「生成AI」が切り開く ‟障害福祉サービス” の新たな未来

生成AIと福祉の未来

まず最初にAI(人工知能)の世界観を解説します。

想像してみてください。あなたは大規模な図書館の中にいます。無数の専門書があり、知識が溢れています。ただ、どれを選べばいいのか、どこに何があるのか分かりません。

わたし達の日常も、この巨大な図書館の中を、目的の本を探しながら歩き回っているようなものです。

昨今、登場してきた「生成AI」は親切で有能な図書館司書のような存在です。

無数の書籍の中から必要な専門書を一瞬で見つけ出し、あなたが必要とするページまでも特定し、適切なサポートを手渡してくれるのです。

そしてこのAI技術の進化を障害のある人たちのQOL向上のため、どのように福祉サービスに活用できるか、その可能性は希望に満ちていると考えます。

 

 

AIによってパーソナライズされた福祉サポート

パーソナライズとは、個々の顧客に合わせて最適な情報を提供する手法のことを言います。

「生成AI」は、LLM(大規模言語モデル)という膨大なデータを用いて、専門家と同等以上の知識を使って障害特性やニーズを読み取るだけでなく、一人ひとりの特徴に応じたサポートプランを瞬時に作成してくれます。

このようなAI技術を使ったサポートは、まるで自分専用にデザインされた地図を手に入れるようなものです。

「生成AI」はこの地図を一人ひとりの個性やニーズに合わせて最適化し、あなたの旅をより快適で有意義なものにするための優秀な案内役になってくれます。

AIの技術は、より効果的でパーソナライズされた質の高い福祉サービスの提供を実現してくれるはずです。

 

 

コミュニケーションと社会参加の促進

「生成AI」は、コミュニケーションの支援にも役立ちます。

特に、自然言語処理(人間が話すような言葉を機械が処理して内容を抽出する)ような技術を活用することで、障害を持つ人たちの意思疎通をサポートすることができます。

たとえば、「ヘイ!siri」「アレクサ!」「OK、Google」などと、わたし達はすでにAI技術の恩恵をたくさん受けています。

コミュニケーションは、心と心をつなぐ橋のようなものです。

しかし、言葉を交わすことが難しい人たちは、この心と心をつなぐ橋が途切れてしまった状況に陥っているのだと思います。

「生成AI」の技術は、この途切れた橋を瞬時に修復し、より強固なものにしてくれます。AIの技術を使って言葉の壁を越え、人々をより近くへとつなげていく新しい方法になります。

 

 

学習と発達のサポート

「生成AI」は、学習支援や発達促進にも応用できます。

わたし達の学びの旅を、広大な海を航海することに例えてみます。

海という条件は同じでも、障害のある人たちの船には、円滑な航海のためにたくさんの装備が必要になるかもしれません。

「生成AI」はその中でも優秀な装備になると考えられます。

学びの旅路で、時には地図を読み、波や風向きを読み、安全で最短ルートを導き出しながら、スムーズな航海を手助けしてくれるでしょう。

なぜ、そんなことができるのか?

あなたと似たような経験のほとんどは、LLM(大規模言語モデル)という膨大なデータに蓄積されています。

このLLMの中から「生成AI」があなたにピッタリな情報を提供してくれるので、一人ひとりの特徴やスキルに合わせた教育が可能になるのです。

このような技術の進化によって、知的障害や発達障害を持つ人々が、自分のペースで学び、成長することをサポートしてくれるはずです。

 

 

心の健康とウェルビーイング

心の健康の分野においても、「生成AI」は大きな役割を果たしています。

心の健康を保つことは、庭を手入れすることと似ています。時には雑草を抜き、水やりをし、日光を浴びさせて、生き生きと成長することをサポートする必要があります。

「生成AI」はこの庭の手入れをサポートするガーデナーのような存在です。

その植物の必要に応じて、すくすくと育つための栄養素を考え、手入れの仕方を提案し、願っている状態に近づけるお手伝いをしてくれます。

実際にAIの技術を活用したストレス管理ツールやメンタルヘルスアプリがたくさん登場しています。

たとえば睡眠の質を管理するアプリなど、個々の状況に合わせたサポートを提供し、精神的なウェルビーイングの向上に寄与しています。

これらのツールは、障害のある人たちが自分自身の状態をより良く理解し、適切なサポートを受けることを可能にします。

 

 

チャットボットを利用した相談サポート

チャットボット技術(ロボットとの対話)の進化により、24時間体制での相談受付が可能になりました。

誰もが、心の中にある気持ちを誰かに話したいと思っていますが、誰に話していいか分からないという悩みを抱えています。

AIチャットボットは、いつでもそばにいてくれる友人のような存在になってくれます。そして、あなたの気持ちを共感的に受け止め、優しく寄り添い、的確なアドバイスや情報を提供してくれます。

また、必要に応じて専門家へのリファーもスムーズに行うことができるので、よりきめ細かいサポートが実現します。

 

 

開発した「チャットボット」をご紹介

わたし自身もChatGPTを使ってチャットボットを開発してみましたので一部ご紹介いたします。

※ChatGPT-4 のユーザー限定で使用可能です。「GPTs」という機能を使っています。

 

①、モチベーション・トレーナー

ChatGPT – モチベーション・トレーナー (openai.com)

禁煙やダイエットなど「変わりたい けど 変われない」といった葛藤に寄り添うチャットボットです。

動機づけ面接法の相談援助技法をChatGPTに指示しているため、チェンジトークを引き出し、モチベーションを高める効果が期待できます。

 

②、‶喝″入れさせていただきます

ChatGPT – 「‶喝″入れさせていただきます」 (openai.com)

ウダウダ考えていてもしょうがないと分かっているとき、「やるしかないことは やるしかない!」と割り切らせてくれる存在が必要です。

そんな時にこのチャットボットを使うと、「よし、やるか」と思わせてくれるでしょう。

ChatGPTのGPTsメンション機能を使って、先ほどの『モチベーション・トレーナー』と連動させることで効果の爆上がりが体験できるはずです。

 

③、教えて「精神医学くん」

ChatGPT – 教えて「精神医学くん」 (openai.com)

精神科は3分診療といわれています。主治医は忙しそうで色々聞きにくいものです。

だから、医師の代わりに精神疾患のことやお薬のことを教えてくれるチャットボットをつくってみました。(治療方法の判断は実際の主治医とおこなってください)

 

④、SHIP式ライフタスク・ジェネレーター

ChatGPT – SHIP式ライフタスク・ジェネレーター (openai.com)

クライエントのアイデンティティがどのように形成されてきたかについて、エリクソンの心理社会的発達段階説をもとに振り返ります。

たとえば、乳幼児期のエピソードを入力することで、その発達段階のライフタスクと支援方法のアドバイスをくれるチャットボットです。

 

⑤、ストレングスモデルくんー「強み」から私を見て

ChatGPT – ストレングスモデルくんー「強み」から私を見て (openai.com)

まず、クライエントのストレングスについて「4つの視点」から抽出し入力します。(①:性格・人柄・特性、②:才能・素質、③:まわりの環境、④、興味・関心・願望・向上心)

その後、4つの視点の強みを活用した『自己紹介文』を作成し、あなたに伝えてくれるチャットボットです。

クライエントに対する見方、関わり方の考えをリフレーミングしてくれることでしょう。

 

まとめ

お伝えしてきたように、「生成AI」の技術は、障害のある人たちとその支援者に対して、様々な形でその力を発揮しています。

「人間の仕事を奪うのでは・・・ 難しそうでよく分からん・・・」といった抵抗や不安を感じることもあるかもしれませんが、AIの技術は、既に私たちの生活をより豊かで快適なものにするためのツールとして欠かせないものになっています。

そしてその豊かで快適な生活を障害のある人たちにも届けられるように、心の通った支援者たちが「生成AI」の機能と役割を理解して、福祉サービスの中へ取り入れていく視点が求められています。

誰もが暮らしやすくなるインクルーシブな社会の実現に向けて、AIの技術と共存し、貢献していくことが期待されています。

「生成AI」の技術は、障害を持つ人々に対する福祉サービスの提供方法に革命をもたらす可能性を秘めています。