【育成担当インタビュー】バーンアウト予備軍のみなさまへ

竹浦史展さん

職員サポート相談室の竹浦さんにインタビューしました。

竹浦さんは、SHIPの母体となったNPO法人に2002年11月より入社。
以来、ホームレス支援・生活困窮者支援の延長線上に障害者支援があると考え、「困ってる人を助ける」ことを信念に組織をけん引するスタッフです。

 

--まずは簡単に自己紹介をお願いします。

 

竹浦:みなさま、はじめまして。社会福祉法人SHIPの竹浦と申します。
このたび職員を対象として新設した『職員サポート相談室』の室長も務めさせていただくことになりましたので、ご挨拶をかねてその中身についてご紹介したいと思います。

 

〇福祉業界はバーンアウトの雪崩地帯

 

--2020年度から立ち上がった『職員サポート相談室』について教えてください。

 

竹浦:さて、はじめから脱線して申し訳ありませんが、「バーンアウト」という言葉をご存知でしょうか?
そうです。またの名を「燃え尽き症候群」
どなたでもどこかで聞き覚えのあるワードかもしれません。

バーンアウトは、身体的・精神的な疲労やストレス等が原因で意欲が減退する症状。
福祉、医療、教育などコミュニケーションを基本とする職業に多いといわれており、サービス業や一部、営業職でも起こり得ます。

 

 

 

--さっそくの脱線、ありがとうございます(笑)
最近では「エモーショナル・ワーカー(感情労働者)」という言葉も耳にするようになりました。
せっかくなのでお聞きします。どういった人がなりやすいのでしょうか?

 

竹浦:「まじめ」「誠実」「ひたむき」「献身的」「完璧主義」
一見すると社会人としてプラスでしかない言葉が並んでいるようにみえますが、こうした傾向が自分に当てはまるみなさまは、特にご用心。

自分の感情をコントロールしつつ、相手の立場を思いやり、信頼関係を築いていくためには大きなエネルギーが必要になります。そして、こうした感情労働を日々、繰り返していくのが福祉の仕事。

例えるなら福祉業界はバーンアウトの雪崩地帯と言えるかもしれません。

個人的な主観にはなりますが、やる気のある人ほど、また、上記の傾向が強ければ強いほど、心身の消耗が激しい印象です。

そして、ひとたびバーンアウトが起こると、意欲の減退をきっかけに休職・退職につながることもあり、そうした深刻なケースでは本人だけでなく周囲も巻き込む事態になりかねません。

 

 

〇早期にSOSを察知し個別サポートを開始

 

--つまり職員のバーンアウトを防ぐために立ち上げたのが『職員サポート相談室』ということでしょうか?

 

竹浦:半分は正解ですね(笑)
『職員サポート相談室』は、バーンアウトだけでなくそれを含めた①心身の不調等、②出産育児、③介護について、有資格(精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士等)のサポーターが相談を受けつけます。

バーンアウトの予防をふくむメンタルヘルス維持向上の基本は、睡眠・休息・余暇活動といったセルフケア。しかしながら、こうした基本を心得ている職員であってもバーンアウトやメンタル不調は十分起こり得るのです。

中には職員本人の自覚がない(または少ない)ケースもあり、予期せぬ雪崩事故と同じようにバーンアウトに飲み込まれてしまうこともゼロではありません。そうした際に『職員サポート相談室』ができるだけ早期にSOSを察知し、相談対応を開始します。

 

 

--具体的にはどのようなサポートを行うのでしょうか?

 

竹浦:1番力を入れているのは個別サポート。年1回実施のストレスチェックをきっかけに把握する場合もありますが、SOSは随時受付で本人からでもいいし、周囲の発見者(上司・同僚)からでもいい。

心身の不調について本人から訴えがあった場合や不調に気づいた上司・周囲の職員からSOSをもらうと、まず、勤怠状況・睡眠・食欲といった健康状態を把握し、本人が1番悩んでいることは何かを聞き取ります。

続いて、これらの情報をもとに定期面談を実施。どんなサポートが最善かを一緒に考え、必要に応じて医療機関やカウンセリング、外部サポートにもつなげていきます。

もちろん、日ごろからこうした悩みは各事業所や本部事務局のいわゆる上司にあたる職員がケアしていますが、人事的な評価等が気になって直属の上司に相談しづらいケースも想定されるため、組織内に気軽に相談できる窓口があることは「安心」「働きやすさ」につながるのではないかと考えています。

 

 

〇「職員ファースト」を前提に休職・復職までをサポート

 

--実際に休職や復職をサポートした実例もあるそうですね。可能な範囲で教えてください。

 

竹浦:はい。休職はストレスの原因から物理的に距離をおくために有効な手段。そうすることが最善と考えられる場合は、医療機関の受診と主治医の指示にもとづき本人と協議・決定します。

そして、休職期間については、主にオンライン面談やチャットツールを通じて体調や回復度合い、復職の意向や時期を確認。それと並行して円滑に復職できるよう現場責任者らとシフト調整するなど、ソフトランディングを念頭において受け入れ態勢を整えます。

さらに、個別サポートは、復職したら‟おしまい“という訳ではなく、ムリなく通常勤務が可能になるまで、6ヶ月程度を目安に本人の希望に沿って継続することが重要だと考えています。

以上のように、まだ立ち上がったばかりの『職員サポート相談室』は、試行錯誤の段階ですが、個別サポートだけでなく、法人・事業所の環境面についても話し合いを重ね、一貫して「職員ファースト」の姿勢で「‟働きやすい“職場づくり」の実現を目指しています

 

 

--最後に今後の目標や求職者のみなさんへのメッセージをお願いします。

 

竹浦:自分は現在45歳。営業職から転職して福祉業界に足を踏み入れ20年ほどが経過します。
法人の成長とともに仕事の幅が広がり、より大きな責任を感じる中で、気をつけているのは自分自身のセルフケア

実はアラフォーで登山に目覚め、季節を問わず毎週末のように山に足を運ぶようになりました。今では下山後の温泉や食事も楽しみながらフィジカルとメンタルの両面をリフレッシュしています。

かつてはこうした余暇の楽しみ方を知りませんでしたが、年齢的な衰えをスローダウンし、それこそバーンアウトすることなく継続的に力を発揮していくことが大切だと経験から学んできました。

ぜひ後輩達やこれから入社するみなさんにも、同じような感覚を味わってもらいたいと考えていますし、ロールモデルの1つとなれたらいいなぁと(笑)

自分と顔をあわせた時には、ぜひ相談だけでなく気軽な雑談にも付き合っていただけるとうれしいです。

 

参考
久保真人(2007)「バーンアウト(燃え尽き症候群)――ヒューマンサービス職のストレス」

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2007/01/pdf/054-064.pdf