「落ち着く方法」を持っていない人たちのために
~ TFT初級アルゴリズム研修を受けて、あらためて思ったこと ~

なんと今日は、私の誕生日です。50歳になりました!

人生の折り返し地点を回り、人生のゴールに向かって走っている状態です。

この年齢になると、自分のことよりも「世の中のために」という気持ちが強くなります。

今回のブログは、そんな気持ちを込めて『TFTの研修受講記』を書き留めましたので、ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。

 

原点は、タバコがやめられたという「事実」

私は2018年に、対人援助資格講座 TFTパートナー® を受講し、資格も取得していました。

当時から強く印象に残っているのは、TFTのタッピングによって禁煙に成功したという個人的な体験です。

タバコを吸いたい渇望は本当にエグいものでした。

でも、そうした「やめたいのにやめられない感覚」が、タッピングによって抑えられたこと。

理屈ではなく体験として理解でき、今でも禁煙は続いています。

そのため、TFTに対しては「物質依存の渇望や、不安・衝動を下げるパワーのある療法」という実感が、ずっと残っていました。

一方で当時は、個人的な体験にとどまっていたこと、そして、とりあえず「つぼを叩けば、よく分からんけど良くなる」といった、やや大雑把な理解にとどまっていたのも事実です。

TFTの効果 身をもって体感中!

 

「もっと手前で、まず落ち着く」ための方法を探して

― SE™を学んだからこそ見えてきた課題 ―

その後、私は SE™(ソマティック・エクスペリエンシング) を3年間学びました。

SE™は、トラウマを抱えた人の身体反応をとても丁寧に扱う、優れたアプローチです。

ただ、実践を重ねる中で、ある課題も見えてきました。

それは、SE™に入る以前に、そもそも安定化が必要な人たちがいるということです。

 

とくに、

・知的なハンデのある方

・言葉で状態を表現することが難しい方

・すぐに興奮・混乱してしまう方

こうした方々に対しては、言葉を使って、「どんな感じですか?」「なにが起こっていますか?」という関わり自体が、負担になることもあります。

SE™の上級クラスではタッチセラピーを学びました。そして、昨年末 USPTのタッピングセラピーを学びながら、「そういえば、TFTってかなり言葉の少ないセラピーだったよなぁ」と思い出したのは、今回の研修受講につながる自然な流れでした。

 

触れる・叩く(タッピング) という行為は、支援者個々のスキルや伝え方に依存しないためミスが発生しずらく、比較的安全に落ち着きを取り戻せるのが特長です。

これは、私が支援対象としている人たちにとって、非常に相性が良いのではないかと改めて考えはじめました。

 

早すぎて、受け入れるのが難しいほどの変化

TFTの基本的なアルゴリズム(手順)は覚えていたので、比較的スムーズに講義に取り組むことができました。

それでも、あらためて驚いたのは、短時間のタッピングで、SUD(主観的な苦痛度合い)が大きく下がるという点でした。

 

タッピングした後に、

「先ほどの辛さですが、今は何点くらいですか?」

そう言われると、

「あれ? さっきの不快感、どこ行った?」

という感覚になる。

 

正直、あまりにも早く症状が消えていくため、その変化を受け容れること自体が難しいと感じる場面もありました。

また今回初めて、タッピングするツボの位置によって、関係する臓器や反応が異なるという説明を受け、このセラピーへの理解が深まりました。

「今、どこにアプローチしているのか」が少し分かるだけでも、納得感がまったく違います。

 

「温シップ」と「冷シップ」

研修中に特に印象に残ったのが、次の表現です。

 

C-PTSDのような、空虚感・満たされなさにはタッピングで「温シップ」を

怒りや恐怖のような、熱量の高い感覚にはタッピングで「冷シップ」を

※C-PTSDとは、複雑性PTSDのこと。幼い頃から受け続けていたトラウマの影響

 

この比喩は、本当に秀逸だと思いました。

 

TFTには、無理に語らせない、記憶を深掘りしすぎない、特定の思考を1本釣りして、そこだけにフォーカスする。という特徴があります(個人的な感覚です)

※TFTを日本語に訳すと「思考場療法」と呼ばれます。

 

講師の先生からは、「TFTはハズレもあるかもしれない。でも、効果が出ることも多い。そして、なにより安全性が高い」という言葉がありました。このような率直な言い回しが、福祉業界で働く私にとって強い信頼につながりました。

安全性の面で言うと、無理にトラウマを語らせてフラッシュバックを引き起こすわけではない。ただ、つぼをトントンたたいて、かなり良くなることもあれば、なにも起きないこともある。でも、悪くなることはない。そんな感じです。

 

なぜ、アルゴリズムがあるのか?

TFTでは、症状ごとに関連しやすい経絡(つぼ)が異なります。

そのため、原因診断(アセスメント)を重視し、確率的に効果の高いタッピングの手順をアルゴリズム化しています。

 

この研修で示された説明では、

何千ものTFT診断の臨床の中から70%以上の確率で各症状に有効なパターンだとまとめられたのが「アルゴリズム」です

引用)日本TFT協会HPより https://www.jatft.org/introduction.html

とのことでした。

 

上級レベルのトレーニングへと進むにつれて、筋反射や声の変化を用いたアセスメントにより、もっと高い原因診断のもと有効性を発揮できるとのこと。

 

ただ、今回わたしが教わった『初級アルゴリズム』だけでも、誰がやっても、一定以上の効果が出やすいという点で、福祉現場にとって非常に重要だと感じます。

たとえば、通常の支援に入る前にTFTを取り入れることで、まず耐性領域(落ち着いていられる状態)に入ってもらう。

このタッピングを通した効果は、クライエントのためだけでなく支援者の落ち着きにもつながる上に、お互いの社会交流システム(腹側迷走神経系)を働かせることにもつながると感じました。

 

そして、タッピング自体は難しくないため、セルフケアやホームワークにもつなげやすいですよね。

私はTFTが、治療的効果、調整的効果、教育的効果、すべての要素をあわせ持つツールだと感じはじめています。

 

 

「落ち着く方法」を持っていない人たちへ

私は、障害福祉の現場でこそTFTは使える、むしろ使うべき、と感じています。

障害福祉の現場では、「落ち着いた生活」「安定した暮らし」という言葉がよく使われます。

でも実際には、落ち着きや安定をもたらす方法を、利用者の方々は持ち合わせていない。

というケースが少なくありません。

だから、「我慢するしかない」という結論に至るのです。

 

そして最悪なのは、支援者も具体的な方法を持ち合わせていないこと。

「とにかく我慢してください」とだけ、言っているようなものです。

我慢の結末は爆発です。

我慢させて、爆発させて、その激しさをみて「ウチでは対応できない」となるわけです。

 

TFTは「不快感が出てきたら、とりあえず指でトントンする」という、非常に取っつきやすいスタートが切れます。

即効性があるため、「やったら楽になった」という経験が生まれやすく、タッピング行動が自然と繰り返されやすい、という特長もあると思います。

 

一方で、効果の言語化や意味づけは、一人では難しい。

だからこそ、支援者によるモデリングや振り返りの支援が重要だと感じています。

一緒にやって、一緒に振り返る。ただそれだけのことです。

 

万能ではない、だからこそ信頼できる

ただ、正直に言えば、内因性の精神症状(強い陽性症状や躁状態)に対して、TFTだけで落ち着かせるのは難しいと感じます。

お薬が第一選択になるケースも多いでしょう。

TFTは「思考場(不快を生みだすイメージ)」にチューニングしてからはじめるため、ある程度の現実感を持っていることが前提になります。

つまり、イメージが妄想的だと、効果も違った方向に進んでしまいます。

ただし、『社会交流や協働調整としてのタッピング』という位置づけであれば、導入の可能性はあるとも感じています。

限界を理解しながらも、支援を諦めずに関わり続けようとする姿勢が、私たち支援者一人ひとりにとって大切な部分になるのだと思います。

 

導入しやすい。でも、「がんばらなくてもいい」ではない

私はTFTが、「がんばらなくてもいい支援」だとは思っていません。

支援者一人ひとりが、本気で学び、トレーニングし、スキルを更新し続けることがなければ、生きづらさを抱える人は減っていかないと思っています。

ただ、気合や根性でがんばるのではなく、科学的に効果が示されている技法を使うほうが、支援成果を実感しやすい。

その意味で、「がんばり方を変えてみませんか?」という提案として、TFTを伝えていきたいと思いました。

障害福祉の業界では、儲けや商売から事業参入してくる企業が増える一方で、支援現場では、何も教えられないまま孤軍奮闘する支援者も増えていると聞いています。実際に、そういった話を生の声で聞くこともあります。

そんな支援者の方々を応援する意味でも、安全性と有効性の高いTFTのアプローチが、バーンアウト予防のキッカケになるのではないかと思うのです。

 

これからTFTとどう付き合うか

日本TFT協会は、支援者支援や人道的支援に積極的で、私の個人的なケース相談にも非常に親身に応じてくださいました。

この「根っこの良心性」は、安心して学び続けられる土台だと感じています。

これからは会員となって、継続的に学び、個人の実践と組織のスキルUPにも還元していきたいと思っています。

 

最後に、

最近は、瞑想・鍼・タッチ・タッピングなど、身体から整えるアプローチが注目されています。

TFTは、東洋医学の考えを取り入れた「つぼ」を、ロジャー・キャラハン博士が誰でもできる形に落とし込んだセラピーです。

 

言語支援に限界を感じている支援者へ

トラウマケアの入り口に立っている支援者へ

知らないより、知っていたほうがいい。マジで。

もしよければ、ぜひ社会福祉法人SHIPで共にトラウマケアのスキルを磨きましょう!

 

それでは、アディオス・アミーゴ

 


 

研究知見:TFT(思考場療法)の効果に関する報告
TFT(Thought Field Therapy)は比較的新しい心理的アプローチですが、PTSDや不安などの症状軽減を検討した研究が複数報告されています。ここでは、その中でも代表的な研究をいくつか紹介します。

■ PTSD症状の改善を示したランダム化比較試験(RCT)
虐殺体験をもつ成人を対象に、TFTを受けた群と待機群を比較した研究では、TFT群においてPTSD症状の有意な低下が確認されました。地域資源を活用した実践型研究としても注目されています。Connolly & Sakai (2011)
https://doi.org/10.1002/jclp.20828

■ 大規模トラウマ被災集団への短期介入研究
ルワンダのトラウマサバイバーを対象とした臨床研究では、短時間のTFT介入後にトラウマ関連症状の有意な改善が報告されています。専門家が少ない地域でも実施可能な支援モデルとして検討されています。Sakai et al. (2010)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20549644/

■ エネルギー心理学領域の総合レビュー(TFTを含む)
TFTを含むエネルギー心理学的介入をまとめたレビューでは、不安・PTSDなど複数領域で症状軽減の報告がある一方、研究デザインやサンプル規模のばらつきなど、慎重な解釈が必要である点も指摘されています。Feinstein (2012) Review of General Psychology
https://doi.org/10.1037/a0026940

■ CBTとの比較研究(不安領域)
不安症状を対象に、TFTと認知行動療法(CBT)を比較した研究では、両群とも症状改善が認められ、長期追跡でも改善が維持された例が報告されています。
詳細論文:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5477545/


※補足

研究結果には対象者、手続き、研究デザインなどの違いがあるため、効果の現れ方には個人差があります。本ブログでは研究知見と臨床判断の両方を踏まえ、支援現場での安全性を最優先に紹介しています。