現場に還元できる研修をオンラインで!『ADHDの苦しみを理解しよう』前編

SHIPでは、今年度からZoomでのオンライン研修を始めました。

職員は、事前に通知されている研修予定を見て希望を出し、事業所のサービス管理責任者にシフト調整をしてもらい、研修を受けています。

複数の事業所から参加する場合もあれば、受講者が1名でも受けられます。オンラインの利点を活かし、職員のスキルアップの場の充実を進めています。

さて、実際にどんな研修を行っているのか、のぞかせてもらいました。

今回の研修は『ADHDの特徴と支援方法』、講師は人材育成担当の兵働さん、受講者はラファミド八王子の職員1名です。途中休憩をはさんで、約2時間行われました。ここでは前半1時間のようすを紹介したいと思います。

 


 

 

 

【研修の目的は現場でのアウトプット】

 

SHIPの内部研修の目的は「現場への還元、活用」です。

学校の授業でも、テレビの講座でも、聞いているとなんとなくわかった気になるものですが、講義を聞いておしまい、では意味がありません。教わったことを自分の言葉で説明でき、実際の支援に活用できてはじめて意味があるといえます。

インプットで終わらず「アウトプットする」ことを目指してもらいます。

そのために、目的を明確にし、ただ話を聞くだけでなく、普段の支援と照らし合わせて考えて、理解を深めてもらうような形で進めていきます。

受講者に目的を聞くと「自分が担当する利用者さんにはADHDの人はいないが、担当かは関係なく、広い目で見ていきたい、漠然とした知識しかないので掘り下げてもう一度勉強したい」とのことでした。

講師からは、ADHDに関する以下の3つのクエスチョンに対して、自分の言葉で簡潔に説明できるようになることを目標として提示されました。

 

 

【ADHDの困りごとを理解する】

 

ここからは、研修の内容をピックアップして、受講者からの質問や感想も含めて紹介したいと思います。

障害者支援で大切なのは「相手を理解しようとすること」です。ADHDの人たちはどんなことに困っていて、支援を必要としているのでしょうか。

ADHDの人たちが困っていることとして、以下の「3つのT」があります。

 

 

本人だけでなく、まわりにも迷惑がかかることばかりですね。しかし、ここで理解しておくことは「本人たちも苦しんでいる」ということです。

本人たちもしたくてそうしているわけではなく、冷静になってから自責の念にかられ、うつなどの二次障害につながることも多いです。

まわりは「後悔するなら最初からやらなければいいのに…」と思ってしまうし、ADHDの人たちがトラブルを起こさないようにと考えるわけですが、本人たちにとっては「そうしたくてもできない」のが一番の苦しみなのです。

また、ADHDは「脳内が常にストレス状態」と言えます。

ADHDでなくても、ストレスがたまったり忙しかったりすると、余計なことばかり考えてしまうなんてことはあると思うますが、そういう切羽詰まった状態が、ADHDでは常だということを、支援者は理解しておく必要があります。

そして「トラブル」にフォーカスするより「苦しみ」をまず受け止めることが、支援のための関係性づくりの第一歩といえます。

 

 

【ADHDは「性格」ではなく「症状」】

 

ADHDの人たちの行動は、まわりからすると「自分のことは棚上げにして文句ばかり」「なんでできないんだろう」と感じられ「わがままな人」と思われてしまうことも多いです。

でも、わがままな「性格」だと決めつけてしまうと、支援することが何もなくなってしまいます。また、できていたところも見えなくなってしまいます。

そうならないためには、「ADHDは脳機能の問題だという理解」「本人も苦しんでいる障害であるという認識」「レッテル貼りをしないで分析する視点」が支援者には必要と言えます。

 

欲求と直結する「お金」の管理について質問がありました。

受講者「見通しを立てて貯金をしていても、欲求に負けてお金を使ってしまう人がいます。お金を貯めることに時間をかけるより、ADHDだとお金を貯められないと認識するしかないんでしょうか?」

兵働「何の枠組みもなしに本人にゆだねると、できないということはないが、難しいです。枠づくりや動機づけで、見通しを持ったやり方をすればできる可能性は高くなります。また、ゴールが遠すぎると続かないですが、ゴールを短めにする工夫はできます」

ADHDの場合、「普通だったらガマンできることだ」と思うと、「できない人」になってしまいます。枠組みや工夫をして、いわば「補助輪」をつけることで、前に進むことができるでしょう。

 

 

【ADHDの3つのタイプ】

 

ADHDは「多動優勢型」「混合型」「不注意優勢型」の3つのタイプに分けられます。

「多動優勢型」は、突発的な行動や、他人に迷惑をかけることも多く、比較的目につきやすいです。

対して「不注意優勢型」は、話を聞いているようで聞いていないなど、一見すると分かりにくく、本人も周りも気づかないということも多いです。そのため、失敗をくり返して自責からうつや引きこもりになるといったことも起きてしまいがちです。

支援の場でも、「多動型」が優先されがちで、「不注意型」の支援は後手に回りやすいので、見えづらい症状に気付ける視点が必要です。

 

ここでは「これはADHDが原因なのか?」という質問がありました。

受講者「ケガをよくする人も不注意優勢型なんでしょうか?」

兵働「そういう人もいます。気になることに集中して段差につまづくといった場合が考えられるし、空間認知能力が弱いところもありますね」

受講者「では、勝手に契約をしてしまうのも?」

兵働「多動型だと、良いと思ったらそこだけ見て注意事項を読まないまま決めてしまう、ということがあり得ます。また、軽度知的障害がからんでくる場合も考えられます。説明を理解できずに、相手に流されてハンコを押してしまう、ということも考えられますね」

ADHDは診断を受けず埋もれている人も多いです。「どうしてこんな行動をするんだろう?」と感じたときは、よく観察してみると、埋もれていた障害が見えてくるかもしれません。

 

 

【ADHDはストレスがかかりやすい】

 

ADHDは精神疾患との合併が高いと言われ、実際SHIPの利用者さんでも、ADHD単独よりも、統合失調症やうつなどと合併している人の方がずっと多いです。

それには「ストレスがかかりやすい」という要因があります。

支援者が思っているよりも、日々大変な思いを本人たちはしているのです。

受講者からは、「利用者さんを見ていると『なんでやらないの?』『できないの?』と日々思うけど、本人たちも自分自身が困っているんですね」という感想がありました。

 

【『福祉慣れ』してしまった人たちへの支援】

 

ここまでの話のように、ADHDは日々つらい思い、ストレスを抱えているのですが、まわりからは「やりたくてもできない」苦しさを理解されず、「わがまま」というレッテルを貼られてしまうことも多いです。

そのため、なんども注意され、怒られ、同じことを言われ続けて、それに慣れてしまい、あきらめてしまっているという人たちは少なくありません。

受け身な利用者さんはのれんに腕おし、支援したくても、本人が変わりたい気持ちがないと、手助けすることはできません。そんな利用者さんを再度、スタートラインに立たせることは大変です。

関係性を築いて、本当のことを話してもらえるようにすることが一番難しいけれど、大事なことです。

 

ラファミド八王子の利用者さんも、病院や福祉施設などを回りまわってきた人も多く、「福祉慣れ」は職員も感じているようです。

受講者「『どの程度自分の障害と向き合っているのかな?』と感じることがあります。口では正論を言うが行動は伴わない。質問をしても、自分の本心ではなく人から言われたことを言っているようで、そこにすごく問題を感じています。本人が問題を本気で分かってくれると、もっと楽に生活を送れるんじゃないかともどかしくなります」

兵働「大事なことですね。福祉慣れ、支援者慣れしている人は『こう言えば何も言われないだろう』という人もいます。私たちも、一歩踏み込んだ支援をする必要があると思います」

 

受講者「成育歴もすごく大事だなと思います。今までどんな人生を歩んできたのか」

兵働「関係が近くなりすぎたり、なれてきたら、過去をふりかえることも有効です。話してくれない人もいますが、聞ける範囲で本人に聞くこともいいです」

 

受講者「話の内容によっては、どの程度傾聴していいか分からないのですが」

兵働「相手のことを知りたい、理解したいという理由で、ご本人の話せる範囲で、病状がある程度安定しているといった条件がそろった上で、私は聞いていますね。話してくれると信頼してくれているのかなとありがたいですし、自分の勉強にもなります。自分のためにも聞かせて欲しいということを正直に伝えています」

 


受講者はADHDは本人たちが一番苦しんでいること、アセスメントや話を聞くことの大切さをあらためて理解し、普段現場で感じている疑問や問題へのヒントをつかめたのではないでしょうか。

受講者は積極的に質問や自分の考えを話し、兵働さんも自らの経験をもとに話をしてくださり、密度の濃い研修内容だと感じました。

続きの後半の内容は、また紹介したいと思います。