パン作りの技を熟練させていって量産できるようになる方法も良いのですが、それには時間もかかりますし、スキルが必要です。そうではなく、治具を使って誰にでもすぐに、クオリティの高い生産物(パン)を量産できるような「やり方」「工夫」が大事になります。

 

 

実際、「このようなパンを作ってください」と口で説明しただけでは理解が難しい利用者様も多くいらっしゃいます。

そのために、私はパンの完成品とまったく同じものを粘土で作る工夫をしました。このようにすると、頭の中だけにしかなかったパンの完成予想図が現実の物として視覚化されて、より利用者様にとってはイメージしやすく作りやすくなるのです。そういった伝え方・働き方の工夫によって、より短期間で多くのことをできるようになっていただけるのです。

 

 

また、エスプリドゥは障害を持つ利用者様の就労の場であると共に、パンを売る店舗でもあります。

そこでは一般企業と同様に「店舗運営」に関する知識と創意工夫が必要とされます。「パンを作りました」「作ることができて良かったですね」で終わってしまってはいけないのです。きちんと売上をあげ、利用者様には工賃アップという形で還元しなければいけません。

 

そのためには、販売戦略や商品開発、さらにはせっかく作ったパンを地域のお客様に知ってもらうための広告宣伝も必要になります。

私が商品開発に関わったときのこと、私はカレー系のパンの売上が伸びていることを見て、「焼きバターチキンカレー」「キーマ(カレー)ウインナー」という2種類のカレー系のパンを作りました。

頑張った甲斐もあって売上は好調で、目標値を上回ることができました。

 

 

広告宣伝も私が取り組んでいる店舗運営業務の1つです。

具体的には、常連のお客様が登録しているエスプリドゥのLINEより、新製品や特売などのお知らせをタイミングよく配信したり、ブログを書いてPRしたり、店舗前に出すイーゼル(看板)にも工夫を施したりしています。

支援はもちろんのこと、商売としての反響を肌で感じられる点も仕事のモチベーションにつながっています。

 

利用者様と一緒に働く上で気を付けていることは?

――障害を持つ方々と一緒に働く上で、特に気を付けていることを教えてください。

 

長門

自分にとっても利用者様にとっても、「感情のコントロール」の大事さは痛切に感じています。

エスプリドゥで働き始める前の私にとって仕事場は、上司からは強い口調で指導を受けるなど、感情的なやり取りがあって当たり前という殺伐としたものでした。

しかし、障害を持つ利用者様の中には、その障害特性からか、自己肯定感を上げられなかった方がたくさんいらっしゃいます。そんな方々に対して、強い口調で否定するようなコミュニケーションをすることは避けるべきです。前職での経験を反面教師として、逆に、できたことをちゃんと認めて褒めるようにと気を付けるようになりました。

 

 

 

例えば、アンパンを作るときに使う「ディッシャー」という治具があります。一般的にはアイスクリーム屋などで見る、一握りするだけで一定量すくいとることができる器具のことです。

このディッシャ―を使う利用者様が、一日の仕事を終えるときによく片付けを忘れてしまうのです。「困ったなぁ・・・」と思っていたところ、ある日その利用者様がディッシャ―を洗い場まで持ってきてくれたのです!

「ありがとうございます!」と感謝の気持ちを伝えて、「片付けまでできることは素晴らしいことです!」と褒めさせてもらったところ、以降のコミュニケーションが以前よりも円滑になりました。何より、利用者様から私の方へと自発的に話しかけてくれるようになったのです。

 

 

また、エスプリドゥには比較的若い利用者様もたくさんいらっしゃいます。

わたしは年齢が近いこともあり、身近な存在という利点を生かして、利用者様を楽しませる会話をして、できるだけ落ち着いた気持ちで作業していただけるよう気を付けています。

いずれにしても、「感謝する」「褒める」「楽しませる会話」という行動から、利用者様、ひいてはエスプリドゥ全体の雰囲気を和らげ、みんな落ち着いた気持ちで働けるようにということを念頭に置いています。

そうすれば結果的に、みんな集中して自信を持って仕事に取り組むことができ、活躍していけるものだと考えています。

 

 

長門さんの「これから」

――そんな長門さん、これからはどうしていきたいですか。

 

長門

今は、とにかく自分がやるべき課題に取り組み、結果を出すことが大事だと考えています。

ありがたいことに、エスプリドゥ、ひいてはエスプリドゥを運営する社会福祉法人SHIPに対しては、「こんな自分でも働かせてくれる」という気持ちが大きいです。前職2社ではある意味馴染めなかった自分が、充実して働ける環境を手に入れられた。この安心感は大きいです。

 

 

特に、サービス管理責任者を筆頭に、意見を発信しやすい雰囲気づくりがされていることが大きいですね。

上司の言うことには従うのが当たり前という価値観で仕事をしてきましたが、エスプリドゥで働くようになってからは、立場は違えど良くしていきたい気持ちは同じ。意見を言うのに上司部下は関係無いと思うようになりました。それも、SHIPで頻繁におこなわれている虐待防止やパワハラ防止の研修成果なんだと思っています。

 

将来的にはエスプリドゥの売上をもっと上げて、利用者様へ工賃という形で還元していきたいですね。

それには、生産物(パン)の価値を上げていくことが大事だと考えています。例えば、もっと役に立つ治具を考案して、もっとクオリティの高いパンを量産できるようにしたり。

そう考えると、エスプリドゥ全体の運営のしかた、言い換えるとパン製造のシステムをより良いものに再構築していく視点を持つことが大切です。そうなると、主任やサービス管理責任者になって、事業所全体を管理していく立場になることが目標になってくると思います。

 

長門さん、ありがとうございます。

障害者支援にかける想いがとても伝わってきました。

これからもその想いを大事に、頑張ってください!