【職員インタビュー】「『利用者様と話さないで』の指示に度肝を抜かれた入社初日」笑プラス 関田さん

生活介護事業所「笑プラス」 の関田(せきた)さん、

一貫して福祉業界で働かれて、SHIPへ入社されました。

その過程と、これからについてお話いただきました。

 

「これからは福祉だ!」に導かれて

――関田さんは、「笑プラス」に入るまでどのようなことをされてきたのでしょうか?

 

関田

高校を卒業してから福祉の専門学校に入り、その後いわゆる老人ホーム(老人保健施設)で約16年働いた後に、障害福祉の分野に来ました。

就労継続支援B型を2年、そしてSHIPへ転職して重度の知的障害者の支援に携わるようになって4年になります。

 

高校卒業後、福祉の専門学校に入ったきっかけは、祖父が「これからは福祉だ!」と話していたからです。

もともと両親が共働きで、学校から帰ると実家の横にあった祖父の家に行っておやつを食べていました。小さい頃は、祖父に色々と連れて行ってもらった記憶がたくさんあり、いわゆる「おじいちゃん子」でした。

 

もともと高校を卒業したらどうしよう・・・と、迷っていたこともあり福祉の専門学校に行くことに決めました。

と言っても、高校3年生まで老人ホームなるもを知らなかったぐらいで、福祉の使命感に目覚めて、といった感じではなかったです。

 

専門学校に入って2~3か月で老人ホームの実習に行きました。そのときに「こんな仕事もありなのかもしれない」と思いはじめました。

高齢者の方と関わるのが苦ではなかったのです。排泄系の仕事などもまったく抵抗ありませんでした。

 

専門学校の2年間が過ぎていた頃には、高齢者の福祉にいこうと腹が決まっていきました。

ただ、「それしかない!」といった意気込みがあったわけではなく、「まずは、ちゃんとした就職先があれば良し」と、割と肩の力が抜けた感じでいました。

 

 

関田

老人ホームでの仕事は、「早番」「日勤」「遅番」「夜勤」の四交代制のシフトを、みんなで1か月ぐるぐる回していく勤務体制でした。

そこでは、食事、排泄、入浴の介助であったり、夜間の巡視、それからレクリエーションなどもしていました。

 

その老人ホームで16年ほど過ごした頃、ふと「福祉の仕事は、高齢者だけではない」と思うようになりました。

もちろん、老人ホームの仕事が嫌になったわけではなく、そのままずっと続けるという選択肢もありました。しかし、「他の福祉の仕事も見てみたい」という興味が次第に湧くようになりました。

そんなとき、たまたまキッカケがあって、ダウン症の利用者様が多くいらっしゃる就労継続支B型へ転職しました。

 

そこで感じたことは、利用者様が自立しているということです。バスに乗ったり歩いたり、自分で作業所に通って来るのです。しっかり作業もこなして、作業が終わればまた帰っていく。きちんと「働いて」いらっしゃいました。

私の思う「障害者」のイメージとはちょっと違いました。

 

そのちょっとした違和感を持ちながら仕事をしていたのですが、あるとき所長と話す機会があり、「もしかしたら、やりたいのは別の(障害に関する)ことではないか?」といったことを言われました。

また、自分は既存の出来上がったシステムや環境に適応していくよりは、ゼロからみんなで作っていくタイプの仕事場が好きだということもあり、オープニングスタッフを募集していた生活介護「笑」(えみ)の求人を見つけてSHIPに入社しました。

 

 

 

来たくて来ているわけじゃない

――それまでの経験で、自分自身の変わったこと、得たことはありましたか?

 

関田

特に老人ホームでの16年間は、自分を成長させてくれたと思います。

自分には明確な分岐点があって、それは自分の担当者がお亡くなりになったときでした。

 

自分が勤めていた老人保健施設という形態の老人ホームは、特養(特別養護老人ホーム)などと違って、入居期間が6か月や1年と決まっています。

つまり、利用者様の入れ替わりがあるので、特別な感情も入らず、淡々と仕事をこなすだけ、と考えて介護していました。

 

担当していた方がお亡くなりになったのは入居して11か月くらいのときでした。

その後、何日かしてご家族の方がいらっしゃって「よくやってくれてありがとうございました」という言葉をいただきました。そのこと自体は嬉しかったのですが、自分としては、もっと何かできなかったか、という思いが強く残っていました。

 

もしかしたら、利用者様ご本人も、ここに来たくて来ているとは限らないな・・・と、思うようになったのです。

家で看ることができない、一人で暮らせないから、しぶしぶ入居を決断したのかもしれない。

そう思うと、「だったら、入居している間はその分、楽しんで欲しい」と考えるようになりました。

 

老人ホームでは、花見やお祭りなど、一年を通して頻繁に行事があります。そのたびに、施設内で実行委員会が立ち上がります。そういった行事の準備を、実は以前は面倒くさいと思っていました。

しかし、たとえ6ヶ月や1年の腰かけ期間であっても、満足いくサービスを提供してご満足いただきたいという気持ちが出てきて、仕事に対する使命感や責任感のようなものが芽生えてきたことを覚えています。

 

 

 

「今日一日利用者様と喋らないでください」

――SHIPに入社するきっかけを教えてください。

 

関田

前職の就労継続支援B型にいたときに考えていたのが、自分のスキルアップと共に「オープニングスタッフとして立ち上げに関わりたい」というものでした。その条件が揃っていたのが、当時のSHIPが出していた求人でした。

 

オープニングから関わることで、自分の知識も事業所の成長も、一緒に積み上がっていくところが、オープニングスタッフの魅力ですね。

SHIPへの入社前は、とくに転職活動をしていたわけではなかったので、「見つからなければ今のままで良い」と余裕を持っていました。

当時、正直なところ、生活介護について何も知識を持っていなかったのですが、SHIPのホームページを見て、「ここに入ってみたい」と思いました。

 

通常であれば、転職活動というのは、複数の会社に対して同時にアプローチしていくものなのかもしれませんが、自分はSHIP一本釣りでした。

 

 

 

――SHIPに入社してどうでしたか?

 

関田

配属先の生活介護「笑」(えみ)での初日、サービス管理責任者が私に伝えた指示が衝撃的でした。

今日一日利用者様と喋らないでください。目も合わせないでください」というものでした。

 

今でも思いますが、一般常識ではあり得ないような考え方が通用したりするのが面白いですね。「(利用者様と)喋らない、目も合わせない。それもコミュニケーションの一部だ」と説明を受けたとき、度肝を抜かれました。

 

 

関田

普通だったら、無視したり無反応だったりすることは、ほぼ嫌がらせですよね。

しかし、重度の知的障害をお持ちの方は、言語でのコミュニケーションが理解できないことが多いので、「良い」「悪い」と言っても分からないんです。

むしろ、悪い行動をしたときに「ダメです」と言ったとしたら、それも「反応してくれた」と受け取られて、「反応があったから良いことなんだ」という認識になってしまう可能性があります。

だから、反応しないこと、無視することで「反応が無いから、この行動はダメなんだ」と伝わるようにする支援が必要になります。

 

生活介護はいわばサービス業なのに、お客様ともいうべき利用者様に対して「無視します」は、通常の感覚から言えば意味が分からないですよね。

でも「それが正解」、とても新鮮でした。

 

最近、新しく入ってくる職員さんに対して、「自分は、それまでの福祉業界での知識や経験は、多摩川に流しました」とよく伝えています。

どれだけ老人ホームで福祉経験を積み、技術を身に付けたにせよゼロベースから始めることで、新鮮な気持ちで成功体験を積み上げることができたのだと実感しています。

 

 

 

サービス管理責任者として

――今の仕事内容や、やりがいなどを教えてください。

 

関田

現在の勤務先である生活介護「笑プラス」では、主に重度の知的障害をお持ちの利用者様がほとんどです。

そんな「笑プラス」で、適切なサービスを提供できるよう全体的な質の管理をおこなう「サービス管理責任者」を務めています。

現在、まだ試行錯誤中ですが、マネジメントが主な業務になります。

 

自分が考えるマネジメントとは、職員の皆さんとコミュニケーションを多くとり、思っていること・考えていることが、同じ方向に向かっているかを確認する作業だととらえています。

また、利用者様への支援の知識や技術について、職員の皆さんから相談があったときは、「答え」そのものズバリではなく、支援の「考え方」「見方」を自分の経験から伝えるようにしています。

 

 

関田

さらに、事業所のカラーを根付かせるのもサービス管理責任者の役割だと考えています。

「笑プラス」は、TEACCHプログラム(※「自閉症及び、それに準ずるコミュニケーション課題を抱える子ども向けのケアと教育」と訳される)を導入しているので、そこを強調していきたいと考えています。

TEACCHプログラムの本質は、非言語の絵やイラストなどによるコミュニケーションだと思っています。カードなどを利用した、利用者様それぞれに合ったコミュニケーションを提供していけば、利用者様が不適応な行動も、いつかなくなると確信しています。

 

やりがいについては、サービス管理責任者になってまだそんなに経っていないので、今はまだ言語化できていない状況です。

ただ、まずは自分自身、人としてのスキルが上がるんじゃないかと考えています。今まで経験したことがないようなことを経験できるのが楽しみです。

 

 

 

分からないことを「分からない」と聞ける風土

――職場の雰囲気や魅力などを教えてください。

 

関田

まず法人としての風通しの良さがありますね。事業所を越えた横のつながりが太いと思います。

それは事業所としても同じだと思います。風通しの良さというのはコミュニケーションの活発さのことですが、仕事中、お昼休み、帰る前、年齢層関係なく話せます。

 

また、給与面やポジション(役職)などについても、頑張った分だけ成果が出るよう制度化されているのも魅力だと思います。

また、研修制度も充実しており、研修で学んだことを仕事に生かすことができる仕組みになっています。

 

さらに、職員が大事にされているという点がとてもいいと思います。分からないことを『分からない』と聞ける」ところに心地よさを感じます。

そういったフォローアップ体制は、法人のカラーといえるところまで浸透していると感じています。

 

 

 

――今後の目標、一緒に働きたい人を教えてください。

 

関田

事業所としては、TEACCHプログラムを通して利用者様の生活の質を上げていくことが今後の目標です。

事業所のレベルを上げるのが目標ではありません。それは、利用者様の生活の質を上げることで結果的についてくることであって、それ自体を目標にしてしまうと、利用者様がなおざりになってしまいます。

 

個人としては、マネジメント力を上げることが目標です。

具体的には、「伝える力」「見る力」を上げることです。どうやったら上げられるのか、自分なりのルートを現在模索中です。

 

 

関田

一緒に働きたい人は、「遊び心」がある人です。

仕事の性質上、利用者様への支援について何かしら結果が出るまでには、3ヶ月 6ヶ月と、時間がかかるものです。

そこで「すぐに結果が出なかった」と落ち込んでしまわずに、ある程度の遊び心を持って、余裕を持って取り組める人は、重度の知的障害者や自閉症のある人への支援に向いていると思います。

 

また、視野の広さも大事だと思います。

利用者様の観察や分析をする際に、色々な方向から見たり考えたりすることです。時には枠にはまらずに突拍子もないところを突いてくれる人はいいですね。

わたし自身が「べき思考」が強くて苦しんだ時期もあるので、自ら自由に色々と発想できる人は凄いと思います。そんな方とぜひ一緒に仕事をしたいですね。

 

 

 


 

ありがとうございました!

福祉の仕事を通して人間的にも絶えず成長し続けていっている関田さん、

これからも頑張ってください!