動機づけ面接法 研修インタビュー 『ケース⑥:精神保健福祉士の長澤さん』

営業やサービス業など、様々な業界を経験してきた長澤さん。

福祉の仕事は、生活困窮者支援のケースマネジメントからスタート。

もっと一人ひとりの生活に密着した支援がしたいと考え、社会福祉法人SHIPの門をたたいてくれました。

今は、サクレ江戸川という精神障害・知的障害対象のグループホームでサービス管理責任者として勤務している精神保健福祉士です。

表面的にはおちゃらけて見える人ですが、支援のことになると真剣そのもの。質の向上には余念がありません。

最近では自身の成長だけでなく、一緒に働くスタッフへの育成やその成長にもやりがいを持っているそうです。

そんな長澤さんは、支援の中心的なスキルとして『動機づけ面接法』を活用しているとのこと。

かれこれ5年ほどの動機づけ面接法の経験から、現在に至るまでの変化をインタビューさせてもらいました。

 

 

 

――今の職種を教えてください。

長澤:グループホーム・サクレ江戸川でサービス管理責任者をしています。

サービス管理責任者の仕事は、利用者さまの目標(デマンド)を叶えるための『個別支援計画』の作成です。

個別支援計画はスタッフへの支援方針の『柱』になるので、かなり力を入れて取り組んでいます。

 

――個別支援計画の作成で気をつけていることはどんなことでしょうか?

長澤:利用者さまの人生をトータルでとらえる視点には気をつけています。

具体的には、生物・心理・社会モデルに加えて、ストレングスモデルを採用したアセスメントを実施しています。

綿密なアセスメントから個別支援計画の支援方針が導き出されていることを利用者さま・支援スタッフの全員で共有することを大切に考えています。

 

(生物心理社会モデル&ストレングスモデルのイメージ)

 

 

――では話しを戻して、『動機づけ面接法』の研修を受けようと思ったキッカケを教えてください。

長澤:6年ほど前、上司からススメられたことがキッカケです。

2週間に1回のペースで、動機づけ面接法の理念や適用方法、質問、傾聴、情報提供、に関するレクチャーを受けました。

毎度毎度、宿題が設定されていたのですが、それをこなすたびにスキルUPしていくのが分かりました。

また、利用者さまのポジティブな変化を目の当たりに実感することができました。

 

――長澤さんからみた『動機づけ面接法』のメリットをひと言でいうとどんなものでしょうか?

長澤:感覚的な支援が、理論として整理されるところです。

私の支援のスタンスとして、支援者が決めるのではなく、利用者さまが主体。自分の人生を生きてほしいと考えていました。

支援者として、自分なりに工夫していたこと・知りたかったことが、体系的にまとめられているのが『動機づけ面接法』でした。

 

 

――どんな場面で役立ちましたか?

長澤:利用者さまの一番大切にしている想いを聴き出せることは、本当に役に立ちました。

この研修を受ける前までは、よかれと思ってアドバイスばかりしていました。でも、なんとなく違和感がありました。

『動機づけ面接法』は支持的な技法です。相手の一番大切にしていることを聴いて聴いて聴きまくります。

それさえ分かれば、私たち支援者は『なにを応援すれば良いか』が明確になります。

アドバイスの前に相手を知ることが先。そんな原点を思い出させてくれたのが『動機づけ面接法』でした。

 

 

――具体的な事例を教えてもらえますか?

長澤:ほとんどの人たちは『変わりたいけれど・変わりたくない』という矛盾と葛藤の中にいます。

たとえば就労に関する支援では『一般企業で仕事をしたい。けれど自信がないからやめておく』といった感じです。

禁煙やダイエットでも同じです。『禁煙したい。けれどストレスが溜まるから吸うしかない』といった感じです。

『動機づけ面接法』では、この相反する矛盾点について積極的に話し合っていきます。

矛盾点を言語化しないままだと『現状維持』に固執します。変わることは面倒くさいのです。

だからポイントは、両方の側面をたくさん聴くことです。そして、価値観(大切にしている想い)に戻りながら、とくに『変わる側』の考えをたくさん言語化してもらうことです。

そうすると不思議なもので、変化に向かう思考がテンプレートになり、変化に向かう行動が増え、自分を肯定的にとらえられるようになります。

『動機づけ面接法』を実施した結果、就職も実現されましたし、禁煙も成功されましたし、ダイエットも成功されています。

これは、私の力ではなくて、利用者さまがもともと持っている力によるものでした。

 

 

――でも、変化に抵抗している利用者さまを目の前に、フラストレーションは溜まりませんか?

長澤:その人が本当に大切にしている想いが分かれば、純粋に応援できるようになります。

『動機づけ面接法』に出会う前までは、利用者さまの目標は、支援者が達成させるものって考えがありました。

『動機づけ面接法』を習得してからは、その人の人生の責任をその人自身が持てるようにと、そして、その人の人生が幸福な方向へ必ず進むんだ!と、信じ切れるようになっています。

 

――現在は、『動機づけ面接法』をどのように活用していますか?

長澤:スタンスはほとんど変わりません。一番大切にしている想いを聴くことです。

そして、共通のゴール(真の目標)を設定することで、あとはそれに向かった話し合いをするだけです。

個別支援計画をつくるときも『目標』がありきとなりますので、そこを大切に聴いて聴いて聴き切っています。

 

 

――でも今は、直接の支援スタッフではありませんよね? 

長澤:そうなんです。最近では、自分の支援方法をまわりのスタッフと共有することにも力を注いでいます。

冒頭に話した『生物心理社会モデル』『ストレングスモデル』の基礎となるのは情報収集です。

ですので、直接聴き取る支援スタッフにスキルUPしてもらわないことには、謝った情報をもとに支援計画を作ることになってしまいます…

みんなが質の高い相談援助を実施できるように、今期からは私も『動機づけ面接法』の研修を提供する側になっています。

 

――教える側にまわってみての気づきはありますか?

長澤:理解してもらう、ことは難しいと感じました。

また、教えることで自分自身の新たな勉強にもなるなぁ… と感じています。

上手く伝えられなかった部分は、あらためて勉強して、より分かりやすい表現で教えていくことを繰り返す。

そうすることで、より『動機づけ面接法』のことを咀嚼ことができましたし、スタッフ一人ひとりの価値観を理解することにもつながりました。

 

 

――他にも気づきはありましたか?

長澤:『動機づけ面接法』は、自分がすでに持っている他のスキルとの相性もいいなぁ と感じました。

たとえば、矛盾を拡大する技法を使う場面。障害の特性が原因で両価的になっているというケースはしばしばです。

不安症の人だと「完璧に成し遂げたい。という姿勢は素晴らしいです。一方で、完璧を目指すあまり、不安が強くなって行動に踏み込めない。ということにもなりますね』といった具合に。

そして、「このバランスを図っていくために、なにかできそうなことはありますか?」と質問すると、本人なりのバランスのよい考えが出てきます。それを具体的に聴いていくことで、変わる側の道へと進んでいきます。

つまり、不安症の心理教育エクスポージャーを『動機づけ面接法』で進めることができます。

いろいろと応用できるなぁ… と つくづく感じています。

 

 

――お話しありがとうございました。では最後に、これから『動機づけ面接法』を学びたい人へメッセージをお願いします。

長澤:『動機づけ面接法』を学ぶことで、支援の幅が広がっていくことを実感できると思います。

また、課題を支援者側が背負うことがなくなります。

真のエンパワーメントがなんたるかに気がづけると思います。

習得までにはトレーニングが必要となりますが、ぜひ一緒に学んでほしいと思います。

 

 


 

長澤さん ありがとうございました。

長澤さんは江戸川方面で『動機づけ面接法』の研修を実施しています。

ご希望の方は、直接、発注していただけたらと思います。

ただし、SHIPの社内研修になりますので、社外の人で学びたいという人はSHIPに転職してからでお願いします。

 

ではでは

アディオス・アミーゴ