【職員インタビュー】「決めるのは本人」
ー うるさいくらい話せる職場で支援を磨く 『エスプリドゥ』Mさん ー
社会福祉法人SHIPが運営する就労継続支援B型事業所「エスプリドゥ」
今回は、職業指導員のMさんにお話を伺いました。
雰囲気は終始やわらかで親しみやすく、でも支援の芯はぶれない。そんな時間でした。
福祉に惹かれた原点は、「なぜ起きるのか」への好奇心
――福祉業界に入ったきっかけを教えてください。
Mさん
高校の進路を考えていた頃に、うつ病とか統合失調症とか、「そもそもなんで起きるんだろう?」って興味を持ったんです。精神医学に行きたい気持ちはあったんですけど、医学系は自分には無理だなと思って。
だったら精神保健福祉のほうで関われるかもしれない、みたいな感じでした。哲学っぽいというより、脳の働きとか、そういう方向への関心が強かったですね。
――中学時代のご友人の存在も影響していた、とか。
Mさん
今ほど障害への理解が広がっていない時代で、軽度の子は特別支援学校に行くというより同じクラスに入ることが普通だったんです。その友人も「ちょっと変わってる」などと言われがちで。
でも今の知識で振り返ると、もしかしたら幻覚みたいなものがあって、結果として暴れてしまうこともあったのかもしれない。そういう体験は、自分の中にずっと残ってます。

回り道の先で見つけた、SHIPという選択
――大学卒業後、すぐ一直線に福祉へ、ではなかったんですよね。
Mさん
当時まだ色々とやりたいことがありました。それと、就職した友だちが精神的に辛くなり、3年以内に辞めるとか、1年以内に限界が来て休職したり、といったのを見たんです。「やっぱり多いんだな」と思いました。
だから自分の仕事探しは慎重にしたいなと思ったし、同時に、そういう人のために何かできることはないかな、という気持ちもありました。福祉であれば、精神科のデイケアとかリワークとかも視野に入れていました。
――一般企業も経験されていますね。どうでしたか?
Mさん
IT企業に入ったのですが、インフラ寄りの機械いじりはまだ「なんとなく分かる」感じがあったんです。でもプログラミングのような、私にとっては「高度だな」と感じる仕事は、正直難しいと感じました。
今ならChatGPTがあるから…と思いますが、当時は向いていないと思って辞めました。
――それから求人サイトでSHIPと出会ったのですね。
Mさん
そうです。学生の頃に就労継続支援B型事業所の実習経験があって、イメージがつきやすかったのも大きいですね。転職としては、個人的にはそんなに違和感はなかったです。
※就労継続支援B型とは、雇用契約を結ばずに、自分のペースで働く練習ができる福祉サービスです。

「決めるのは本人」——自己決定を支える支援の工夫
――現在の現場で、大切にしている支援の姿勢を教えてください。
Mさん
いちばんは「ご本人に決めてもらうこと」です。「分からない」「何でもいい」と言う利用者様もいますが、それでも自己決定の気持ちは持っていただきたいと思っています。だから「本当はどうしたいんですか?」と聞いて、そこを深掘りするようにしています。
――それが実現した瞬間は、どんなときですか?
Mさん
例えば、就労したいとは言うものの行動が伴わない、という利用者様がいらっしゃいました。人間関係で難しさを抱えていて、それが影響して就労になかなか前向きになれない、という方でした。
認知行動療法(CBT)も取り入れながら、「相手にも事情があるんじゃないですか?」と話をしていきました。そうすると少しずつ、人とうまくやれる感じが出てきて、「自分もできるかもしれない」となっていく。
最終的に「本気でA型事業所とか行こうかな」と言ってくださったときは、手応えがありました。
※就労継続支援A型とは、福祉サービスでありながら、雇用契約を結ぶ働き方のこと
――就労へ進むときの判断は難しそうですね。
Mさん
エスプリドゥのようなB型事業所にとって、利用者様に次のステップに進んでいただくのも目標の一つです。ただ、利用者様ご本人が次のステップに進みたい気持ちが先に立ち、準備が待てなくなることもあります。
その意図を尊重して、私は「80%クリアなら挑戦していただく」というのも良いと考えています。もちろん、明らかに難しそうであれば後押しはしません。
ご本人だけが自信がなくて「できていない」と思っていることもあり、「周りから見たらもう十分ですよ」と、そんなときは強めに背中を押すこともあります。

チームで支える。多様な特性が交差する場の「折り合い」
――支援の現場での難しさは、どのようなことがありますか。
Mさん
利用者様同士の関係には、とても気を遣っています。「理屈では分かるけど納得できない」という利用者様もいれば、「理屈から理解できない」という方もいらっしゃいます。
また、事業所内でのやり取りの活発さが「騒がしい」と感じて、ストレスで通所が難しくなる方もいらっしゃいます。
――そういったときの対応はどうしているのですか?
Mさん
職員のリソースも必要になるので簡単ではないのですが、完全に別の部屋で休憩できるようにしたり、静かに作業をしたい利用者様には別室で作業をしていただいたり、状況に応じて工夫しています。
――課題解決のために意識していることはありますか?
Mさん
職員同士で情報共有して、利用者様が不安を感じやすい状況を細かく確認したり、担当が考えている支援の方向性を伝えて、チームで同じ温度感にしていくのは大事です。
たとえば知的障害のある利用者様が大きな声を出していて、精神障害のある別の利用者様が不快感を示したとき。
精神障害のある利用者様には、「相手が小学校1年生の子供だったら、どう伝えますか?」と聞きます。もちろん、知的障害のある利用者様をおとしめるのではなく、あくまで理解の助けになる言い方として行います。
逆に知的障害のある利用者様にも、「うるさいと頭が痛くなる人もいるから気をつけましょう」と伝えたりします。
お互いに、行動を少しずつ妥協していただく。理解を促しつつ、行動変容も促す。マルチタスクで大変なこともありますが、そのような対応が大事だと実感しています。

「何何?」が言える — 溜め込まないで働ける環境
――職場の雰囲気はどうですか?
Mさん
話しやすいです。悩みや困りごとをすぐ相談できます。私はうるさいぐらいワーワー言っていますが、それでも受け入れてくれる環境です。
みんなで何でも言える、リラックスできる職場だと思います。溜め込みやすい性格の人ほどおすすめしたいですね。
――今後、伸ばしていきたいことは?
Mさん
支援スキルを高めたいです。精神障害のある利用者様を担当することも多いのですが、一般によく活用される認知行動療法の「コラム法」という方法も、なかなか難しいということもあります。
だったら別のやり方はないかな、と工夫したりしています。
支援に関するやり取りを簡潔化してカスタムしていくほうが好きなので、今はAIも活用しながら「その人に合う形」を探していきたいですね。
――最後に、転職を考えている方へメッセージをお願いします。
Mさん
自分ひとりで抱え込まなくていい環境で働けると、精神的にも身体的にも余裕ができます。
私は「何何?」とすぐに聞いてしまうタイプなんですが、そういうのも含めて受け入れられていると思います。明るく、話せて、相談できる。そんな職場です。
Mさん、ありがとうございました!
「決めるのは本人」を軸にした支援が印象的でした。
これからも、「何何?」と相談できる空気の中で、支援の質を磨いていってください!
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フリーランス/リワークトレーナー/タスク管理習得支援ツール「タスクペディア」原作者
