コロナ禍のメンタルヘルス対策として『自殺防止研修』を開催しました

6月1日より、また新たなダイエット方法を試みはじめた本部事務局の上田です。

今回のダイエットはスタンダードプランに戻り、地道に食事療法と運動療法をおこなっています。

今回は、半年間で10キロ痩せたいと考えております。(いつまでつづくんだろうか…)

 

さて、コロナ騒動から約1年半が経過し、世の中も様変わりしてきました。

コロナ禍がメンタルヘルスに及ぼす影響は本当に計り知れないものがあります。

今まで当たり前のように会えていた人と会えなくなったり、今まで当たり前のようにしていた趣味ができなくなったり、今までの常識は覆されました。

緊急事態宣言下では経済も回らず、会社の経営が立ち行かなくなり、倒産したり、失業者も増えている状況です。

経済的にも、精神的にも、かなりのダメージを受けている昨今、私たちは福祉や心理に携わる者としてメンタルヘルスの問題とあらためて向き合わなければなりません。

 

 

 

 

他方、私たちのような福祉事業で働く人は『エッセンシャルワーカー』と呼ばれ、日常生活を送るうえでは欠かせない仕事を担っております。

コロナ禍でも仕事がなくならないことはとても有難いことです。

一方、私たちのような福祉事業で働く人は『エモーショナルワーカー』と呼ばれ、自分の本当の感情とは別の感情を演出することが求められます。

そのため、精神的には疲弊しやすくバーンアウトが起こりやすい職業でもあります。

さらにコロナ禍においては、今までしていたストレス発散の手段が制限されてしまいます。

負の感情を溜め込みまくっているエッセンシャルワーカー・エモーショナルワーカーが増えていることをとても危惧しています。

どうにもならない苦しみから逃れる唯一の手段として『死』を考える人は、実は多いというデータもあります。

これまでの人生で少なくとも1回以上「本気で死にたい」と考えたことのある人は、なんと2割にも達していたという国民意識調査の結果もあります。

 

前置きが長くなりましたが、自分の身近な人たちを守るためにも、そして自分自身を守るためにも、有効なメンタルヘルスのセルフケア方法について啓発する必要があると考え、今年度より『自殺防止研修』を実施する運びとなりました。

 

かなりデリケートな内容になるので、最初は気持ちをほぐす意味で『クイズ形式』のスライドからスタートしています。

皆さんも、もしよろしければ一緒に考えてみてください。

 

 

 

 

<答え合わせ>

Q1、自殺者は年々増えている。

A1、✕ 年々減っている。ピークは2003年:34,427人、2019年:20,169人。

参考:資料:警察庁「自殺統計」より厚生労働省自殺対策推進室作成厚生労働省

 

Q2、自殺を考えている人との自殺の話しをするのは極力避けたほうがよい。

A2、✕ 自殺念慮の話を聞いて自殺率が上がったというデータは一つもない。むしろ質問されることで安心するケースが多い。必死に秘密にしてきたことに終止符が打たれて安心できるため。

 

Q3、「死にたい」と訴えられたら直ぐに入院を勧めたほうがよい。

A3、✕ 自殺の相談を妨げる原因のひとつに「入院させられる」というものがある。まずは自殺念慮の背景を話しやすくするための共感的理解が優先される。入院は最後の手段にしたほうがよい。

 

Q4、自殺リスクの高い人はサポートを受けたがらない。

A4、〇 自殺を考えている人は、解決の方法が「死ぬ以外はない」と考える傾向が強い。誰かに相談すると相手に負担を感じさせてしまう。また、唯一の解決方法を止めに来る支援者を敵とみなしがちであるため。

 

Q5、「死にたい」と訴えられるタイミングは、サービス提供時間の終了間際が多い。

A5、〇 クライエントのほとんどは、実はかなり前から死にたいことを伝えようとしている。でも、勇気が出せずに躊躇しており「もう時間がない…」と勇気を振り絞ってギリギリの時間に告白するケースが多い。

 

参考)もしも「死にたい」と言われたら ~自殺リスクの評価と対応~ 発行:中外医学社 著者:松本俊彦

 

 

 

<研修の内容>

この研修は全8項目とけっこうなボリュームとなっております。

1、なぜ自殺するのかを理解する

2、どう介入するのかを検討する

3、もし「死にたい」と言われたらを考える

4、自傷と自殺の違いを区別する

5、自殺と精神障害の関係を知る

6、守秘義務を考える

7、JAM 自殺リスク アセスメントシートの作成

8、PCOP 心理的危機対応プランの作成

 

 

このボリュームを2時間半で終わらせようとしましたが、やはり上手くいきませんでした。(´;ω;`)ウゥゥ

なので、以下の大事なポイントを押さえながら進めていきました。

 ☆ 「死にたい」という気持ちを理解できるようになる

 ☆ 自殺のリスクをアセスメントできるようになる

 ☆ 健康なときにセルフケアの戦略を立てて日頃から活用する

 

 

<PCOP:心理的危機対応プラン>

研修内容の中でも、とくにご紹介したいのが PCOP(ピーコップ)です。

PCOPのリーフレットは、無料で誰でもダウンロードできます。

 

 

心が限界を感じたり、死にたいくらいの気持ちになったりした経験がある方の助けになるよう開発されたものです。
自殺の試みを減らすために公的機関や医療機関を中心に様々な取り組みがなされていますが、とりわけカウンセリングの一種である「認知行動療法(Cognitive behavioral therapy: CBT)」という方法は、高い効果を持ちます。
CBT を受けるには、一般的には病院やカウンセリングルームに継続して通う必要があります。他方で、公共機関に AED が置かれ、多くの人に人工呼吸・心肺蘇生法が伝えられているように、誰でも・どこでも・短時間で、心理的なケアができる、緊急対応の方法が求められてもいました。
そんな中、アメリカの臨床心理学者、Crayg J. Bryan 氏は、短時間で実施可能で、なおかつ効果の高い CBT を、米国軍人を対象として開発しました。
それが「危機対応プラン(CRP:Crisis Response Plan)」です。
アメリカの危機対応プランを実施された兵士は、標準治療を受けた兵士と比べて、介入後6ヶ月間における自殺企図が 76% 減少しました。
このリーフレットは、Crayg J. Bryan 氏に許可をとり作られた、最初の危機対応プラン・日本アレンジバージョン。心理的なコーピング(対処法)の提案に重きを置いているため、「心理的危機対応プラン(Psychological Crisis Coping Plan:PCOP)」 と名付けています。

引用)PCOPリーフレットより

 

まとめると、

心理的な危機を迎える前に、あらかじめそのとき用の対処方法をカードにまとめておこう。

そして、いつでも・どこでも・すぐに使えるように持ち歩いて、そのときが来るびに対処法を試していこう。

というモノです。

 

カードに書きとめておく内容は5項目です。

 ①、警告のサイン

 ②、セルフマネジメントの方法

 ③、生きる理由

 ④、サポーター

 ⑤、緊急連絡先

 

これらの5項目をカードに書いてお財布などに入れて持ち歩きます。

危機が訪れたとき手に取りたくなるように、色使いやデザインにもこだわって作ることがポイントです。

 

ちょっと恥ずかしいのですが、私のPCOPを見せちゃいます。

 

 

ケースに入れて持ち歩けるようにします。

 

 

作成時間は30分~1時間程度です。

『生きる理由』を真剣に考えたことは、ブログで『考えさせられる…アンパンマンのマーチ』を書いて以来です。

あと、セルフマネジメントの方法として、『認知レパートリー』と『行動レパートリー』に分かれているところが面白いです。

リーフレットには参考になるプランのヒントが丁寧にたくさん載っているので、ぜひ、皆さんにも作成していただきたいと思います。

 

 

<さいごに>

さいごまでお付き合いしていただいた皆さんにお願いがあります。

自分の身近な人たちを守るためにも、そして自分自身を守るためにも、こちらのPCOPの存在を少なくとも一人に伝えひろめてもらえませんか?

一人ひとりのちょっとした取り組みが、この困難な時代を乗り越えていくための大きな支えになると思うのです!

なにとぞ、よろしくお願いいたします。

 

それでは。

アディオス・アミーゴ