「学びの先に広がる安心」 USPTで見えたトラウマケアの希望

SE™ から USPT へ「切れ味」に驚いたトラウマ療法

USPTベーシック実践トレーニングを受けて、まず感じたのは「このアプローチは、速い」ということでした。

私はこれまでSE(ソマティック・エクスペリエンシング『以下、SE™』)を学び、神経系の調整を中心にトラウマ療法を実践してきました。

SE™では、クライアントの耐性領域の中で、少しずつ慎重に、タイトレーションして、身体の感覚に寄り添いながら安全に進めることを大切にします。

神経系が過度に活性化しないように注意を払いながら、耐性領域から飛び出さないギリギリのラインを見極める。

そんな「丁寧さ」が、SE™の魅力であり、強みでもあると思うのです。

一方、USPT(Unification of Subconscious Personalities by Tapping therapy)は、少し違った切れ味を持っていました。

スクリプトに沿って安全性を確保しながらも、セラピストがしっかりと誘導して、短時間のうちにクライアントの中にある交代人格(以下、パーツ)にアクセスしていくのです。

※交代人格(パーツ)とは、トラウマ体験から主人格を守るために生まれた別の人格のことです

 

パーツを呼び出すスピード感

とくに印象的だったのは、膝のタッピングによる両側刺激の場面でした。

解離障壁(交代人格を入れておく脳内の箱)が緩み、思っていたよりも速いスピードでパーツが出てきてくれたのです。

しかも、そのパーツが感じている「年齢・感情・場面」などの情報を、最小限の言葉かけでスムーズにキャッチできました。

そしてタイミングよく、心理教育(解離症状の理解促進)やノーマライズ(辛い感情を持つことは当たり前のこと)を提供することで、パーツが安心して感情を表出し、わずかな時間で心理的葛藤が落ち着いていく。

そのスピードと正確さには本当に驚きました。

 

「型」よりも「関心」― 支援者の姿勢が変化を生む

SE™のトレーニングでも感じたのですが、技法を学び始めるとどうしてもスクリプトやプロトコールといった「型」に頼りたくなります。

私も最初は流れを守ることに必死で、棒読みのような対応しかできませんでした。指導者の方から(愛のある)厳しい指摘もされました…

でも、実際のセッションで大切なのは「目の前の相手に関心を向けること」なのだと改めて実感しました。

目の前の相手が『パーツ』であっても、その存在に心から興味を持ち、その感じている世界に寄り添おうとすると、声のトーンも、言葉の深さも、伝わり方もまったく変わってくる。

それができた瞬間、パーツの中で何かが緩んでいくのを感じ取れるのです。

かつては怒りや敵対的なパーツに出会うことに緊張していましたが、今ではその『怖さ』が不思議となくなりました。

抱いていた恐れの代わりに、「理解したい」「労いたい」「励ましたい」「感謝を伝えたい」という純粋な気持ちが生まれてくる。

この変化こそが、今回のトレーニングで得た最大の学びでした。

 

「SE™ と USPT」 二つのレンズで広がった支援観

今、SE™で学んだ「神経系の調整」と、USPTで学んだ「パーツの融合(基本人格と交代人格が一つになること)」は、私の中で補い合う関係にあります。

SE™は、身体の反応をゆっくりと整え、トラウマで溜まったエネルギーを少しずつ解放しながら、耐性領域を広げていく。

USPTは、そのプロセスで現れるパーツを安全に扱い、それぞれの役割を理解し、感謝を伝えながら融合へと導く。

この二つを組み合わせることで、クライエントのどんな反応にも柔軟に対応できるようになり、支援者としての包容力(コンテイメント)と存在感(プレゼンス)が確実に深まっているのを感じます。

 

今後の目標:「安全に、そして社会へと広げる」

今後の目標は、まずはOSDDやPTSD、複雑性PTSDなど、比較的軽度~中度の解離症状を持つ方に対して、USPTを安全に実施できるようになること。

そして近い将来には、より重度の解離症状(DID:解離性同一症)を持つ方にも、安心してこの療法を提供できるようになることです。

こうした支援を安全におこなえる治療者が増えることで、トラウマケアの社会的な基盤づくりにつながると信じています。

でも残念ながら、今の精神医療の現場では、時間のかかる費用対効果のよくないトラウマ治療を積極的に扱う医療機関は少ないという現状があります。

だからこそ、心理や福祉の現場で、地域レベルから専門的なトラウマケアを広げていくことが大切だと感じています。

 

学びの循環が、未来を変えていく

学びの旅は決して楽ではありません。

日々の業務に追われながら新しい理論や技法を学ぶには、相当なエネルギーが必要です。

また私自身、熟練の専門家の中で未熟さを露呈してしまう怖さを何度も経験してきました。

けれども、一歩踏み出して研修会に参加すると、まるで別の世界が広がっていることに気づかされます。

そこには「誰かを助けたい」「良い支援を提供したい」と心から願う仲間たちがいて、語り合うだけで温かい気持ちになれる。

SE™で一緒にトレーニングに励んだ仲間と、今回のUSPTの研修会で再会したときが、まさにその瞬間でした。

互いの努力や成長を知り、「自分もまた頑張ろう」と自然に思える。

そんな連帯感が、支援者自身のリソースにつながっていくのだと思います。

 

さいごに:「人の心には、まだ可能性があるんだな」

こうした「学びの循環」が地域に広がっていけば、困っている人を助ける力も、支援者自身が楽に生きる力も、確実に増えていくはずです。

USPTを通して、私は改めて、人の心にはまだたくさんの可能性が眠っていることに気づかされました。

そのことを、これからも諦めずに学び、伝えていきたいと思います。

 

ともに励もうぜ。

アディオス・アミーゴ