映画『梅切らぬバカ』を見てきました

和島香太郎監督の、全国で話題の映画『梅切らぬバカ』を見てきました。

母親と二人で暮らす重度の自閉症の息子、息子が50歳になり、将来が不安になる中、母親は息子のグループホームの入居を決意して・・・というお話。

 

感想はいろいろありますが、まだ見ていない方のために映画の内容にくわしくは触れないように書こうと思います。

 

【リアルな社会の問題が見える映画】

まず思ったのは「とてもリアルだ」ということです。障害者への偏見、地域で受け入れられていないこと、8050問題など、まさに今社会の中で起きていることの一場面でした。

また、忠さんを見ていて、グループホームで支援した方たちを思い出し「ああ、こういうことあったなあ」と思わずクスっとしたり、「その対応はダメだよ~!」とハラハラしたり、涙が出たり・・・。

 

 

SHIPは「重度知的障害者が地域で当たり前に暮らせる社会」を目指していますが、これはまさに、この映画のような現状があるからです。

忠さんたちのような方が、なぜ地域で暮らすのに障害があるかというと、この映画を見てもまず感じるのは「話ができない」ということでしょう。

人によってもちろん違いはあるのですが、言葉でのコミュニケーションが困難なのは確実です。忠さんも、言葉は話していましたが、一般的なイメージの「会話」ではないと感じるかと思います。

また、忠さんも嫌な事があると騒いだり暴れたりしてしまう、という場面がありましたが、「強度行動障害」と呼ばれる行動は、社会生活に大きな影響があります。

本人は理由を言葉で説明できませんし、こちらも「まわりに迷惑だから」「危険だから」とやめさせようとしても本人には理解してもらえません。

すると、映画にも出てきましたが、「迷惑だから社会とは切り離して閉じ込めておけ」という人がいるわけです。でも自分が迷惑だから、相手に迷惑をかけてもいいものでしょうか。

障害特性を知っていると、たとえば梅の剪定など「ああ、そんなことをしたら余計に混乱してしまうのに・・・」と思う場面が映画の中ではたくさんありました。「迷惑だ」と言っている側が、実は余計に事態を悪化させているのです。

また、忠さんが馬を怖がらせるというトラブルもありましたが、忠さんがどうしたいのか、馬が怖がる理由などを理解したら、対応できたのではないかと思いました。実際、馬も忠さんも落ち着いてコミュニケーションを取れている場面がありましたが、一番馬を分かっていると思っているであろう乗馬場の職員は、そのことを知らないままです。

地域社会の中で問題が起きるのは、知られていないから、理解されていないからです。

でも「相手を理解しよう」とするよりまず先に「この人は普通の人ではない」という偏見があり、もう自分とは違うと拒絶しているように感じました。

実際に、重度知的障害者支援の現場の話を聞いても、例えば医療機関でさえも「こんな人は診られません」と言われることすらあるのが現実だそうです。

 

 

【忠さんをアセスメントしたい】

 

もうひとつ、映画を見て思ったのは「忠さんをアセスメントしたい!!」です。忠さんは何を考えているのか、何をしたいのか、できるのか・・・もっと知りたいと思いました。

「できない」ことが先に目についてしまいますが、忠さんも、例えば規則正しい生活ができていますし、ごみ捨ても、隣人よりちゃんとできていました。ケーキにろうそくを立てるときなど、「もしかしたら忠さんものすごく能力高いのでは?!」と思う場面もありました。

 

 

忠さんを見て以前ラファミド八王子で支援した方を思い出しました。

知的障害で自分からはほとんど言葉を発しませんでしたが、あるとき、話かけると言葉がたくさん出てきて、職員の名前もたくさん覚えているとわかり、驚かされました。同時にこちらが勝手に「話せない」「わからない」と決めつけていたと気づかされました。

実際にどのくらい理解しているのか、何を考えているのか、何ができるのか、それはすぐには分からないし、全部は分かりません。でも、決めつけずに知ろうとすることで、引き出し、のばせることはあるのです。

 

映画の中でも、母親が声をかけると、思ってもみない返事がくる場面がありました。

うまく言葉で伝えることは苦手でも、その人その人で、いろんなことを感じて考えています。そしてそれは、まわりが「きっとこうだろう」と思っていることとは違うのです。考えてみたら、それってあたり前のことなのですが・・・。

また、母親は「自分が一番息子のことを分かっている」と同時に「でも息子の気持ちや考えをくわしく会話して知ることはできない」という思いがあるのかなあとも思いました。

 

 

忠さんは本当は何をしたいのか、どう思っているのか、映画で見ただけではわかりません。映画の中で使っていた言葉も、その言葉の理解は私たちとは違っているかもしれません。

でも確かに、忠さんは自分の意思があります。

 

障害者支援の現場では、その人に必要だとこちらが思うことをやってあげても、やらせようとしても、うまくはいかないものです。支援で大事なことは、本人を中心に考えることです。

SHIPではそのための「アセスメント」に重点を置いています。もしできるなら、忠さんのアセスメントをして、忠さんがやりたいことをできるように支援したいな、と思いました。

SHIPは「自分のできることを増やす」支援を行っていますが、忠さんもきっと、もっとできることが増やせるように見えました。

 

『梅切らぬバカ』はリアルな社会の問題の存在を教えてくれます。

映画を見て少しでも気になった人たちには、映画を見ただけでは分からないこと、重度知的障害者、自閉症の方たちやグループホームのことなどをもっと知ってほしい!と思います。

 

SHIPの重度障害者向けグループホーム「」「友セカンド」、日中活動の場である生活介護「」「笑プラス」は、忠さんのような自閉症の方が過ごしやすい構造化支援アセスメントに基づく個人個人に合わせた支援を行っています。

SHIPのホームページのブログや、YouTube動画などで、支援事例を紹介しています。

支援事例 | 社会福祉法人SHIP (swsc-ship.com)

勉強会などのイベントも随時開催しています。

採用イベント | 社会福祉法人SHIP (swsc-ship.com)

興味のある方はぜひ、見ていただけたらと思います。

 

 

私も以前は、忠さんのような人たちのことを、知りませんでした。

ラファミド八王子で「障害者」と実際に関わって知ったのは、自分が無意識に偏見を持っていたということ、障害者も個人個人いろんな人間だということ、そして障害者支援のおもしろさです。

SHIPの職員に話を聞くと、同じようなことを話す方は多いです。世の中に知って欲しいと感じる熱い話がたくさんなので、よかったらインタビュー記事を読んでいただければと思います。

スタッフブログ | 社会福祉法人SHIP (swsc-ship.com)

 

最後に、私と和島監督も当事者である「てんかん」や他の障害についても触れさせてもらいます。

和島監督には、私が主催するてんかん当事者会「パープルカフェ」に参加していただき、私も和島監督のYouTubeてんかんを聴く「ぽつラジオ」で話をさせていただきました。「ぽつラジオ」は「てんかん」を持つ個人の言葉を聞くことができます。

「てんかん」も社会の中でまだまだ「知られていない」「偏見を持たれている」病気です。

私の場合は、子どものころは発作はあってもまわりに気づかれることはなく、親しい友達やいとこでさえ大人になるまで私が「てんかん」だと知りませんでした。私自身も「てんかん」について深く知ることのないまま大人になりました。そして今、もっと早く知っていればと思うことがたくさんあります。

また、ラファミド八王子で支援してきた利用者様には、未診断で本人も気づいていない発達障害があり、それが二次障害につながっているという方がたくさんいました。

まわりが、本人がもっと早く知ることができれば、その人に合わせた対応ができれば、その人の「障害=生活のさまたげ」はもっと違っていたかもしれません。

 

「障害者」は障害の前にひとりの人間だということ、そして「障害」は個人だけの問題ではなく、まわりの理解も大きく関わる、社会の問題だということ。それは『梅切らぬバカ』という映画のタイトルにも込められているように思います。