生の欲望 と 死の恐怖  by 森田療法

怖くても逃げず、少しずつ向き合うことで慣れていく。日本発の心理療法に『森田療法』があります。

1919年 森田正馬(もりた・まさたけ)によって創始された『神経症』向けの心理療法です。

神経症と聞くと、どんなことを連想をしますか?

脳神経系のやつ・・・でしょうか?

 

神経症を簡単に説明すると、いわゆる「心配性」のことなんです。

もう少し専門的に表現するなら、「不安や恐怖に関係する心の状態」を指す言葉になります。

 

代表的な疾患名としては、

パニック障害、強迫性障害、全般性不安障害、社会不安障害、身体表現性障害、特定の恐怖症などがあげられます。

神経症とは、「不安や恐怖」が中心となる心の病とされています。

 

少しの不安や恐怖なら誰もが感じるところです。

しかし、不安が強すぎたり怖すぎたりすると辛くて苦しすぎるのです。

だから、それを避けるために、引きこもったり、おまじないをしたり、お酒を飲んで忘れようとしたりします。

でもそういった行動が増えると、日常生活に支障が出てしまいます。

なぜ、こんなにも不安や恐怖を感じるのでしょうか?

 

森田正馬は『死の恐怖』があるからだと言っております。

 

たしかに。

例えば、電車の中で心臓が・・・

『激しい動悸』に襲われて命からがら次の駅で降りることに。

電車に乗ること=死んでしまいそうになる

『電車』と『死』が条件づけられます。

以降、電車を見たり、電車に乗ることを想像するだけで『死の恐怖』に怯えてることになるのです。

 

たしかに。

マンションの高いところから下を見ると、吸い込まれそうになります。

落っこちるイメージが浮かび、下腹部が浮くような感覚に襲われます。

き〇たまがキュ~ッと締めつけられる身体感覚に襲われます。

すると、『高所』と『死』が条件づけられます。

以降、高いところでは『死の恐怖』に怯えながら生活することになります。

 

森田正馬は、「不安や恐怖の根底には『死の恐怖』がある」と語っています。

そしてその裏には、実は『生への強い欲望』があると見抜いていたのです。

 

言われてみれば当たり前の話ですが、

『生にしがみつく』から『死ぬのが怖い』わけです。

 

つまり

『より良く生きたい』

『生きたくてたまらない』

と思っている人は神経症になりやすい人ってことになります。

 

神経症の人は矛盾しています。

本当は誰よりも「よりよく生きたい」と思っているのに、現実では避けたり逃げたりばかり・・・

私自身、そんな自分に何度もがっかりした経験があります。

今思えば、理想と行動のギャップに苦しんでいたのかもしれません。

 

では、どうやって克服すればいいのか?

これは永遠のテーマですね。

 

森田正馬からの教えを並べると、

・あるがまま:不安や症状を消そうとせず、そのまま受け入れる姿勢

・生の欲望と死の恐怖:「死にたくない」は「生きたい」の裏返し。不安は生の証。

・自己内省的と自己中心的:内面ばかり気にしすぎると、他人の目にも過敏になる

・不安の裏側に願望あり:不安があるのは、「こうしたい」という願望が強いから

・感情否定は自己否定:「感じちゃはダメ」は、自分を否定することにつながる

・不安常住:不安は消えない。あって当然という前提で、不安と一緒にいる

・自然服従と事実服従:自然(感情)も事実(現実)も、抗わず変えようとしない

・気分本位から目的本位へ:気分に左右されず、「何のため」を意識して動き出す

・恐怖突入:怖くても、目的に向かって「えいやぁ」と動きだすことで慣れていく

 

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では、

アディオス・アミーゴ

 

<参考文献>

「心配性をなおす本」(著:青木薫久/1999)

森田療法の指南書としておススメです。

きっと、あなたの人生を変えるキッカケになることを願っております。