【職員インタビュー】「障害福祉、『怖い』が『楽しい』に変わった」
グループホーム「友セカンド」 瀧口さん

グループホーム「友セカンド」で世話人をされている瀧口(たきぐち)さん

幼稚園の教諭から障害福祉に興味を持ち、SHIPへ入社されました。

その過程と、これからについてお話いただきました。

 

「障害者の施設が怖かった」

――瀧口さんは、どのような経緯で「グループホーム友セカンド」に入られたのでしょうか?

 

瀧口

教育福祉系の大学を卒業してから幼稚園で教諭を3年ほど経験し、2022年4月に現在の職である「友セカンド」の世話人になりました。

私は一人っ子だったのですが、親に兄弟をせがむくらい小さい子のお世話をするのが好きでした。その頃から「保育園や幼稚園の先生になりたい」と考えていました。それもあって、教育福祉系の大学へ進学しました。大学では最初の頃、障害福祉に携わるのは避けていました。

というのも、障害者の方々が入られている施設を見学したことがあったんです。そこでの印象は「怖い」でした。

 

大学では、教育や福祉関連の施設での実習が必修科目としてあります。当時の私は、とにかく障害者の福祉施設での実習をできれば避けたいと思っていたのですが、大学からの指示は障害者福祉施設でした。しかも、重度の障害を持つ方々の施設で、日中の作業や日々の生活支援を14日間も泊まり込みでおこなうというものでした。

「怖い」という先入観があった私ですが、それはこの実習で変わりました。楽しかった」のです。

 

 

 

瀧口

たとえば、耳が聞こえず言葉が話せない利用者の方が、朝からそわそわして何か言いたげという日がありました。そうこうしているうちに雨が降ってきました。するとその人は「ほれ見ろ」といった様子で満足げに私たちを見るのです。

実習指導の職員さんの話しでは、その方雨が降るかどうかが事前に分かるのだそうです。「すごいですね!」という気持ちを伝えると、とても嬉しそうにしておられました。

また、別の利用者の方の話ですが、耳が聞こえないにもかかわらず、会話で話題にあがった文房具を持ってきてくれたりと、実習は新鮮な驚きでいっぱいだったのです。

 

さらに楽しかったと感じた理由には、自分が安心して障害者の方々と接することができたという点です。一緒に歌を歌ったとき、利用者の方の歌うテンポが速くなったことに、私は思わず笑ってしまったのです。

最初は笑ってはいけないと堪えていたのですが、笑ってしまったことに対して実習指導の職員さんは共感してくださいました。それも利用者の方の一つの個性であると受け入れながら、明るく楽しい方向へと持っていく雰囲気がとても心地よかったのです。

 

 

 

瀧口

大学卒業後、幼稚園の教諭として仕事を始めたものの、この実習のときの楽しさが常に頭にありました。

そして、大学時代の仲が良かった友達が自閉症の方々の施設に就職し、その感想が「楽しいよ」というものだったので、なおさら障害福祉に携わることが頭によぎり20代のうちに他のこともやってみたい!と転職を決意しました。

 

とくに、障害者の方々の生活面での支援を仕事にしたいと思い、自宅から近いところ2ヶ所に見学に行きました。友セカンドは重度の知的障害をお持ちの方々のお世話をする事業所で、もう1つは軽度の方を対象とした事業所でした。

私は、重度の方々のお世話をする仕事の方が、より利用者様の生活に密着できると考え、「友セカンド」で働くことを選びました。

 

 

 

大変だったこと、やりがいを感じること

――SHIPの運営する「友セカンド」に入って、どうでしたか?

 

瀧口

「友セカンド」では、利用者様の身の回りの世話をする「世話人」をしています。

障害の程度が重度(知的障害)の人たちが対象ですので、洗濯やご飯の準備などの家事に関する支援、トイレやお風呂の介助、それから支援内容の組み立てやそれらに付随するデスクワーク相談支援事業所などの他の福祉関係機関との連携も行ないます。

連携の例としては、休日における利用者様の外出を一緒に過ごしていただくヘルパーさん(移動支援・行動援護)の手配などの仕事もあります。

 

大変だったことは、放尿、自傷、他害などの強度行動障害に対する支援です。基本的には、そういった行動を起こさなくてもすむようにカードの絵などで意思疎通を図り、状況を理解して落ち着いていただくのですが、どうしても突発的に自傷などの行動をされることがあります。

そういった課題には根気強くサポートしていかなければいけませんが、一方で目の前の自傷行為をなんとか止める必要もあります。長い目で見ることとその場で対処しなければいけないことと、その両方の観点を持たなければいけないところが難しいと感じます。

 

また、「友セカンド」では、基本的にはスタッフが専属の担当となって利用者様を支援しているのですが、それでもスタッフ全員でサポートしていこうというチームプレーの考え方を大事にしています。そのためには、チームの一員としてスタッフ同士の情報共有や意思伝達を主体的にしていくことが大事になります。それもまた難しいなと感じています。

 

 

 

瀧口

やりがいとしては、知識を増やして即実践できるところが大きいです。今は行動療法や強度行動障害への分析の方法を学んでいます。

SHIPは研修が充実しているので、こういった福祉の現場で役立つ知識などを学ぶ機会に恵まれていて、それがすぐに仕事に活かせるという風土がとても良いと感じています。

また、利用者様それぞれの個性を知ること自体が新鮮で楽しく、その個性に合った支援を考えていくという点でも、とにかく仕事が楽しい、利用者様との関わりが楽しいと感じています。

 

そういった中でも現在、力をいれていることは「支援の組み立て」です。

特に、余暇時間の過ごし方に着目しています。「友セカンド」で休日を過ごされている利用者様の中には、余暇時間に何をすればいいのか分からないという人が多くいらっしゃいます。

そういった人は、ともすれば一日中ベッドの中にいるだけ、ということも往々にしてあるのです。そして、ベッドの中で失禁されるなどといったこともあります。

そのようなケースにおける支援の考え方としては、例えば「10時から12時までは椅子に座ってDVDを見ましょうね」と、アイドルタイムの過ごし方を具体的にお伝えしていきます。やることが分かると行動が増え、その結果、活動の延長としてトイレにも行きやすくなります。

このように、利用者様が快適に落ち着いて過ごすことができるような支援を頑張って考えている毎日です。

 

 

 

利用者様の繰り出す「くすぐり」で一件落着

――ところで、「友セカンド」はどのような利用者様が多いのですか?

 

瀧口

「友セカンド」は、男性向けA棟のⅠとⅡ、女性向けB棟のⅢとⅣに分かれています。私は女性の利用者様を担当しています。障害の程度は重度(知的障害)の方々です。好きな単語程度は分かる方が多く、スタッフと関わるのが好きな方が多い印象です。

 

あるとき、利用者様から身体を叩かれたことがありました。私は「痛かったです。それは駄目なことです」とお伝えしました。その人は雰囲気を読み取るのが得意な方で、それからずっと「ごめんなさい」を繰り返していました。

私は「いいよ」とは言わずに「これでおしまいにしましょう」と伝えたのですが、その人は私がまだ怒っていると感じたらしく、「ごめんなさい」を言うばかりでした。

少し時間が経ち、その人が不意にコチョコチョとくすぐってきました。私は思わず笑ってしまったのですが、その反応を見てようやく安心したらしく、この一件は終わりになりました。言葉だけでなく、表情で安心することもあるのだなと改めて思った出来事でした。

 

 

 

 

――「友セカンド」の雰囲気はどうでしょうか?

 

瀧口

入職してまず驚いたのが、スタッフの年齢層の広さと、年齢に関係なく対等に話せるということです。

「友セカンド」で私は最年少なのですが、世代の違う方々と一緒に働けるのは楽しいです。また、担当制ということで責任は持たせてくれつつも、困ったときには一緒に支援の方法を考えてくれます。

 

上司の方から積極的に声をかけてくれるのもありがたいです。一般的に「いつでも相談してね」と言う上司は多いものの、いざ相談したいと思っても「忙しそうだな・・・」と、こちらから声をかけるのを躊躇してしまうことがあると思います。

「友セカンド」では、そういったタイミングに悩むことのないよう、声をかけやすくしてくれているところに感謝しています。

 

 

 

一緒に働きたいひと、自分のこれから

――ところで、SHIPでは、どんな人と一緒に働きたいですか?

 

瀧口

まずは、チームワークを大切にする方ですね。先ほども言ったとおり「友セカンド」は担当制なのですが、最終的には支援は一人でやるものではないと思っています。

また、自分の知識や経験にとらわれずに物事をいろんな角度から見られるのも大事だと思います。自分の過去の成功体験を無理やり現在の現場に当てはめず、周囲の意見をポジティブに吸収していかなければいけないなと、私自身感じています。

 

また、「友セカンド」だけでなく、SHIPの運営するグループホーム全体にも言えることですが、言葉ではなく絵や図などで支援をする、いわゆる「構造化支援」が特長となっています。

今では当たり前のように構造化という手法をとっていますが、大学生のときに行った実習先ではまったくそのようなことは聞きませんでした。支援技法としての構造化支援に興味がある方には、SHIPはうってつけかもしれません。

 

 

――最後に、瀧口さんは、将来的にはどうなっていきたいですか?

 

瀧口

今後も、重度の障害を持つ方と密接に関わっていきたいと思っています。

そのためにも、色々なアセスメントの方法を知って、より利用者様を知っていきたいと思います。

また、社会福祉士の資格はこれから私のキャリアを考える上で必要だと感じていますので、早めに取得したいと考えています。

 

 

 


 

瀧口さん、ありがとうございました。

福祉の仕事を心から楽しんでいる様子が印象的でした。

これからも頑張ってください!