【職員インタビュー】「結果が出なくても、へこたれない支援を」ラファミド八王子(障害者グループホーム)成瀬さん

グループホーム「ラファミド八王子」 の成瀬さん

公認心理師と臨床心理士の資格をお持ちのスタッフさんです。

教育や障害福祉の領域で経験を積んでこられました。

その過程と、これからについてお話いただきました。

 

「成瀬さん、お久しぶりです!」

――成瀬さんは、どうして障害福祉の分野に興味を持ったのでしょうか。

 

成瀬

小学生の頃から、ダウン症の同級生がいたり、近所に緘黙(かんもく)の人がいたりなど、障害を持っている方が身近にいる環境で過ごしていました。

その影響もあってか、高校生の頃から心理学に興味を持ち、心理学部のある大学へ進学しました。

心理学を学ぶ中で障害福祉というものを知り、不登校問題や発達障害についての知識を学んでいくにつれて、子どもの支援に携わってみたいと考えました。

 

 

 

――それから児童福祉や教育の分野でキャリアを積まれるのですね。

 

成瀬

大学の在学時に児童指導員任用資格を取得し、東京都内の児童館で働き始めました。また、大学院を卒業した年に臨床心理士の資格を取ることができました。

児童館での主な仕事は、利用されているお子さんの安全管理した。一緒にグラウンドで遊んだり、遊んでいるところを目視で確認しながら、危ない行動を見守っていました。また、おやつ提供のために、ずっとりんごの皮むきをしていた記憶もあります。

 

1年ほど児童館で働いたあと、宇都宮で教育相談員として働き始めました。

出身は東京なのですが、埼玉や千葉、神奈川など色々なところへ応募しました。ただ、なかなか狭き門でした。また、一人暮らしをしたかったので、少し遠かったのですが栃木県の宇都宮で教育相談の仕事をすることになりました。

 

そこでは、主に小・中・高校生を対象とした「教育相談業務」をしていました。

とにかく忙しく、お子さんの発達支援、その親御さんとの面談、市内の学校を巡回して授業に出られないお子さんを相談につなげるような毎日を送っていました。

 

そこで印象的だったのは、症例の少ないランドクライスナー症候群(指定難病155)のお子さんとの関わりです。

同じ施設のベテランの先輩でさえも、そのお子さんの症状が単なる失語症なのか、知的の遅れによるものなのか、見立てられずに悩んでいました。

でも話せば普通に笑ってくれて、そのうち二語文・三語文と会話が増えて、半年後には普通に会話ができるようになったのです。

最初のうちは特別支援学級が進路の候補でしたが、結局は普通学級へ行くまでに成長されていきました。

粘り強く関わることで、そのお子さんの成長の過程を一緒に体験するという、とても貴重な経験でした。

 

 

 

その後、東京に戻り、4年ほど教育相談員として勤めました。

そこでも心に残っているお子さんがいます。

勉強も嫌いで運動も苦手な、どちらかというと学校生活に馴染めず、ずっとポケットに手を突っ込んだまま、言葉遣いも荒かったり、反抗的な態度を取っていたお子さんです。

そのお子さんは特別支援学校に行くことになりました。

 

しばらく経った2年後のこと、たまたまその学校に見学に行ったのですが、なんとそのお子さんが生徒会長になっていたのです。

支援をしていた当時を思い出すと、私のことを呼び捨てにするか、声すらかけてくれなかったのに、再会したとき「成瀬さん、お久しぶりです!」と丁寧な言葉遣いで接してくれたのです。

その姿は他の生徒の模範となっており、とても輝いて見えました。

直接かかわったのは1年だけでしたが、環境や役割、モチベーション次第でここまで変われるものなのかと、大きな気づきが得られました。

 

教育相談員として18歳までのお子さんを対象に支援をしてきたわけですが、そういったお子さんたちを見ながら、そのお子さんたちが学齢期を過ぎて大人になったとき、どのように生活しているかを知りたいと考えはじめました。

そこで、今までやっていた相談業務の延長線上にある福祉分野の、とくに生活の場であるグループホームに興味が湧き、成人期の生活に密着した現場でも経験を積みたいと考え、転職活動をスタートしました。

 

 

 

活動を休んだ利用者様に「素晴らしい!」

――それから、SHIPに入社されるのですね。

 

成瀬

たまたま見つけたグループホームの求人が社会福祉法人SHIPでした。

入社して1年くらいは、グループホーム「友(とも)」生活介護「笑(えみ)」で重度知的障害や自閉症のある人たちへの支援を経験しました。

 

朝はグループホームで起床から食事・着替えを済ませて外出までの準備を、日中は生活介護で創作活動や運動を、夕方はまたグループホームに戻って食事やお風呂・就寝までの誘導を、すべてに携わることは大変でしたが、利用者様の生活サイクルをよく知ることができました

言葉を持たない障害のある方々でも、日中は生活介護で作業を頑張ったので住まいのグループホームでは休息が必要、グループホームで上手くいかないことがあっても生活介護での活動を頑張ってそれを忘れることが必要、このような生活の実態に密着することができたことは貴重な経験でした。

 

重度知的障害者の支援に2年ほど携わった後、グループホーム「ラファミド八王子」へと異動となりました。

 

 

 

――「ラファミド八王子」はどんな事業所で、どのような利用者様が多いのですか。

 

成瀬

「ラファミド八王子」は全部で7ユニットあります。定員が51名となっており、男性向けのグループホームです。

 

1,2,3,4棟のユニットはドミトリータイプです。そのため職員との距離が比較的近い印象です。主に金銭管理や健康管理、掃除、洗濯などの家事援助など、生活の全般に渡ってかなり多めのサポートをしています。

 

5,6,7棟のユニットはアパートタイプです。利用者様一人ひとりが比較的独立して生活されています。

物理的にも心理的にも、職員はちょっと距離を置いてサポートしています。たとえば、金銭計画や使用実績などを報告してもらったり、困っていることがあれば自発的に相談に来てくれたりします。

また、「一人暮らしをしたい!」といった次の目標に向けての面談をしたり、その実現に向けて関係機関と協力することもあります。

 

 

 

――現在はどのような仕事をされているのですか。

 

成瀬

利用者様の生活のお手伝い全般です。

先ほども少し説明しましたが、金銭管理、洗濯・掃除の生活支援、健康状態や精神状態を保つための面談などをおこなっています。

 

具体的なケースでいうと、最初の頃に担当させてもらった40代の利用者様がとても印象に残っています。

いつも何かに追われているような不安の強い方でした。月に1回の通院で、お医者さまより「楽観的に、頑張り過ぎずにいきましょう」と確認してもらい、焦りを抑えていく繰り返しでした。

とはいえ、「やらなければいけないことがたくさんある」と、つい自分に厳しくなってします。

 

それがあるとき、意外にも「今日は暑いので、日中の活動を休んでみました」と伝えてきてくれました。

柔軟に考えられるようになった!と、嬉しく思ったのを覚えています。

本来であれば休んだときは、「もっと活動できるようになりましょう!」とお伝えするのかもしれませんが、その利用者様に限っては「素晴らしい!そのくらい余裕を持って自分に優しくしていきましょう」とお伝えしました。

 

また、その方は幻聴に悩まされていたのですが、自分が受け止めやすい声だけを選択できるようになり、かなり状態が改善していきました。

幻聴は、自分に命令してきたり、不本意なことを言ってくるため、ときには喧嘩のようになってしまいます。

でも幻聴との新たな付き合い方として、「今日は色々な声があったけど、1つだけ聞いてみる」というように、幻聴を ❝なくす” ではなく、幻聴がある中で ❝どう過ごしていくか”、という共存の方法もあるんだなぁ、と気づくことができました。

 

 

 

――そういった支援が『やりがい』につながるのですね。逆に、今の仕事で大変なことも教えてください。

 

成瀬

認知症を発症された70代前半の利用者様のサポートは大変でした。

転倒されることが増え、2か月連続で入院されました。

その後、急激に認知症が進行し、老人ホームへと移られました。

 

お風呂や掃除、買い物など、日常生活にはまったく問題のない方でしたし、口数の少ない方だったので、認知症だと分かるまでに時間がかかってしまいました。

転倒されてから入院されるまでの数か月間、通常の支援もしながら認知症の対応もおこなうことは、とても大変でした。

 

 

 

失敗してもいい。めげない人と一緒に仕事をしたい!

――成瀬さんの今後の目標を教えてください。

 

成瀬

機会があれば、サービス管理責任者になっていきたいと思っています。

ただ、主任になってまだ間もないので、今は主任業務を頑張っていきたいと考えています。

具体的には、一緒に働くスタッフの皆さんへ積極的に話しかけるようにしています。

 

たとえば、新しい利用者様との面談に一緒に入ったり、支援の方法で困っているスタッフがいれば一緒に考えてアイディアを出し合ったり、実際に試してみるところまで一緒にやります

あくまで自分たちのキャパシティを超えない範囲ということを前提に、色々と頑張ってみて、結果が出ればそれで良し、出なくてもこれからの支援の糧になる、と考えてやっています。

 

長いスパンでの展望について考えると、学齢期を過ぎての障害福祉を経験したので、またもう一度、障害のある児童の療育に携わってみたいなぁとも思っています。

 

 

 

 

――職場の雰囲気についてはどう感じていますか。

 

成瀬

支援の現場は、結果に結びつかないことが多く、それもまたプロセスだと思うようにしています。

そういった環境だからか、プラス思考、前向きな人が多いです。

 

「作業所(日中の活動の場所)休みました」との申し出を受け、(う~ん、今朝は元気そうだったけれどなぁ・・・)と感じることもあります。

ともすれば、社会人としての姿勢を指摘しなければならないような場面です。

でも、少し別の角度から受け取ってみると、「次にむけてリフレッシュしましょうか?」と提案することもできます。

 

このように、ただ明るい、ただ優しい、といったこととはちょっと違う、活気があってめげない、へこたれない、という雰囲気が「ラファミド八王子」にはあると感じています。

 

 

 

――最後に、SHIPに向いている人、一緒に働きたい人を教えてください。

 

成瀬

とにかく、いろんなことにチャレンジして、失敗しても次を考えてめげない人です。

経験の有無は関係ないと思います。一緒に働きながら、前向きに取り組んでくれる人と一緒に働きたいですね。

 

資格の有無は関係なく来てほしいと思います。

実際、多くの職員がいろんな職種から転職して働いています。

障害福祉未経験の人でも、SHIPに来てもらえたら嬉しいです。

 


 

ありがとうございました!

福祉でのキャリアを数多く積んでいる成瀬さん、

これからも頑張ってください!